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Nvidia、IntelとMediaTekの両社と提携しノートPC向けSoCを2026年中に発売へ

[更新]2026年2月25日

NvidiaがIntelおよびMediaTekとそれぞれ個別に提携し、2026年中にノートPC向けSoC製品を発売する。Wall Street Journalが2月22日(現地時間)に報じた。SoCはCPU、GPU、AIプロセッサを1チップに統合した部品で、NvidiaがGPUおよびAI技術を、IntelとMediaTekがCPU部門をそれぞれ担当する。Nvidia–Intel製とNvidia–MediaTek製の2種類が別製品として発売され、DellおよびLenovoのノートPCに搭載される予定である。

WSJは、この事業がNvidiaに大きな収益をもたらすものではないが、ポータブル電子機器のAIデバイス化が進む中、消費者との接点を維持する手段として意義があると分析した。NvidiaのSoCはNintendoのSwitchおよびSwitch 2、MicrosoftのSurfaceに搭載実績がある。WSJは、ゲーミングハードウェア企業として知られるNvidiaにとって、大型ゲームタイトルの動作性能が成否を左右する可能性があると予測した。

From: 文献リンクNvidia teams with Intel and MediaTek to launch laptop SOCs this year

【編集部解説】

今回の報道の背景には、NvidiaがAIコンピューティングの覇権をデータセンターから消費者の手元へと拡張しようとする、大きな戦略転換があります。

NvidiaがノートPC向けプロセッサ市場に参入するのは、実質的に2013年のMicrosoft「Surface RT」に搭載されたTegraプロセッサ以来、約13年ぶりのことです。当時はArmベースのWindowsデバイスそのものが時期尚早で商業的に失敗しましたが、現在の市場環境はまったく異なります。AppleがMシリーズチップでArm搭載PCの実力を証明し、QualcommもSnapdragon Xシリーズで「Windows on Arm」の普及を推進しています。

注目すべきは、Nvidiaが2つの異なるアーキテクチャ戦略を同時に進めている点です。MediaTekとの協業ではArmベースのSoC「N1」「N1X」シリーズを開発しており、TSMCの3nmプロセスで製造されます。一方、Intelとの提携では、x86アーキテクチャにNvidiaのRTXグラフィックスチップレットを統合するSoCを目指しています。この「二正面作戦」により、NvidiaはArm陣営とx86陣営の両方でWindowsノートPC市場に食い込む構えです。

Nvidia–Intel提携の背景には、2025年9月に発表されたNvidiaによるIntelへの50億ドルの出資があります。この投資は同年12月にFTCの承認を得て完了し、NvidiaはIntel株の約4.4%(約2億1,470万株)を取得しました。両社は複数世代にわたるデータセンター向け・PC向け製品の共同開発を計画しており、今回のノートPC向けSoCはその具体的な成果の第一弾となります。

技術面では、MediaTekと共同開発したN1Xチップは、GB10(DGX Sparkに搭載済み)をベースとしており、20コアのArm CPU(Cortex-X925×10コア+Cortex-A725×10コア)にBlackwellアーキテクチャのGPUを組み合わせた構成とされています。リーク情報によれば、GPU性能はデスクトップ向けRTX 5070に匹敵する可能性があり、AIの処理能力は180〜200TOPSに達するとの報道もあります。

ノートPC市場のビジネスインパクトについてですが、年間約1億5,000万台が出荷されるグローバルノートPC市場は、Nvidiaのデータセンター事業と比較すれば収益規模は限定的です。しかし、WSJが指摘するように、この動きの本質は「売上」ではなく「接点」にあります。ポータブルデバイスがAI端末へと変貌する時代において、消費者との直接的なタッチポイントを確保することは、NvidiaのCUDAエコシステムの裾野を広げる上で戦略的に極めて重要です。

一方、潜在的なリスクも無視できません。まず、ソフトウェア互換性の問題があります。Windows on ArmでのGPUドライバの最適化が遅れたことが、N1シリーズの度重なる発売延期の一因とされています。また、Digitimesのアナリストによれば、搭載ノートPCの価格帯は1,000〜1,500ドル程度に収まらなければニッチ製品に留まるリスクがあります。

規制面では、米FTCや欧州委員会がNvidiaのデータセンター市場における支配力がPC市場に波及しうるかどうか注視し始めているとの報道もあり、CUDAの囲い込みが「技術的抱き合わせ」に該当するかどうかが論点になる可能性も指摘されています。

