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Samsung、DRAM・NANDメモリ供給で従業員が収賄か――台湾拠点で内部調査

[更新]2025年12月20日

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Samsungの従業員が、外部から賄賂を受け取る見返りとして、DRAM(ディーラム)およびNANDフラッシュメモリチップの供給条件を不正に優遇していた事実が明らかになったと報じられている。この行為は、半導体メモリの需給や価格に影響を与えかねない不正な取引であり、公平な取引環境と顧客の信頼を損なう重大なコンプライアンス違反である。

From: 文献リンクSamsung employees took bribes to influence DRAM, NAND

【編集部解説】

今回の事件は、Samsung台湾拠点の従業員が、メモリチップの供給割り当てや優先順位、価格設定において有利な条件を与える見返りに、販売代理店から金銭を受け取っていた疑いで調査を受けているものです。DigiTimesの報道によれば、同社は台湾の従業員に対する聞き取り調査を実施し、営業・マーケティング部門の人事異動を行っており、シニアマネジメントレベルの社員も社内規定違反に関与した疑いがあるとされています。

この問題の背景には、2025年に深刻化したメモリ不足があります。AI向けデータセンター需要の急増により、SamsungやSK Hynixなどの主要メーカーはHBM(High Bandwidth Memory)やサーバー用DRAMの生産を優先しており、PC向けDDR5メモリの供給が極端に逼迫しました。契約価格では、16GbのDDR5チップが2025年9月の約6.84ドルから12月には約27.20ドルへと、わずか3カ月で約300%上昇しています。このような市場環境下で、メモリを確保できる立場にある者は莫大な利益を得られる状況が生まれていました。

半導体サプライチェーンにおける倫理とガバナンスの問題は、単なる個別企業の不祥事を超えた業界全体の課題を浮き彫りにしています。メモリ価格の高騰は、PC製造からクラウドサービスまで広範なテクノロジー分野に影響を及ぼしており、一部のアナリストは価格正常化が2028年以降になる可能性も指摘しています。こうした状況は、消費者のメーカーへの不信感を増幅させ、MicronがCrucialブランドを縮小するなど、業界再編の動きとも相まって、ハードウェア市場全体の不透明感を高めています。

【用語解説】

DRAM(ディーラム)
Dynamic Random Access Memoryの略。コンピュータの主記憶装置として使用される揮発性メモリで、電源を切るとデータが消失する特性を持つ。

NANDフラッシュメモリ
電源を切ってもデータが保持される不揮発性メモリで、SSDやスマートフォンのストレージとして広く使用される半導体記憶装置。

DDR5
Double Data Rate 5の略。現行世代のDRAM規格で、DDR4と比較して高速かつ高効率なデータ転送を実現するメモリ技術。

HBM(High Bandwidth Memory)
AI向けデータセンターやグラフィックスプロセッサで使用される、超高速・広帯域のメモリ技術で、従来のDRAMを3D積層した構造を持つ。

【参考リンク】

Samsung Electronics公式サイト(外部)
Samsungの半導体事業部門の公式サイト。DRAM、NAND、システムLSIなどの製品情報と技術革新に関する最新情報を提供している。

JEDEC(半導体技術標準化団体)(外部)
DDR5を含むメモリ規格の標準化を行う国際的な業界団体。メモリ技術の仕様や規格に関する詳細情報が公開されている。

【参考記事】

As DDR5 RAM prices surged, Samsung employees allegedly took bribes from desperate customers – NotebookCheck(外部)
DDR5メモリ価格が急騰する中、Samsung台湾の従業員が顧客から賄賂を受け取っていた疑惑について報じている。契約価格が3カ月で約300%上昇した市場環境と、営業・マーケティング部門の人事異動について詳述している。

Samsung Investigates Staff Over Memory Order Kickbacks – FindArticles(外部)
DigiTimesの報道に基づき、Samsungが台湾従業員に対する内部調査を実施していることを伝えている。シニアマネジメントレベルの関与疑惑と社内規定違反について言及している。

RAM Shortage 2025: How AI Demand is Raising DRAM Prices – Intuition Labs(外部)
2025年のメモリ不足の背景として、AI向けデータセンター需要の急増によりHBMとサーバー用DRAMの生産が優先され、PC向けDDR5の供給が逼迫している状況を分析している。

Samsung raises DDR5 memory prices by over 100% – Gigazine(外部)
Samsungが2025年にDDR5メモリ価格を100%以上引き上げたことを報じており、AI需要とサプライチェーン問題が価格高騰の要因となっていることを伝えている。

【編集部後記】

メモリ不足という市場環境が、半導体業界における倫理的な問題を顕在化させた形です。AI需要の急拡大が引き起こしたサプライチェーンの歪みは、今後も同様の事態を生む可能性があるのでしょうか。また、価格が3カ月で300%上昇するような極端な市場では、企業のガバナンス体制だけで不正を防げるのか疑問が残ります。半導体という戦略物資の公正な流通をどう担保するか、テクノロジー業界全体で議論が必要な時期に来ているのかもしれません。

投稿者アバター
乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。

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