中国国家航天局は、2026年に5つの主要宇宙ミッションを実施する計画を発表した。嫦娥7号は2026年8月に月の南極を目標とするロボットミッションで、オービター、ランダー、ローバー、ミニホッピング探査機で構成される。
天問2号は2026年7月に小惑星2016 HO3(カモオアレワ)に到達し、サンプルを採取する中国初の小惑星サンプルリターンミッションである。神舟23号と神舟24号は2026年を通じて天宮宇宙ステーションへの有人飛行を実施する。
夢舟1号は2026年6月から7月頃に初の無人試験飛行を行う予定で、将来の有人月ミッション用に設計されている。巡天宇宙望遠鏡は2026年後半に打ち上げられ、2メートルの主鏡を備え、天宮宇宙ステーションの近くで運用される。
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China targets Moon’s south pole, asteroid sample return in 2026
【編集部解説】
中国が2026年に集中的に展開する5つの宇宙ミッションは、単なる技術実証の域を超えています。これらは2030年代半ばに完成予定の国際月面研究ステーション(ILRS)に向けた、体系的な布石なのです。
嫦娥7号が目指す月の南極は、永久影領域に水氷が存在する可能性が高く、将来の月面基地における資源利用の鍵を握ります。ホッピング探査機は、通常のローバーではアクセスできない急斜面やクレーター内部へ「跳躍」して移動する革新的な設計です。この技術は地形の制約を超えた探査を可能にし、水氷の分布マッピングに不可欠となります。
天問2号が目指す小惑星カモオアレワは、実は月起源の天体である可能性が高いことが2024年の研究で明らかになりました。月の裏側にあるジョルダーノ・ブルーノクレーターから数百万年前に飛び出したと考えられており、月の地質史を解明する貴重なサンプルとなります。中国にとって初の小惑星サンプルリターンミッションであり、日本のはやぶさ2に続く深宇宙探査の実績を積み上げる意味も持ちます。
巡天宇宙望遠鏡は、天宮宇宙ステーションと共軌道で運用される点が特徴的です。ハッブル宇宙望遠鏡やジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡と異なり、必要に応じて宇宙飛行士が直接メンテナンスやアップグレードを実施できる設計になっています。2メートルの主鏡と25億画素のカメラを搭載し、10年間で天空の40%をサーベイする計画です。
夢舟1号の無人試験飛行は、現行の神舟宇宙船を超える次世代の有人月面着陸船の検証です。中国は2030年までに自国の宇宙飛行士を月面に送る計画を公表しており、この試験はその重要なマイルストーンとなります。
天宮宇宙ステーション自体も2026年以降、現在の3モジュール構成から6モジュール180トンへと拡張される予定です。ILRSプロジェクトには既に13カ国が参加を表明しており、2025年5月には中露間で月面基地用の原子力発電所に関する協定も締結されました。
2026年は中国にとって、月面基地実現に向けた技術検証の集大成の年と位置づけられます。これらのミッションが成功すれば、2030年代の宇宙開発における中国の主導的地位がさらに強固なものとなるでしょう。
【用語解説】
サンプルリターンミッション
天体から物質サンプルを採取して地球に持ち帰る探査方法。現地での分析よりも、地球の高精度な分析装置で詳細な組成や年代測定が可能になる。日本のはやぶさ2やNASAのオシリス・レックスが代表例である。
ホッピング探査機
跳躍によって移動する小型探査機。月や小惑星など低重力環境において、通常のローバーではアクセスできない急斜面やクレーター内部へ効率的に移動できる利点がある。
永久影領域
月の極地方にある、太陽光が決して当たらないクレーター内部の領域。数十億年にわたり極低温が保たれ、水氷が昇華せずに保存されている可能性が高い。将来の月面基地における水資源として注目されている。
共軌道運用
複数の宇宙機が同じ軌道またはごく近い軌道で運用されること。巡天宇宙望遠鏡は天宮宇宙ステーションと共軌道で運用されることで、宇宙飛行士による直接メンテナンスが可能となる。
天空サーベイ
宇宙望遠鏡が広範囲の天域を系統的に観測・撮影すること。個別の天体を詳しく観測する方式と異なり、銀河の分布や宇宙の大規模構造を把握するのに適している。
【参考リンク】
中国国家航天局(CNSA)(外部)
中国の宇宙開発を統括する政府機関。月探査「嫦娥」、火星探査「天問」、有人宇宙飛行などを実施している。
NASA Science – Chang’e 7(外部)
NASAの科学データセンターによる嫦娥7号ミッションの公式データページ。ミッション概要と搭載機器の詳細を提供。
【参考動画】
Chang’e 7 Mission to Explore Lunar South Pole for Water Ice in 2026
嫦娥7号ミッションの目的と搭載機器について解説。月の南極における水氷探査の重要性とホッピング探査機の役割を視覚的に説明。
【参考記事】
China’s Chang’e-7 mission to land on lunar south pole for water ice search, report says(外部)
嫦娥7号が月南極に着陸し水氷を探査。オービター、ランダー、ローバー、ホッピング探査機で永久影領域を調査。
Tianwen 2 advances on key mission(外部)
天問2号ミッションの進捗状況。小惑星カモオアレワからのサンプル採取と地球帰還スケジュール、搭載科学機器を説明。
China delays launch of Xuntian space telescope to late 2026(外部)
巡天宇宙望遠鏡の2026年後半への延期を報告。2メートル主鏡、25億画素カメラ搭載。10年間で天空40%をサーベイ。
Near-Earth asteroid was blasted from a crater on the moon, study finds(外部)
カモオアレワが月起源の天体である可能性を示した2024年研究成果。月裏側クレーターから数百万年前に飛び出したと推定。
Russia, China reveal moon base roadmap but no plans for crews(外部)
中国とロシア主導の国際月面研究ステーション(ILRS)詳細ロードマップ。2030年代半ば完成目指し月南極域に建設。
China and Russia sign nuclear reactor deal to fuel lunar research station(外部)
2025年5月に中露間で締結された月面基地用原子力発電所協定。ILRSプロジェクトには既に13カ国が参加表明。
China’s giant Xuntian space telescope faces further delay until late 2026(外部)
巡天宇宙望遠鏡の延期と技術的背景。ハッブル同等視野で300倍広い視野角。天宮ステーションによる直接メンテナンス可能。
【編集部後記】
2026年、中国が月の南極を目指すこの動きを、みなさんはどう捉えますか?月面基地の実現が現実味を帯びてきた今、宇宙開発は一部の大国だけのものではなくなりつつあります。日本も独自の月探査計画を進めていますが、この国際競争の中でどんな役割を果たせるでしょうか。
水資源の確保、エネルギー供給、持続可能な月面活動—これらの技術は、いずれ地球の課題解決にも応用されるはずです。宇宙という舞台で繰り広げられる技術革新が、私たちの暮らしをどう変えていくのか。一緒に見守っていきませんか。































