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Amazon、インドで世界初の在宅診断サービス開始 – 60分でサンプル採取、6時間で結果提供

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Amazon Indiaは2025年6月23日、在宅診断サービス「Amazon Diagnostics」を発表した。これはAmazonが世界で初めて展開する診断事業である。

このサービスはベンガルール拠点のOrange Health Labsとの提携により実現し、ベンガルール、デリー、グルガオン、ノイダ、ムンバイ、ハイデラバードの6都市450以上のPINコードエリアで開始された。

顧客はAmazonアプリから800種類以上の診断検査を予約でき、60分以内に自宅でサンプル採取、通常検査では6時間以内にデジタルレポートを受け取れる。Amazon MedicalのカテゴリーリーダーであるJayaramakrishnan Balasubramanianは、既存のAmazon PharmacyとAmazon Clinicに加えて包括的なヘルスケア体験を構築すると述べた。

Orange Health Labsは2020年設立で、Amazon Smbhav Venture Fundが主導した1200万ドルの資金調達を2024年12月に実施している。同社はAccel、General Catalyst、Bertelsmann India、Y Combinatorから累計4700万ドル以上を調達済みである。

From: 文献リンクAmazon India unveils at-home diagnostics service

【編集部解説】

Amazon Indiaの在宅診断サービス参入は、単なる新サービス開始以上の意味を持っています。これは世界最大のECプラットフォームが、インドという巨大市場でヘルスケア領域の垂直統合を本格化させる戦略的な一手と捉えるべきでしょう。

注目すべきは、Amazon自身が診断事業に参入するのは世界初という点です。米国では規制の壁もあり、Amazonは主にテレヘルスや薬局事業に留まっていました。しかしインドでは、より柔軟な規制環境を活用して包括的なヘルスケアエコシステムの構築を目指しています。

パートナーに選ばれたOrange Health Labsは、2020年設立と比較的新しい企業ながら、Amazon Smbhav Venture Fundが主導した1200万ドルの資金調達を2024年12月に完了したばかりです。これは単なる業務提携ではなく、Amazonの戦略的投資先との深い連携を意味します。

技術的な革新性も見逃せません。60分以内のサンプル採取と6時間以内の結果提供は、従来の診断業界の常識を覆すスピードです。これを可能にするのは、Amazonの物流ネットワークとOrange Healthの検査技術の融合でしょう。

一方で、既存の診断大手にとっては脅威となります。Dr. Lal PathLabs、Metropolis Healthcare、Vijaya Diagnosticsといった老舗企業は、Amazonの価格競争力と利便性に対抗する新たな戦略が求められることになります。

長期的には、このモデルが成功すれば他の新興国市場への展開も予想されます。特に東南アジア諸国では、インドと類似した市場環境があり、Amazon Diagnosticsの拡大が現実的なシナリオとして浮上するでしょう。

ただし、医療データの取り扱いという観点では慎重な議論が必要です。Amazonが大量の健康データを収集することで、プライバシー保護や医療倫理の観点から新たな課題が生まれる可能性もあります。

【用語解説】

Amazon Medical
Amazonが展開するヘルスケア事業の総称。Amazon Pharmacy(薬局)、Amazon Clinic(オンライン診療)、Amazon Diagnostics(診断検査)の3つのサービスを統合したプラットフォームである。

Amazon Smbhav Venture Fund
Amazonが運営するベンチャーキャピタルファンド。インドのスタートアップ企業への投資を専門とし、2024年12月にOrange Health Labsへの1200万ドル投資ラウンドを主導した。

診断検査市場(Diagnostics Market)
血液検査、尿検査、画像診断などの医療検査サービス市場。インドでは150億ドル規模で年率15%成長している。組織化された市場は全体の15%に留まり、85%が非組織的な市場となっている。

PINコード
インドの郵便番号システム。Postal Index Numberの略で、6桁の数字で構成される。Amazon Diagnosticsは450以上のPINコードエリアでサービスを開始した。

【参考リンク】

Amazon India 公式サイト(外部)
Amazon Indiaの公式サイト。ショッピングサイトだが、Amazon Medicalのサービス情報も掲載されている。

Orange Health Labs 公式サイト(外部)
インドの在宅診断サービスを提供するOrange Health Labsの公式サイト。サービス詳細、検査メニュー、対応エリアなどの情報を掲載。

【参考記事】

Amazon enters India’s $15 bn diagnostics market with at-home testing(外部)
Amazon Medicalの戦略的意図と既存競合他社への影響、価格戦略について詳細に分析。インド診断市場の規模と成長率の正確な数値を提供している。

Orange Health raises Rs 101.5 crore in funding round(外部)
Amazon Smbhav Venture Fundが主導したOrange Health Labsの1200万ドル資金調達の詳細。累計調達額4700万ドルと収益性達成の重要な背景情報を掲載。

Amazon’s entry into diagnostics sector makes players jittery; shares decline(外部)
Amazon Diagnostics発表直後の既存診断企業の株価下落を報道。Dr. Lal PathLabs、Metropolis、Thyrocareなど主要企業への市場インパクトを数値で示している。

【編集部後記】

Amazon Indiaの在宅診断サービス参入は、私たちの健康管理の未来を大きく変える可能性を秘めています。60分以内のサンプル採取と6時間以内の結果提供という革新的なスピードは、日本の医療現場でも実現可能でしょうか。皆さんは、もし日本でも同様のサービスが開始されたら利用したいと思いますか?また、大手テック企業が医療データを扱うことについて、どのような期待や懸念をお持ちでしょうか。ぜひSNSで皆さんのご意見をお聞かせください。一緒にヘルステックの未来について考えてみませんか。

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TaTsu
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