Star Catcher Industries(本社:フロリダ州ジャクソンビル)は、2024年7月24日に1,225万ドル(約18億円)のシード資金調達を完了した。この資金は、世界初の宇宙ベースのエネルギーグリッド「Star Catcher Network」の構築に充てられる。
同社は2024年初頭に設立され、創業者はAndrew Rush(CEO)、Michael Snyder、Bryan Lyandvertの3名。RushとSnyderは宇宙産業での豊富な経験を持つ起業家で、LyandvertはVC投資家である。
Star Catcher Networkは、低軌道(LEO)の衛星に広帯域エネルギーを供給し、既存の衛星ソーラーパネルの発電量を5〜10倍に増加させることを目指している。
2030年までにLEOには40,000以上の衛星が展開される見込みで、Star Catcherは840メガワットの電力需要を予測している。これは約84万世帯の1時間分の電力消費量に相当する。
資金調達はInitialized CapitalとB Capitalが共同主導し、Rogue VCも参加した。
Star Catcherは2025年12月までに小規模実証衛星を打ち上げ、その後、大規模な商用電力ノードの宇宙展開を計画している。
現在、同社は11名の従業員を抱え、さらなる人材採用を進めている。
from:Star Catcher Industries raises $12.25M to provide energy grid in space for satellites
【編集部解説】
まず、この技術が目指しているのは、宇宙空間における「エネルギーインフラ」の構築です。地上でのインフラ整備が産業革命を促したように、宇宙でのエネルギー供給網の確立は、宇宙産業に大きな変革をもたらす可能性があります。
Star Catcherの技術は、既存の衛星のソーラーパネルに直接エネルギーを送ることができるため、衛星側の改修が不要という点が画期的です。これにより、導入障壁を大幅に下げることができます。
また、この技術が実現すれば、衛星の設計思想そのものが変わる可能性があります。現在の衛星は自前の電力確保が必須ですが、外部からエネルギー供給を受けられるようになれば、より小型軽量化が進み、打ち上げコストの削減にもつながるでしょう。
さらに、衛星の寿命延長にも貢献する可能性があります。バッテリーの劣化は衛星の寿命を左右する重要な要因ですが、外部からの安定したエネルギー供給があれば、この問題を大幅に軽減できるかもしれません。
一方で、潜在的なリスクも考慮する必要があります。宇宙空間でのエネルギー送電の安全性や、他の衛星への干渉の可能性などは、慎重に検証されるべき課題です。
また、この技術の普及は宇宙空間の利用に関する国際的な規制にも影響を与える可能性があります。エネルギー供給という新たな要素が加わることで、宇宙空間の管理や利用に関する国際的な取り決めの見直しが必要になるかもしれません。
長期的な視点で見ると、この技術は宇宙探査や宇宙での人類の活動範囲を大きく広げる可能性を秘めています。月や火星での基地建設、深宇宙探査機への遠隔エネルギー供給など、さまざまな応用が考えられます。
Star Catcherの挑戦は、宇宙開発の新たな地平を切り開く可能性を秘めています。技術的な課題や規制面での調整など、乗り越えるべきハードルは多いですが、成功すれば宇宙産業に革命的な変化をもたらすことでしょう。今後の展開に大いに注目です。
【用語解説】
- 低軌道(LEO):
地球の表面から約2,000km以下の高度にある軌道のことです。通信衛星や地球観測衛星などが配置される軌道で、地球に近いため通信遅延が少ないのが特徴です。 - 広帯域エネルギー:
幅広い周波数帯域にわたるエネルギーのことです。Star Catcherの技術では、太陽光スペクトルの広い範囲を利用することで、効率的なエネルギー伝送を実現しています。 - エネルギーグリッド:
電力を生産、伝送、配布するためのネットワークシステムのことです。Star Catcherは、この概念を宇宙空間に拡張しようとしています。
【参考リンク】
- Star Catcher Industries(外部)
説明:宇宙ベースの太陽光発電システムを開発する企業。革新的なエネルギー伝送技術を提供。 - Initialized Capital(外部)
説明:Star Catcherに投資したベンチャーキャピタル。テクノロジー系スタートアップに注力。 - B Capital(外部)
説明:Star Catcherの資金調達をリードした投資会社。グローバルなテクノロジー企業に投資。