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日本郵便とT2、自動運転トラック単独便を神奈川-大阪間で開始 次世代燃料で環境負荷削減

日本郵便と株式会社T2は、2026年1月26日から神奈川西郵便局から新大阪郵便局までの約460kmの区間で、自動運転トラックによる単独便の定期運行を開始した。

日本郵便は2025年7月から西濃運輸と共同でT2のレベル2自動運転トラックを用いた商用運行に参画していたが、今回新たに日本郵便単独の定期運行を新設した。レベル2自動運転区間は東名高速・伊勢原JCTから名神高速・豊中ICの約435kmである。

この単独便ではCO₂排出量を実質100%削減可能な次世代の軽油代替燃料「リニューアブルディーゼル」を伊藤忠エネクスから供給を受けて試験利用するとともに、宇佐美鉱油および三和エナジーが供給する「B5軽油」の利用も検討し、環境配慮輸送に取り組む。

T2は2027年度にレベル4自動運転トラックによる幹線輸送サービスの開始を目指しており、日本郵便は商用運行を通じて得られる成果を基にレベル4自動運転トラックの導入も検討する。

From: 文献リンク自動運転トラックによる、神奈川・大阪間の物流幹線輸送の単独便定期運行を新たに開始

【編集部解説】

日本郵便とT2による自動運転トラックの単独便定期運行は、日本の物流業界における自動運転技術の社会実装が、実証段階から本格的な商用化へと移行しつつあることを示す重要なマイルストーンです。

T2は2022年8月設立のスタートアップで、自動運転トラックによる幹線輸送に特化した事業を展開しています。2025年7月には佐川急便、西濃運輸、日本郵便、福山通運、三井倉庫ロジスティクスの5社を対象に、国内初となる自動運転トラックの商用運行を開始しました。当初は複数社の荷物を混載する形で運行していましたが、今回日本郵便が単独便の定期運行に踏み切ったことは、自動運転トラックが実用レベルの輸送品質と安全性を担保できることが確認されたことを意味します。

現在使用されているレベル2自動運転は、ドライバーが乗車し監視する必要がありますが、高速道路ではハンドルから手を離して走行できる技術です。料金所や工事区間などではドライバーが一時的に運転操作を行いますが、約435kmの大部分を自動運転で走行します。これにより、ドライバーの負担軽減と長距離運転の安全性向上が期待されます。

今回の取り組みで特筆すべきは、環境配慮の側面です。リニューアブルディーゼルは廃食油や動植物油などを原料とするバイオ燃料で、温対法・省エネ法に基づきCO₂排出量を実質100%削減可能とされています。ライフサイクルアセスメントベースでは石油由来の軽油と比較して70〜90%のCO₂削減効果があります。既存車両に改造なく使用できる「ドロップイン燃料」という特性も、導入のハードルを下げる要因です。

日本の物流業界は「2024年問題」と呼ばれるドライバー不足に直面しています。働き方改革関連法によりトラックドライバーの時間外労働時間に上限規制が設けられたことで、長距離輸送の担い手不足が深刻化しています。自動運転トラックは、この課題を解決する有力な手段として期待されています。

T2は2027年度にレベル4自動運転トラックの幹線輸送サービス開始を目指しています。レベル4では、限定された領域内であればドライバーの乗車が不要となり、真の無人運転が実現します。これが実用化されれば、24時間休みなく走行できるトラックが登場し、物流の効率は飛躍的に向上します。ただし、レベル4の実現には高度な技術開発だけでなく、緊急時の遠隔監視体制の整備、法規制の整備、社会的な受容性の醸成など、多くの課題が残されています。

この取り組みは単なる技術実証ではなく、社会システムとしての物流の変革を目指すものです。日本郵便のような公共性の高い事業者が継続的に自動運転トラックを利用することで、技術の信頼性が実証され、他の事業者への波及効果も期待できます。

【用語解説】

レベル2自動運転
ドライバーの監視の下に行われる特定条件下での高機能自動運転。アクセル・ブレーキ操作とハンドル操作の両方をシステムが支援するが、運転の主体はドライバーである。高速道路などではハンドルから手を離すことができるが、常に運転状況を監視し、必要に応じて即座に運転操作を引き継ぐ必要がある。レベル3以上と異なり、事故時の責任はドライバーにある。

