Microsoftは2025年2月19日、新しい量子コンピューティングチップ「Majorana 1」を発表した。
このチップは、トポロジカルコア技術を採用し、理論上は単一チップで100万量子ビットまでスケール可能な設計となっている。現時点での搭載量子ビット数は8個である。
チップの主な特徴
- インジウムヒ素を使用した新素材「トポコンダクター」を採用
- 従来のシリコンベースのチップに比べエラー訂正の必要性が少ない
- Azureデータセンターに収容可能なサイズで設計
この発表は、2025年1月にNVIDIA CEOのJensen Huang氏が「量子コンピューティングの実用化には20年かかる」と発言し、量子コンピューティング関連企業の株価が下落した直後のタイミングとなる。
現在の量子コンピュータの量子ビット数
- Google Willow(2024年12月発表):105量子ビット
- IBM Osprey(2022年発表):433量子ビット
米国防高等研究計画局(DARPA)は、産業応用可能な量子コンピュータの設計をMicrosoftとPsiQuantumの2社に依頼している。Microsoftは数年以内の実用化を目指している。
研究開発チームの主要メンバー
- Chetan Nayak氏(Microsoft テクニカルフェロー、量子ハードウェア担当コーポレートバイスプレジデント)
- Krysta Svore氏(Microsoft テクニカルフェロー)
研究成果は科学誌「Nature」に掲載され、詳細な技術情報はArxivでも公開されている。
from:Microsoft shows off novel quantum chip that can scale to ‘a million qubits’. So far: Eight
【編集部解説】
Microsoftが発表したMajorana 1は、量子コンピューティングの分野で画期的なブレークスルーとなる可能性を秘めています1。従来の量子コンピュータと大きく異なる点は、トポロジカル量子ビットを採用していることで。
この技術の特筆すべき点は、エラー訂正の必要性が大幅に低減されることです。従来の量子ビットでは環境ノイズによる誤りが大きな課題でしたが、トポロジカル量子ビットはその性質上、より安定した状態を維持できます。
実用化への道筋
現在のMajorana 1は8量子ビットの実装に留まっていますが、Microsoft社は同じアーキテクチャで100万量子ビットまでスケールアップ可能だとしています。これは、従来型の量子コンピュータでは実現が困難とされていた規模です。
DARPAの「実用規模の量子コンピューティングのための未探索システム(US2QC)」プログラムの最終フェーズに選定されたことは、この技術の実現可能性の高さを示しています。
産業界への影響
特に注目すべきは、このチップがAzureデータセンターに収容可能なサイズで設計されていることです。これは、クラウドコンピューティングと量子コンピューティングの統合という新しい可能性を示唆しています。
潜在的なリスクと課題
一方で、量子コンピューティングの発展は現代の暗号システムに対する脅威となる可能性があります。特に、ビットコインの秘密鍵や現在使用されている暗号化方式が解読される可能性が指摘されています。
今後の展望
Microsoftの発表は、NVIDIAのJensen Huang CEOが「量子コンピューティングの実用化には20年かかる」と述べた直後のタイミングでなされました。この対照的な見方は、量子コンピューティング技術の成熟度に関する業界内での見解の相違を示しています。
まとめ
私たちinnovaTopiaは、この技術革新が単なる計算能力の向上以上の意味を持つと考えています。マイクロプラスチックの分解や自己修復材料の開発など、人類が直面する重要な課題の解決に向けた新しい可能性を開くものとして注目しています。