Last Updated on 2024-11-18 07:12 by admin
独仏のスペーステック企業The Exploration Company(TEC)が1億6,000万ドル(約2,480億円)のシリーズBラウンドの資金調達を2024年11月17日に発表した。
企業概要
設立:2021年7月
本社:ミュンヘン(ドイツ)、ボルドー(フランス)
創業者兼CEO:エレーヌ・ユビー(元エアバス・ディフェンス&スペース副社長)
従業員数:約200名
資金調達の詳細
累計調達額:2億1,600万ユーロ
リード投資家:Balderton Capital、Plural
参加投資家:Bessemer Venture Partners、NGP Capital、French Tech Souveraineté、DeepTech & Climate Fonds、Bayern Kapital
主力製品「Nyx」の特徴
再利用可能な宇宙輸送カプセル
貨物輸送能力:最大3,000kg
初号機打ち上げ予定:2028年(ISS向け)
価格:LEOミッション約1億5,000万ドル
事業進捗
受注残高:7億7,000万ドル
– 90%が民間宇宙ステーション事業者(Vast、Axiom Space、Starlab)
– 10%が宇宙機関から
2025年:次期実証機「Mission Possible」をSpaceX Falcon 9で打ち上げ予定
from:European SpaceX rival raises $160 million for reusable capsule to carry astronauts, cargo to space
【編集部解説】
欧州の宇宙開発において、画期的な一歩を記録した今回の資金調達。The Exploration Company(TEC)は、欧州初の民間宇宙輸送能力の確立を目指しています。
特筆すべきは、この資金調達の98%が欧州の投資家によるものだという点です。これは、欧州の宇宙産業における自立性確保への強い意志を示しています。現在、国際宇宙ステーション(ISS)への物資輸送能力を持つのは米国企業のみという状況を変えようとしています。
Nyxカプセルの特徴は、最大3,000kgの貨物輸送能力を持ち、完全再利用可能という点です。これは、SpaceXのDragonカプセルに匹敵する性能となります。
注目すべきは、TECのビジネスモデルです。NASAの支援に大きく依存したSpaceXとは異なり、主に民間資金で開発を進めているという特徴があります。これは、宇宙開発における新しいアプローチと言えるでしょう。
受注残高の90%が民間宇宙ステーション事業者からというのも興味深い点です。これは、宇宙産業が政府主導から民間主導へと確実にシフトしていることを示しています。
今後10年間の地球低軌道から月周回軌道までの市場規模は3,000億ドルと予測されています。この巨大市場において、欧州独自の輸送能力を持つことの戦略的重要性は極めて高いと言えます。
TECの挑戦は、単なる技術開発にとどまりません。エレーヌ・ユビーCEOが掲げる「平和的で協力的な未来」というビジョンは、宇宙開発における欧州の価値観を体現しています。
一方で、2028年の初号機打ち上げまでの道のりには課題も存在します。今年実施された最初のデモンストレーション機は、Ariane 6ロケットの上段の問題により展開できませんでした。このような技術的課題の克服が、今後の重要なマイルストーンとなるでしょう。
【用語解説】
【参考リンク】
宇宙開発は、もはや一部の国や企業だけのものではありません。欧州発の新しい挑戦者の登場により、宇宙輸送の選択肢が広がろうとしています。
特に注目したいのは、環境への配慮と経済性を両立させた再利用型宇宙船の開発です。これは、持続可能な宇宙開発の新しいモデルとなるかもしれません。