地球の「失われた元素」の謎を解く – 新発見が描く46億年前の激動

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2024年2月、アリゾナ州立大学の分子科学部および地球宇宙探査部のダマンヴィール・グレワル助教授らの研究チームは、Science Advances誌に画期的な研究成果を発表され、2025年2月に世界最大級のサイエンスニュースメディアである、phys.orgにて紹介された。

研究チームは、最新の高精度分析技術を用いて太陽系初期の微惑星の金属核の残骸である鉄隕石を分析し、以下の事実を明らかにした

  • 太陽系内側の第一世代の微惑星は、銅や亜鉛などの中程度揮発性元素(MVE)を予想以上に豊富に含んでいた
  • 地球と火星の構成材料は、当初はMVEを豊富に含んでいた
  • これらの元素は、約46億年前の惑星形成期における激しい衝突過程で失われた
  • 分析された鉄隕石の年代は太陽系形成初期の約45.6億年前まで遡る

from:https://phys.org/news/2025-02-meteorite-discovery-held-theories-earth.html

【編集部解説】

この研究成果は、惑星科学の分野に革新的な視点をもたらしています。

従来の理論では、地球や火星からMVEが欠落している理由について、太陽系形成初期の段階での不完全な凝縮か、微惑星の分化過程での損失と考えられていました。しかし、最新のレーザーアブレーション質量分析法を用いた鉄隕石の詳細な分析により、この考えが覆されました。

特筆すべきは、この発見がNASAのOSIRIS-RExミッションによるBennu小惑星のサンプルリターン分析と時期を同じくしていることです。両者の研究結果を組み合わせることで、太陽系における物質進化の全体像がより明確になると期待されています。

この研究は系外惑星の探査にも大きな影響を与える可能性があります。特に、生命を育む可能性のある惑星を探す際、MVEの存在量が重要な指標となるかもしれません。

【用語解説】

中程度揮発性元素 (MVE)

  • 摂氏500-1350度で気化する元素群
  • 代表例:銅、亜鉛、ナトリウム、カリウム
  • 生命の発生に重要な役割を果たす

レーザーアブレーション質量分析法

  • レーザーで試料を蒸発させ、元素組成を分析
  • 微小領域の分析が可能
  • 2010年代に入り急速に発展した技術

【参考リンク】

  1. アリゾナ州立大学宇宙探査研究所(外部)
    惑星科学分野で世界をリードする研究機関。最新の分析技術を用いた惑星形成研究を展開
  2. JAXA宇宙科学研究所(外部)
    日本の惑星探査を主導する研究機関。小惑星探査や物質分析で世界的な成果を上げている

【参考動画】

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