Honda「Super-ONE」発売へ—軽自動車の枠を超えた”感情を動かすEV”の全貌

[更新]2026年4月12日

「EVは走っていても、心が動かない」——そんな声に、Hondaが本気で向き合った一台が登場します。軽自動車の枠を超え、仮想シフトと人工サウンドで「操る喜び」を電動化時代に蘇らせる小型EV「Super-ONE」が、いよいよ先行予約を開始しました。


Hondaは2026年5月下旬、小型EV「Super-ONE」を発売する。全国のHonda Carsにて4月16日(木)から先行予約の受付を開始する。

Super-ONEはAセグメントの小型EVで、車両重量は1,090kg。航続距離はWLTCモードで274kmだ。専用ドライブモード「BOOSTモード」では最大出力を通常の47kWから70kWに拡大し、7段変速の仮想有段シフト制御とアクティブサウンドコントロールを搭載する。Bose Corporationと共同開発した8スピーカーのBOSEプレミアムサウンドシステムを標準装備し、荷室には13.1Lのサブウーファーを設置する。

同車は4月10日から12日まで幕張メッセで開催のAUTOMOBILE COUNCIL 2026のHondaブースで展示されている。

From: 文献リンク小型EV「Super-ONE」の先行予約を開始 | Honda 企業情報サイト

※アイキャッチは本田技研工業株式会社公式プレスリリースより引用

【編集部解説】

Super-ONEの先行予約開始を伝えるこのニュースは、ある重要な文脈のなかで読む必要があります。Hondaは2026年3月12日、北米で生産予定だった「Honda 0 SUV」「Honda 0 Saloon」「Acura RSX」の3車種の開発・発売中止を発表しました。ソニーとの合弁「ソニー・ホンダモビリティ(AFEELA 1)」も同様に中止となり、関連損失は今後2年で最大2兆5000億円規模、2026年3月期の最終損益は上場以来初の赤字に転落する見通しです。背景にあるのは、トランプ政権によるEV補助政策の打ち切りと、米国市場でのEV需要の急減速です。

しかしこれは、「HondaがEVから撤退する」という話ではありません。中止されたのはあくまで北米向けの大型・高コストのEVであり、日本・アジア向けの小型EV路線は継続しています。その象徴が、今回発表されたSuper-ONEです。Hondaは充電インフラ整備でもニトリグループとの協業を進めており、地に足のついたEV普及への取り組みは着実に前進しています。

そうした文脈のなかで、Super-ONEが担う役割はより明確に見えてきます。「EVは面白くない」という市場の根強い声に対し、Hondaがどう答えを出すかを示した一台——それがこのモデルの本質です。開発チーム自身が「EVとして売るのではなく、たまたま電気で動く楽しいクルマとして見てほしい」と語っているように(Honda Stories, 2026年4月10日)、軽量・低重心というEV本来の強みを土台にしながら、仮想シフトや疑似エンジンサウンドといった「感情を動かす演出」を重ねることで、EVが苦手としてきた「操る喜び」を補完しようとしています。

注目すべきはBOOSTモードの設計思想です。通常の47kWから70kWへ出力を引き上げるだけでなく、7段仮想シフト・アクティブサウンドコントロール・疑似タコメーター・イルミネーション変化を連動させ、視覚・聴覚・触覚の三方向からドライバーの感性に働きかける構造になっています。これは「ガソリン車の模倣」というより、EVという新しい乗り物に「物語」を与える試みと捉えることができます。

一方で、こうした人工的な演出に対する評価は分かれる可能性があります。EVの静粛性や滑らかさを好む層には余計な仕掛けに映るかもしれません。また、274kmというWLTC航続距離は日常使いには十分な数値ですが、長距離移動を前提とするユーザーには物足りなさを感じさせる場面もあるでしょう。急速充電性能などの詳細スペックについても、現時点では公式発表がなく、今後の情報開示が待たれます。

価格については、発売時点での正式発表はまだありません。補助金を活用して手が届く価格帯を目指すとHondaは述べていますが、一部の海外メディアは約500万円前後との観測を報じており(Autoblog, 2026年1月28日)、軽自動車規格を超えるAセグメントのポジショニングを考えると、購入層がどこまで広がるかは補助金制度の動向にも左右されます。

グローバル展開という視点では、日本発売に続き、英国(「Super-N」名義)やアジア・オセアニア地域への展開が計画されています。日本の軽自動車市場で蓄積されたEV技術と軽量プラットフォームを、より規制の緩い市場向けに拡張するというHondaの戦略が、このモデルには凝縮されています。