長期的に見れば、この動きはPC市場のプロセッサ勢力図を10年以上ぶりに塗り替える可能性を秘めています。IntelとAMDが長年支配してきたx86の世界に、Nvidia+Arm連合が本格的に参入することで、消費者はより多様な選択肢を手にすることになるでしょう。

【用語解説】

SoC(System-on-Chip)
CPU、GPU、AIプロセッサなど複数の機能を1つのチップに統合した半導体部品である。省電力化・小型化に優れ、スマートフォンやタブレットでは主流の設計方式となっている。

Armアーキテクチャ
英Arm Holdingsが設計するプロセッサ命令セット。省電力性に優れ、スマートフォンではほぼ100%採用されている。近年はAppleのMシリーズやQualcommのSnapdragon Xシリーズを通じてPC市場にも進出している。

x86アーキテクチャ
IntelとAMDが採用するプロセッサ命令セット。Windows PCでは数十年にわたり標準的な基盤であり、ソフトウェア互換性の広さが最大の強みである。

CUDA
Nvidiaが開発したGPU向け並列コンピューティングプラットフォーム。AI・機械学習分野で事実上の業界標準となっており、開発者の囲い込み効果が大きい。

TOPS(Trillion Operations Per Second)
AIプロセッサの演算性能を示す単位で、1秒あたり何兆回の演算を処理できるかを表す。数値が大きいほどAI推論処理が高速である。

RTXグラフィックス
Nvidiaのコンシューマ向けGPUブランド。リアルタイムレイトレーシングやAI処理機能を備え、ゲーミングやクリエイティブ用途で広く普及している。

Blackwellアーキテクチャ
Nvidiaの最新GPUアーキテクチャ。データセンター向けAIチップから、今回のノートPC向けSoCまで幅広く展開されている。

【参考リンク】

Nvidia公式サイト(外部)
GPU・AIコンピューティング分野で世界最大手の半導体企業。データセンターからゲーミングまで幅広く展開。

Intel公式サイト(外部)
x86プロセッサの開発・製造を手がける米国半導体大手。2025年9月にNvidiaから50億ドルの出資を受けた。

MediaTek公式サイト(外部)
台湾のファブレス半導体企業。スマートフォン向けSoCで世界有数のシェアを持ち、NvidiaとPC向けチップを共同開発。

Nvidia・Intel提携 公式プレスリリース(外部)
2025年9月発表のNvidiaとIntelによる共同開発および50億ドル出資に関する公式発表ページ。

【参考動画】

Nvidia公式YouTubeチャンネル(外部)
GTC基調講演、製品発表、技術解説などが公開されている公式チャンネル。Blackwellや SoC戦略の情報も配信。

【参考記事】

Nvidia’s Next PC Play Is an AI Laptop Chip, Not Just a Faster GPU(外部)
Nvidia二系統SoC戦略を詳説。搭載PCの価格帯は1,000〜1,500ドルが必要との分析を掲載。

Report: Nvidia Poised to Re-Enter PC Market with Arm Chips or x86 Chips(外部)
Arm系とx86系が別系統であることを整理。2013年Surface RT以来の歴史的文脈を解説。

Nvidia reportedly plotting GB10-like SoCs for Windows PCs(外部)
GB10チップの20コアCPU構成を具体的に記載。50億ドル投資との関連も詳しく報じている。

Dell, Lenovo, and others will launch Copilot+ laptops with Nvidia Arm CPU in H1 2026(外部)
Lenovoが少なくとも6モデル、DellがAlienware・XPSモデルを開発中とリーク情報をもとに報道。

NVIDIA Targets Q1 2026 Launch for Windows on Arm Laptops(外部)
GB10仕様(最大1,000 AI TOPS、128GBメモリ)を記載。N1/N1Xロードマップと延期の経緯を詳報。

Nvidia eyes consumer PC comeback with AI laptop chips(外部)
グローバルノートPC市場の年間約1億5,000万台出荷に言及。Nvidiaの収益多角化の機会と分析。

Nvidia invests $5B on Intel bailout, gains $2.5B(外部)
Intel株取得を詳報。1株23.28ドルで約2億1,470万株購入、FTC承認プロセスも報じている。 

【編集部後記】

みなさんが日々使っているノートPC、その「頭脳」を誰が作っているか意識されたことはありますか?長年IntelとAMDがほぼ独占してきたこの領域に、AI時代の象徴ともいえるNvidiaが本格参入しようとしています。

データセンターの中だけでなく、私たちの手元にあるデバイスにもAIが当たり前に宿る時代が近づいています。次にノートPCを選ぶとき、「どのチップが載っているか」が今まで以上に大きな判断基準になるかもしれません。この変化の行方を、一緒に見守っていければと思います。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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