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ChatGPT Health発表、週2.3億人が利用する健康相談AIが医療記録と連携へ

ChatGPT Health発表、週2.3億人が利用する健康相談AIが医療記録と連携へ - innovaTopia - (イノベトピア)

世界で毎週2億3,000万人がすでにChatGPTで健康相談をしている――この現実を受け、OpenAIがついに医療・健康に特化した「ChatGPT Health」を正式発表しました。分散する医療記録やウェルネスアプリを安全に統合し、AIが個別化された健康アドバイスを提供する、医療データ活用の新時代が幕を開けようとしています。


OpenAIはChatGPT Healthを発表した。健康とウェルネスのための専用機能で、医療記録やウェルネスアプリを安全に接続し、ユーザーの健康情報に基づいた応答を提供する。

匿名化された会話データの分析によると、世界中で毎週2億3,000万人以上がChatGPTで健康とウェルネスに関連する質問をしている。接続可能なアプリは、Apple Health、Function、MyFitnessPal、Weight Watchers、AllTrails、Instacart、Pelotonなど。

医療記録連携のため、米国の消費者向け健康データネットワークであるb.wellと提携している。開発には60カ国、数十の専門分野で診療経験を持つ260人以上の医師が協力し、30の重点分野にわたり60万回以上のフィードバックを提供した。

現役医師のネットワークからの意見を基に作成した評価フレームワーク「HealthBench」で臨床基準に照らして評価される。まず少数のアーリーユーザーに提供し、今後数週間でウェブとiOSの全ユーザーに拡大予定。医療記録連携と一部アプリは米国のみで利用可能。Health内の会話は基盤モデルのトレーニングには使用されない。

診断や治療を目的としたものではなく、医療提供者を支援するものである。

From: 文献リンクChatGPT ヘルスケアが登場

【編集部解説】

OpenAIがChatGPT Healthを発表したのは、偶然ではありません。同社の調査によれば、すでに世界中で毎週2億3,000万人がChatGPTで健康相談をしているという現実があります。人々は医療システムの複雑さに直面し、分散した健康情報を理解するために、すでにAIを頼りにしているのです。

今回の発表で注目すべきは、医療データの相互運用性という長年の課題に、AIという新しいレイヤーで挑戦している点です。患者ポータル、ウェアラブル、PDF、アプリと、健康情報は無数のサイロに分断されています。ChatGPT Healthは、b.wellという米国最大級の医療データネットワークと連携することで、これらを統合する基盤を提供します。

b.wellのSDK(ソフトウェア開発キット)は、構造化データと非構造化データの両方を扱い、複数の電子カルテシステムにまたがる縦断的な患者記録を、AIが数秒で処理できる形式に最適化します。これまで医療AIの多くは患者記録の一部にしかアクセスできませんでしたが、b.wellとの連携により、臨床メモ、検査結果、診断解釈、ケアプラン、保険情報といった全記録を横断的に活用できるようになりました。

プライバシー設計も興味深い工夫がなされています。ChatGPT Health内の会話は、通常のChatGPTとは物理的に隔離された専用スペースで管理され、専用の暗号化が施されます。健康情報が通常のチャットに流出することはなく、逆に必要な場合のみ、生活環境の変化などの文脈情報をHealth側が参照できる仕組みです。また、Health内の会話は基盤モデルのトレーニングに使用されないという明言も重要でしょう。

開発プロセスにも特徴があります。60カ国、260人以上の医師が2年以上にわたり協力し、30の重点分野で60万回以上のフィードバックを提供しました。さらに、OpenAIは「HealthBench」という独自の評価フレームワークを開発しています。これは5,000のマルチターン会話と48,562の評価基準から構成され、従来の試験形式ではなく、臨床医が実際に品質を判断する方法を反映しています。安全性、明確さ、適切な受診の促し、個別状況への配慮といった、実臨床で重要な要素に焦点を当てているのです。

しかし、慎重に見るべき点もあります。OpenAIは「診断や治療を目的としたものではない」と繰り返し強調しています。これは単なる免責事項ではなく、FDA(米国食品医薬品局)の規制を回避するための戦略的な位置づけでもあります。診断・治療目的のAIソフトウェアは医療機器として規制対象となりますが、情報提供や理解支援のツールであれば規制の外に留まれるからです。

また、HIPAAコンプライアンスについて、OpenAIの発表文では直接的な言及がありません。b.wellが「業界最高水準のデータセキュリティとプライバシー基準を遵守」していることは述べられていますが、ChatGPT Health全体としてのHIPAA準拠については明言を避けています。通常のChatGPTはHIPAA非準拠であり、医療機関が使用する際には大きな制約があることを考えると、この点は今後の展開を見守る必要があるでしょう。

さらに長期的な視点では、このような健康AIプラットフォームが普及した場合、人々の医療判断への依存度が高まるリスクも考えられます。AIの提案を鵜呑みにすることで、重要な症状を見逃したり、医療専門家への相談が遅れたりする可能性は否定できません。

一方で、ポジティブな影響も大きいでしょう。検査結果の理解、保険プランの比較、診察前の準備といった、これまで患者が孤独に向き合わなければならなかった作業を、AIが支援することで、医療システムへのアクセスがより平等になる可能性があります。特に医療リテラシーが低い人々や、複雑な慢性疾患を抱える患者にとって、大きな助けとなるかもしれません。

