Last Updated on 2024-12-11 08:11 by admin
Googleは2024年12月9日、新しい量子コンピューティングチップ「Willow」を発表した。この発表を受けて、親会社Alphabetの株価は翌10日に6%上昇した。
主な要点
– Willowチップは105量子ビットを搭載
– 標準的なベンチマークテストを5分以内で実行。同じ計算を現代の最速スーパーコンピュータで行うと10セプティリオン年かかる計算を実現
– 量子エラー訂正の課題を解決し、3×3から7×7の量子ビット配列に拡張することでエラー率を半減
– カリフォルニア州サンタバーバラの専用施設で製造
– 2019年の前モデルと比較して大幅な性能向上を達成
– 量子コンピュータ開発の6段階計画における第2段階
– 最終的には100万量子ビットのシステム構築を目指す
from:Alphabet shares jump 5% after Google touts ‘breakthrough’ quantum chip
【編集部解説】
量子コンピューティングの新時代へ
Googleが発表した量子チップ「Willow」は、量子コンピューティングにおける30年来の課題を解決する画期的な成果といえます。
特に注目すべきは、量子ビット数を増やすほどエラー率が低下する「指数関数的なエラー低減」を実現したことです。これまでの量子コンピュータは、量子ビット数を増やすとエラーも増加するという根本的な課題を抱えていました。
Willowチップは、カリフォルニア州サンタバーバラの新施設で製造されています。従来の3×3の量子ビットグリッドから5×5、そして7×7へとスケールアップすることで、各段階でエラー率を半分に抑えることに成功しました。
この技術革新により、量子コンピューティングの実用化への道筋が明確になってきました。創薬、核融合エネルギー、バッテリー設計など、現代社会が直面する複雑な課題の解決に向けて大きな一歩を踏み出したと言えます。
一方で、約300人規模のGoogle Quantum AIチームが示す商用化の見通しは2030年以降とされています。これは量子コンピューティングの実用化にはまだ時間がかかることを示唆しています。
興味深いのは、この発表がAI業界のリーダーたちからも注目を集めていることです。OpenAIのサム・アルトマンCEOやTeslaのイーロン・マスクCEOが称賛を表明し、量子コンピューティングとAIの融合への期待が高まっています。
市場への影響も顕著で、Alphabet株の上昇だけでなく、Rigetti ComputingやD-Wave Quantumなど、量子コンピューティング関連企業の株価も大きく上昇しました。
ただし、現時点では標準的なベンチマークテストの成功を示したに過ぎず、実用的なアプリケーションの実現にはさらなる技術革新が必要です。また、量子コンピュータの能力が高まることで、現在の暗号技術への影響も懸念されており、「量子耐性」を持つ新しい暗号技術の開発も並行して進める必要があります。
今後の展望
Googleは100万量子ビットのシステム構築を目指していますが、これは現在の105量子ビットから約1万倍のスケールアップを意味します。この目標達成には、さらなる技術革新と莫大な投資が必要となるでしょう。
量子コンピューティングの実用化競争は、Microsoft、IBM、NVIDIAなど大手テック企業も参入しており、今後さらに激化することが予想されます。各社の技術革新が相乗効果を生み、開発のスピードが加速する可能性も高いと考えられます。