巨額損失のなかで大型EV計画を断念しながらも、小型・個性的・日本発という路線に賭けたHondaの選択。Super-ONEがどれほどの支持を集めるかは、「楽しさ」に価値を見出すユーザーがEV市場にどれだけ存在するかを測る、ひとつの試金石にもなりそうです。

【用語解説】

Aセグメント
Aセグメントは、欧州で一般に最小クラスの乗用車を指す区分で、都市部での扱いやすさを重視した小型車が含まれる。

WLTCモード
Worldwide Harmonized Light Vehicle Test Cyclesの略称。国連で決まった国際調和試験法に基づく測定モードで、「市街地」「郊外」「高速道路」の各走行モードで構成される。

仮想有段シフト制御
EVは構造上、変速機を持たないため本来はシームレスな加速のみが可能である。Super-ONEの「BOOSTモード」では、ソフトウェア制御によって7段変速機のようなギアチェンジの感覚を人工的に再現する技術を採用している。

【参考リンク】

Honda グローバル企業情報サイト(日本語)(外部)
本田技研工業の公式企業情報サイト。ニュースリリースや製品情報など、Hondaに関する一次情報を発信している。

Honda Super-ONE 先行情報サイト(外部)
Super-ONEの公式先行情報ページ。製品の詳細スペックやデザイン、先行予約に関する情報が掲載されている。

Bose Corporation 公式サイト(外部)
米国のオーディオ機器メーカー。Super-ONEの8スピーカーシステムをHondaと共同開発した企業。自動車向けオーディオでも高い評価を持つ。

【参考記事】

Honda to Start Accepting Pre-orders for the Super-ONE Compact EV(外部)
Hondaグローバルサイト英語版プレスリリース。車重・航続距離・出力・サブウーファー容量など主要数値を確認した一次情報源。

A FUN EV, True to Honda. The development story of Super-ONE(外部)
Honda公式の開発者インタビュー。「EVではなく楽しいクルマ」という開発思想とターゲットユーザー像が語られている。

Honda to Launch Super-ONE Compact EV in Japan in May(Nippon.com / Jiji Press)(外部)
時事通信社配信の英語記事。価格未発表・補助金活用方針・国内コンパクトEV市場への見解を確認した参照元。

Honda’s Retro Super-One EV Might Cost Way More Than Its Size Suggests(Autoblog)(外部)
日本国内での参考価格として約500万円(約32,000ドル)との観測を報じた2026年1月28日付の海外自動車メディア分析記事。

Honda begins Super-ONE EV pre-orders in Japan(Automotive World)(外部)
英国拠点の自動車業界専門メディア。車重・航続距離・出力拡大幅・7段仮想シフトなどのスペックを独自に確認・記載した記事。

2026 Honda Super-ONE EV: 70kW Boost Mode Specs(bike-ev.com)(外部)
パワーウェイトレシオやBYD Dolphin Essentialとの比較など数値分析を含む記事。トルク値162Nmは同サイトの推定値。

2026 Honda Super-One review: Quick drive(CarExpert)(外部)
オーストラリア自動車専門メディアによる試乗レポート。BOOSTモードの実走行評価など客観的なインプレッションを確認した。

四輪電動化戦略の見直しに伴う損失の発生および通期連結業績予想の修正と今後の方向性について(Honda 企業情報サイト)
2026年3月12日付のHonda公式発表。北米向けEV3車種の開発・発売中止と最大2兆5000億円規模の損失見込みを発表。Super-ONEが属する日本・アジア向けの小型EV路線は継続することも明記されている。

【編集部後記】

北米での大型EV計画を断念し、最大2兆5000億円の損失を抱えながら、それでもHondaが日本市場に投入してきたのがSuperーONEです。「撤退」ではなく「選択と集中」——その言葉の重さを、この一台は背負っています。

仮想シフトや人工サウンドへの賛否はあるにせよ、「楽しいEVをつくる」というHondaの意地が、ここに込められているように感じます。みなさんは、この選択をどう見ますか?

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omote
デザイン、ライティング、Web制作を行っています。AI分野と、ワクワクするような進化を遂げるロボティクス分野について関心を持っています。AIについては私自身子を持つ親として、技術や芸術、または精神面におけるAIと人との共存について、読者の皆さんと共に学び、考えていけたらと思っています。