Ampere、低消費電力Armプロセッサで5Gテレコム市場に革新をもたらす

Ampere、テレコム市場へ本格参入 - 低消費電力Armプロセッサで5Gインフラ革新へ - innovaTopia - (イノベトピア)

Ampere Computingは2025年2月27日、Armベースのサーバープロセッサ「Altra」ファミリーをテレコム・ネットワーキング市場へ本格展開すると発表した。

同社はAIプロセッシング向けのプロセッサから、テレコム市場向けのネットワーキングチップへと事業を拡大している。

Ampereによると、5G、エッジコンピューティング、AIドリブンのワークロードの急速な拡大に伴い、通信プロバイダーが高まるパフォーマンス要求に対応しながらコストとエネルギー使用量を削減できるよう支援することで、大きな市場機会を捉えるとしている。

Grandview Researchのデータによれば、世界のテレコム市場規模は2024年に19億ドルに達し、2025年から2030年にかけて年間複合成長率(CAGR)6.5%で成長すると予測されている。

Ampereは今回、グローバルなテレコム顧客との新たな試験運用を複数発表した。主な提携先は以下の通り

  • Parallel Wireless:ハードウェアに依存しない5G SA、5G NSA、4G、2G向けクラウドネイティブな分散ユニット(DU)スタックの展開で協力
  • Supermicro:Ampereベースの短深度テレコムプラットフォーム「ARS-210ME-FNR」がキャリアトライアル向けに認定中
  • SynaXG:商用テレコム展開におけるAmpere Armベースの仮想DU(vDU)ソリューションを完全サポート
  • 富士通:2025年初頭から低消費電力Ampereプラットフォームに基づく5G仮想ネットワークサービススタックのトライアルを開始予定
  • SUSE:SupermicroからのAmpereベースのaarch64サーバー上のRAN使用ケースに対して完全に検証済み
  • Canonical:Ampereシリコン上で12年間のLTSを提供するクラウドネイティブソフトウェアスタックを提供

Ampere Altraプロセッサは32コアから128コアまでのラインナップを提供し、最大3.0GHzの一貫した予測可能な周波数で動作する。高いコア密度、エネルギー効率、スケーラビリティにより、テレコム市場における高性能と低消費電力の需要に対応する。

これらのパートナーシップにより、Ampereは2025年内にORAN市場全体での本番展開の準備が整ったとしている。

from:Ampere accelerates expansion into telecom networking processors

【編集部解説】

Ampere Computingが発表したテレコム市場への本格参入は、通信インフラの未来に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。この動きは単なる事業拡大以上の意味を持っています。

まず注目すべきは、Ampereが提供するArmベースプロセッサの特性です。Altraファミリーは高いコア密度と優れたエネルギー効率を実現しています。これはテレコム業界が直面している二つの大きな課題—増大する処理能力の需要と電力消費の削減—に同時に対応できる可能性を示しています。

5G技術の普及とエッジコンピューティングの拡大により、通信事業者は基地局やエッジデータセンターに膨大な数のサーバーを配備する必要があります。従来のx86アーキテクチャに比べ、Armベースのプロセッサは電力効率に優れており、特に分散配置される通信インフラにとって運用コスト削減の鍵となります。

通信業界はハードウェアアプライアンスから仮想ネットワーク機能(VNF)、そして現在のクラウドネイティブなインフラへと進化してきました。この流れの中で、Intelが長年支配してきた通信インフラ市場に、Armベースのプロセッサが新たな選択肢として台頭しつつあります。

特に注目すべきは、Ampereが単にハードウェアを提供するだけでなく、Parallel Wireless、Supermicro、SynaXG、富士通、SUSE、Canonicalといった多様なパートナーとエコシステムを構築している点です。これはOpen RANの推進にも大きく貢献し、通信事業者にとってベンダーロックインのリスクを低減させる可能性があります。

日本企業の富士通が早くもAmpereプラットフォーム上での5G仮想ネットワークサービススタックを開発していることも特筆すべき点です。これは日本の通信インフラにも影響を与えるでしょう。

さらに、AIの急速な普及に伴い、エッジでのAI推論処理の需要が高まっています。Ampereのプロセッサは、GPUほどの性能は持たないものの、コスト効率の良いAI推論処理を実現できるとされており、5G基地局やエッジデータセンターでのAI処理にも適しています。

一方で課題もあります。通信インフラは高い信頼性と安定性が求められるため、新しいアーキテクチャへの移行には慎重な検証が必要です。また、既存のx86向けに最適化されたソフトウェアスタックをArmアーキテクチャに移植する作業も必要となります。

テクノロジーの進化は常に新たな可能性をもたらします。Ampereのテレコム市場参入は、より効率的で持続可能な通信インフラの実現に向けた重要な一歩と言えるでしょう。今後の展開に注目です。

【用語解説】

  • Ampere Computing
    Armアーキテクチャベースのサーバープロセッサを開発する米国の半導体企業。クラウド向け高性能・低消費電力プロセッサで注目されています。
  • Altra
    Ampere社が開発したArmベースのサーバープロセッサファミリー。高いコア密度とエネルギー効率が特徴です。
  • Open RAN(オープンRAN)
    従来は一社のベンダーが提供していた無線アクセスネットワーク(RAN)機器を、標準化されたインターフェースで複数ベンダーの製品を組み合わせられるようにする技術。家電製品の部品を異なるメーカーから選べるようなイメージです。
  • テレコム市場
    通信事業者向けの市場。5G基地局やネットワーク機器などの通信インフラを含みます。
  • エッジコンピューティング
    クラウドやデータセンターではなく、データ発生源の近くでデータ処理を行う方式。例えば、スマートフォンの写真を遠くのサーバーに送って処理するのではなく、近くの小さなサーバーで処理する仕組みです。
  • DU(Distributed Unit)
    5G基地局の構成要素の一つで、無線信号の処理を担当する分散ユニット。
  • RU(Radio Unit)
    5G基地局の構成要素の一つで、実際に電波を送受信する無線ユニット。

【参考リンク】

  • Ampere Computing(外部)
    Armベースのクラウドネイティブプロセッサを開発する企業の公式サイト
  • Parallel Wireless(外部)
    オープンRAN技術を提供するソフトウェア企業で、2G/4G/5G対応のソリューションを開発
  • Supermicro(外部)
    サーバーやストレージシステムを提供するグローバル企業で、Ampereプロセッサ搭載製品も提供
  • SynaXG(外部)
    O-RANソフトウェアプロバイダーで、AIと5G技術を融合したソリューションを提供
  • 富士通(外部)
    日本の大手IT企業で、5G仮想ネットワークサービスを開発

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