Figure 03、はしごを完全自律で登る|ヒューマノイドロボットは工場の外へ進めるか

[最終更新]

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平らな床を歩くだけでは、ヒューマノイドロボットが人間の代わりに働ける場所は限られます。はしごを自律的に登るFigure 03の実演から、人間向けの立体環境へ適応する技術の現在地と、工場外での実用化に残る課題を考えます。


米国のロボティクス企業Figureは、ヒューマノイドロボット「Figure 03」が短いはしごを自律的に登る動画を公開した。ロボットは遠隔操作や事前に設定された動作ではなく、AIシステム「Helix」を使用したとされる。

更新された「Helix System 0」は、固有受容感覚に加えてステレオカメラの映像を利用し、周囲の三次元形状と自身の姿勢を把握する。Figureは成功率や詳細な試験条件を公開しておらず、荷物を持った状態や悪天候での性能は不明である。

From: 文献リンクFigure 03 Humanoid Robot Climbs Ladder Autonomously in New Demo

【編集部解説】

Figure 03によるはしご登りが注目される理由は、単に高い場所へ移動できたからではありません。はしごを登るには、手で横木をつかみ、足を次の段へ移しながら、機体全体の重心を保つ必要があります。Figureのブレット・アドコックCEOは今回の動作を「完全自律」と説明しており、遠隔操作や事前に決められた動作ではなく、AIシステム「Helix」が制御したとされています。

Figureが2026年4月に公開した情報によると、Helixの全身制御モデル「System 0」は、以前は関節や機体の動きといったロボット自身の状態を中心に判断していました。そのため、平らな床は歩けても、階段や傾斜、凹凸のある地面では、人間による調整や個別に設定した動作モードが必要だったと同社は説明しています。

更新後のSystem 0は、頭部カメラの映像から周囲を三次元的に認識し、その情報と機体の姿勢を組み合わせて全身を制御します。Figureは、無作為に地形を変化させたシミュレーションで強化学習を行い、そこで習得した階段移動などの動作を、実機へ追加調整なしで移せるとしています。

今回のはしご登りは、階段移動で示された制御方式を、はしご登りへ広げた実演とみられます。

Figure 03は、すでにBMWの米国スパータンバーグ工場で、部品を選別して所定の位置へ並べる物流作業の実演に使われています。ロボットは部品を両手で持ちながら足の位置や姿勢を調整し、台車を引く動作も行っています。Figureは、Helix 02が手、腕、胴体、足をまとめて制御し、部品や容器の位置のずれに応じて動作を修正すると説明しています。

一方、工場内での実演は、比較的整理された床や決められた作業区域で行われます。建設、設備点検、保守作業などへ用途を広げる場合、ロボットは階段、はしご、段差、傾斜といった、人間が日常的に利用する立体的な設備を移動しなければなりません。eWeekは、はしごや不整地を安全に移動できれば、平らな床に限定されたロボットより担当できる作業が広がる可能性を指摘しています。

編集部は、ヒューマノイド型の利点の一つとして、人間向けの設備を利用できる可能性があると考えます。人間の職場をロボット向けに全面改修せず、既存の通路や設備を利用できれば、導入の前提条件を減らせるためです。

今回の実演は、Figure 03が工場外の立体的な環境へ用途を広げる可能性を示しています。

ただし、今回公開されたのは短い動画であり、Figureは成功率や詳細な試験条件を公開していません。工具や荷物を持った状態で登れるのか、雨や風のある屋外で動作できるのかも確認されていません。

実際の現場では、一度だけ動作に成功することより、同じ動作を繰り返せることが重要です。途中で足を滑らせた場合に停止できるか、人が近くにいる状況で安全を保てるか、異なる形状のはしごにも対応できるかといった情報が、導入判断には必要になります。

今回の動画は、Figure 03が人間向けの立体環境へ適応できる可能性を示したものです。しかし、工場外の建設・点検・保守現場で利用できる段階に達したと判断するには、より具体的な試験条件と継続的な運用結果が必要です。

なお、日本での販売時期、導入先、価格については、今回確認した元記事およびFigureの公式情報では確認できません。

【関連記事】

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【編集部後記】

フィジカルAIやロボットと協力しながら働く未来が、少しずつ現実に近づいているのだと感じます。人には難しい作業や危険な仕事を任せられるようになれば、働き方は大きく変わりそうです。その一方で、当たり前のようにロボットが隣で働く光景を想像すると、若干の怖さも覚えます。便利さへの期待と、人間の仕事や役割がどう変わるのかという不安は、しばらく同居しそうです。
それでも、こうした未来が本当に訪れるのだと思うと、やはり凄いことだと感じます。

【参考動画】

【用語解説】

ヒューマノイドロボット
人間に近い胴体、腕、脚、手などを備えたロボット。人間向けに設計された通路、階段、設備、道具を利用できる可能性がある。

固有受容感覚
ロボットが関節の角度、手足の位置、機体の傾きなど、自身の身体状態を把握する仕組み。人間が目を閉じても手足の位置をおおよそ認識できる感覚に相当する。

ロコマニピュレーション
移動を意味するLocomotionと、物体操作を意味するManipulationを組み合わせた言葉。歩きながら物を運ぶ、姿勢を変えながら対象物をつかむなど、移動と操作を同時に行う能力。

強化学習
AIが試行錯誤を繰り返し、適切な行動に報酬を与えられることで動作を学習する手法。ロボットでは、転倒を避けながら移動する動作などの習得に利用される。

エンドツーエンド制御
センサー入力から動作出力までを一貫して学習・処理する方式。ロボットでは、カメラや各種センサーから得た情報を、関節やモーターの動作へ結びつける。

Vision-Language-Action(VLA)モデル
画像などの視覚情報、言語による指示、ロボットの行動を結びつけるAIモデル。FigureのHelixは、周囲の状況や指示をロボットの身体動作へ変換するために使われている。

【参考リンク】

Figure公式サイト(外部)
ヒューマノイドロボットFigure 03とAIシステムHelixの開発情報、動画、企業情報を掲載するFigureの公式サイト。

Figure 03公式ページ(外部)
家庭や人間向けの環境での利用を想定したFigure 03の特徴、移動能力、開発方針を紹介する製品ページ。

Helix公式ページ(外部)
Figureのロボットを制御するAIシステムHelixの技術記事や、物流・家庭作業での実演をまとめた公式ページ。

BMW Group公式サイト(外部)
Figure 03の実証先である米国スパータンバーグ工場を運営するBMW Groupの公式サイト。

【参考記事】

Introducing Figure 03|Figure(外部)
Figure 03のセンサー、手のひらカメラ、安全設計、量産を前提とした構造などを説明する公式発表。

Ramping Figure 03 Production|Figure(外部)
Figure 03の生産体制と、映像および身体状態を利用した全身制御を解説。シミュレーションで学習した階段移動を実機へ移す仕組みも紹介している。

Introducing Helix 02: Full-Body Autonomy|Figure(外部)
Helix 02を構成するSystem 0、System 1、System 2の役割と、視覚情報から全身を制御する仕組みを解説する公式技術記事。

F.03 Arrives at BMW|Figure(外部)
Figure 03がBMWのスパータンバーグ工場で、部品の選別、配置、台車の移動を行う物流作業を紹介した公式発表。

BMW Group advances the use of Physical AI in production with Figure 03 project in Spartanburg|BMW Group(外部)
BMW Group側から、Figure 03をスパータンバーグ工場の物流工程へ導入する計画を説明した公式発表。

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乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。

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