NASAとSpaceXは、2025年3月にオーロラ電気ジェットを研究する初の宇宙ミッション「Electrojet Zeeman Imaging Explorer(EZIE)」の打ち上げを予定している。
EZIEミッションの主な特徴
3機のCubeSat(10cm立方の小型衛星)を使用
SpaceXのFalcon 9ロケットで打ち上げ
打ち上げ場所:カリフォルニア州ヴァンデンバーグ宇宙軍基地
Transporter-13ライドシェアミッションの一部として実施
オーロラ電気ジェットは、地球の極地周辺の上空約100kmを毎秒数百万アンペアの電流が流れる現象で、宇宙天気、衛星運用、地上の電力網に影響を与える。
EZIEミッションの目的
オーロラ電気ジェットのマッピングと分析
宇宙天気予報の改善
太陽嵐による地球インフラへの影響の理解
ミッションの特徴
ゼーマン効果を利用した新技術で電流を測定
市民科学者の参加:EZIE-Mag磁力計キットを世界中の学生やボランティアに配布
主要な関係者
サム・イー:ジョンズ・ホプキンス応用物理研究所のミッション主任研究員
ネリ・モサビ・ホイヤー:ジョンズ・ホプキンスAPLのミッションプロジェクトマネージャー
このミッションは、太陽周期25のピーク(太陽極大期)に合わせて計画されており、NASAの他の太陽物理学プロジェクト(PUNCHミッションなど)と補完関係にある。
from:SpaceX and NASA to Launch a Groundbreaking Mission to Study Mysterious Auroral Currents
【編集部解説】
EZIEミッションは、地球の大気中で発生するオーロラ電気ジェットという現象を詳細に調査する画期的なプロジェクトです。この現象は、私たちの日常生活に思わぬ影響を与えているにもかかわらず、これまで十分に理解されていませんでした。
オーロラ電気ジェットは、地球の極地域の上空約100km付近で発生する強力な電流です。この電流は、美しいオーロラを生み出すだけでなく、人工衛星や地上の電力網、通信システムにも影響を及ぼす可能性があります。
EZIEミッションの特筆すべき点は、3機の小型衛星(CubeSat)を使用して、これらの電流を直接観測することです。これまで、オーロラ電気ジェットは航空機では高すぎ、従来の人工衛星では低すぎて、直接測定することが困難でした。EZIEは、この観測の隙間を埋める重要な役割を果たします。
ミッションで使用される「ゼーマン効果」という技術は、非常に興味深いものです。この技術を用いることで、酸素分子からのマイクロ波放射を測定し、電気ジェットの動きや強度の変化を検出することができます。これは、宇宙天気予報の精度向上に大きく貢献する可能性があります。
さらに、このミッションには市民科学の要素も含まれています。世界中の学生やボランティアにEZIE-Mag磁力計キットを配布し、地上からのデータ収集に参加してもらうという試みは、科学教育の観点からも非常に意義深いものです。
一方で、このような詳細な観測が可能になることで、プライバシーや安全保障の面での懸念も生じる可能性があります。例えば、電気ジェットの詳細なマッピングが、軍事目的に利用される可能性も否定できません。
長期的な視点では、EZIEミッションによって得られるデータは、地球と太陽の相互作用についての理解を深め、将来的には他の惑星の磁気圏研究にも応用できる可能性があります。また、宇宙天気予報の精度向上は、人工衛星や宇宙ステーションの安全運用、さらには地上のインフラ保護にも大きく貢献するでしょう。
このミッションは、NASAの太陽物理学プロジェクトの一環として行われますが、民間企業であるSpaceXが打ち上げを担当するなど、官民連携の好例としても注目されています。今後、このような協力体制がさらに発展し、宇宙科学の進歩を加速させることが期待されます。