レベル4自動運転
特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態。ドライバーの乗車が不要で、緊急時の対応もシステムが行う。限定領域内であれば完全な無人運転が可能となる高度な自動運転技術。

幹線輸送
郵便物やゆうパックなどを全国の配送拠点に主要な輸送ネットワークを通じて効率的に運ぶこと。都市間を結ぶ長距離輸送を指し、物流ネットワークの基幹となる重要な役割を担う。

2024年問題
働き方改革関連法により、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働時間に年960時間の上限が設けられたことで発生した物流業界の課題。長距離輸送の担い手不足や輸送能力の低下が懸念されている。

リニューアブルディーゼル
廃食油や動植物油などを原料として製造される次世代型バイオディーゼル燃料。軽油の完全代替燃料として既存のディーゼルエンジン車両にそのまま使用できる。ライフサイクルアセスメントベースで石油由来の軽油と比較して70〜90%のCO₂削減効果がある。温対法・省エネ法に基づき、バイオ起源の燃料として使用時のCO₂排出量は実質100%削減とカウントされる。

B5軽油
軽油にバイオディーゼル燃料を5%未満混ぜた低炭素燃料。リニューアブルディーゼルほどではないが、従来の軽油よりもCO₂排出量を削減できる。

ドロップイン燃料
既存のインフラや機器に改造なくそのまま使用できる代替燃料のこと。エンジンの改修や追加設備投資が不要で、導入コストを最小限に抑えられる。

ライフサイクルアセスメント(LCA)
製品に必要な原料の調達から、製造、使用、廃棄までのサプライチェーン全体の工程での環境負荷を定量的に評価する手法。燃料の場合、採掘・製造・輸送・使用の全過程でのCO₂排出量を評価する。

【参考リンク】

株式会社T2(外部)
自動運転トラックによる幹線輸送サービスを提供するスタートアップ。2027年度レベル4自動運転の実用化を目指す

日本郵便株式会社(外部)
郵便・物流事業を展開する日本郵政グループの中核企業。自動運転トラックの導入でドライバー不足に対応

リニューアブルディーゼル|伊藤忠エネクス(外部)
次世代バイオ燃料リニューアブルディーゼルの特徴や導入事例を紹介。CO₂削減効果や技術詳細を解説

【参考記事】

T2が自動運転トラックの商用運行を開始、運行本数は実証の4倍以上に|MONOist(外部)
2025年7月開始の商用運行について詳細に報道。5社での運行体制や技術的進展を解説

T2、セイノーHD、日本郵便/自動運転トラック幹線輸送、事業化に向け本格スタート|トラックニュース(外部)
2025年2月の実証実験開始時の報道。3社共同輸送の課題やT2の事業計画を詳述

自動運転レベルの定義とは?|自動運転ラボ(外部)
自動運転レベル0から5までの詳細な定義と各レベルの違いを解説。国内外の実用化状況も紹介

【編集部後記】

日本の物流を支える幹線輸送に自動運転技術が本格導入され始めました。同時に環境配慮型の燃料も採用されることで、効率化と脱炭素化の両立を目指す取り組みが進んでいます。私たちが日々利用する郵便や宅配便の裏側で、こうした技術革新が着実に進行しています。2027年にはドライバー不要のレベル4自動運転トラックが登場するかもしれません。物流の未来がどう変わっていくのか、皆さんはどのようにお考えでしょうか。

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Satsuki
テクノロジーと民主主義、自由、人権の交差点で記事を執筆しています。 データドリブンな分析が信条。具体的な数字と事実で、技術の影響を可視化します。 しかし、データだけでは語りません。技術開発者の倫理的ジレンマ、被害者の痛み、政策決定者の責任——それぞれの立場への想像力を持ちながら、常に「人間の尊厳」を軸に据えて執筆しています。 日々勉強中です。謙虚に学び続けながら、皆さんと一緒に、テクノロジーと人間の共進化の道を探っていきたいと思います。

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