今回の発表は、AIと医療データの統合が本格的に動き出したシグナルと言えます。他のテック企業も追随することが予想され、医療データのエコシステムは今後数年で大きく変容していくでしょう。その中で、プライバシー保護、規制対応、そして何より患者の利益を中心に据えた設計が維持されるかどうかが、この技術の真の価値を決定することになります。

【用語解説】

HealthBench(ヘルスベンチ)
OpenAIが開発した、医療AI評価のための独自フレームワーク。5,000のマルチターン会話と48,562の評価基準で構成され、260人以上の医師が作成した評価ルーブリックを使用する。従来の試験形式ではなく、臨床医が実際にどのように品質を判断するかを反映しており、安全性、明確さ、適切な受診の促し、個別状況への配慮を評価する。

SDK(Software Development Kit)
ソフトウェア開発キットの略。アプリケーション開発者が特定のプラットフォームやサービスを利用するために必要なツール、ライブラリ、ドキュメントをまとめたパッケージ。b.wellのSDKは、構造化データと非構造化データの両方を扱い、複数の電子カルテシステムにまたがる縦断的な患者記録をAIが処理できる形式に最適化する。

医療データの相互運用性(Interoperability)
異なる医療システム、アプリケーション、デバイス間で健康情報を交換し、利用できる能力。患者ポータル、ウェアラブル、電子カルテなど分散した健康情報を統合するための技術的・組織的な取り組みを指す。

HIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act)
米国の医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律。患者の医療情報のプライバシーとセキュリティを保護するための連邦規制で、医療機関や医療技術企業がどのように患者データを扱うかを厳格に規定している。

FDA(Food and Drug Administration)
米国食品医薬品局。食品、医薬品、医療機器などの安全性と有効性を規制する連邦機関。診断・治療目的のAIソフトウェアは医療機器として規制対象となるため、ChatGPT Healthは「情報提供」に位置づけられている。

【参考リンク】

ChatGPT Health 公式ページ(外部)
OpenAIが発表したChatGPT Healthの公式ページ。機能詳細、プライバシー設計、医師との協力体制、利用開始方法を解説。

b.well Connected Health 公式サイト(外部)
米国最大級の医療データネットワーク提供企業。OpenAIと提携してChatGPT Healthの医療記録連携を支える。

HealthBench 公式ページ(外部)
OpenAIが2025年5月に発表した医療AI評価フレームワーク。262人の医師が60カ国での診療経験を基に開発。

Apple Health(外部)
Appleが提供する健康データ管理プラットフォーム。移動、睡眠、活動パターンなどを統合管理しChatGPT Healthと連携。

MyFitnessPal(外部)
栄養管理とフィットネストラッキングアプリ。ChatGPT Healthと連携して栄養アドバイスを受けられる。

【参考動画】

Navigating Health | with ChatGPT – OpenAI公式
OpenAI公式チャンネルが2026年1月に公開したChatGPT Healthの紹介動画(2分31秒)。毎日数百万人がChatGPTで健康について質問している実態と、医療情報の理解、診察準備、ウェルビーイング管理などの使用例を紹介している。

OpenAI’s Game-Changer for AI in Healthcare! – HealthBench解説
HealthBenchの仕組みと重要性を解説する動画(23分8秒)。262人の医師が60カ国で開発した評価基準、GPT-4o、GPT-4.1、o3などのモデル性能比較、グローバルヘルスケアへの影響を詳しく説明している。

【参考記事】

OpenAI launches ChatGPT Health in a push to become a hub for personal health data – Fortune(外部)
OpenAIがChatGPT Healthを立ち上げ、個人の健康データハブとなることを目指している動きを報じている。すでに毎週数億人が健康とウェルネスに関する質問をしている現状と、b.wellとの提携による医療記録統合の戦略的意義を分析している。

OpenAI Debuts ChatGPT Health: A ‘Digital Front Door’ That… – HIT Consultant(外部)
ChatGPT Healthを「デジタル・フロントドア」として位置づけ、分散した健康情報を統合する機能の詳細を報じている。Apple Health、Function、MyFitnessPalなどのアプリ連携や、専用の暗号化・隔離機能によるプライバシー保護の仕組みを解説している。

OpenAI Launches ChatGPT Health, Wants Access to Your Medical Records – Gizmodo(外部)
批判的な視点からChatGPT Healthを分析している記事。OpenAIが医療記録へのアクセスを求めている点について、プライバシーとデータ利用の観点から懸念を提起し、HIPAAコンプライアンスについての明言が不足している点を指摘している。

【編集部後記】

皆さんは、ご自身の健康情報がどこにどのように保管されているか、すぐに把握できますか?検査結果のPDF、ウェアラブルのアプリ、病院のポータルサイト…気づけば情報が分散し、全体像が見えなくなっていることも多いのではないでしょうか。

ChatGPT Healthは、そうした課題への一つの解答かもしれません。ただ同時に、私たちの最も機微な情報をAIに預けることへの不安も、当然感じられると思います。利便性とプライバシー、この両立をどう考えるか。ぜひ皆さんのご意見もお聞かせください。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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