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NASA月周回ミッション延期、SpaceX Falcon 9にも異常——2026年2月の宇宙計画に暗雲

NASAは2月3日、50年以上ぶりとなる有人月周回ミッションArtemis IIの打ち上げを延期すると発表した。2月6日に予定されていた打ち上げは、火曜日に実施されたウェット・ドレス・リハーサルでSLSロケット基部に水素漏れが検出されたため、早くとも3月6日まで延期される。

Artemis IIにはNASAのVictor Glover、Reid Wiseman、Christina Kochとカナダ宇宙庁のJeremy Hansenが搭乗予定である。

一方、SpaceXのCrew-12ミッションは早ければ2月11日に国際宇宙ステーションへ向かう可能性がある。Crew-12にはNASAのJessica MeirとJack Hathaway、欧州宇宙機関のSophie Adenot、ロスコスモスのAndrey Fedyaevが搭乗する。

ただし、月曜日にFalcon 9ロケットの上段が軌道離脱燃焼に失敗した問題により、SpaceXは現在Falcon 9の運用を一時停止している。

From: 文献リンクWhile NASA’s lunar dreams wait, another crew eyes orbit

【編集部解説】

NASAのArtemis IIミッション延期は、宇宙開発における安全性と慎重さの重要性を改めて示すものです。ウェット・ドレス・リハーサルで水素漏れが検出されたことは、まさにこのテストが設計された目的そのものを果たしたと言えます。

水素は液体燃料として極めて効率的である一方、その取り扱いは非常に難しく、漏洩は火災や爆発の深刻なリスクを伴います。SLSロケットは高さ約98メートル、推力約880万ポンド(約3,990トン相当)という巨大なシステムであり、その基部での水素漏れは決して軽視できる問題ではありません。

興味深いのは、NASAの長官Jared Isaacmanの発言です。彼は民間宇宙飛行士として2度宇宙飛行を経験し、2025年12月にNASA長官に就任したばかりの人物です。「3年以上のブランクがあれば課題に直面することは予想していた」という彼の言葉は、宇宙開発の複雑さと、長期間の運用停止がもたらす技術的課題を率直に認めています。

一方で、SpaceXのCrew-12ミッションも不確実性に直面しています。Falcon 9は2010年の初飛行以来、極めて高い信頼性を誇ってきました。同ロケットは2023年だけで96回の打ち上げに成功し、商業宇宙輸送の主力となっています。そのFalcon 9で上段の軌道離脱燃焼に失敗したことは、異例の事態です。

軌道離脱燃焼は、ミッション完了後にロケット上段を安全に大気圏に再突入させるための重要な手順です。この燃焼が正常に行われないと、宇宙ゴミとして軌道上に残ってしまい、他の衛星や宇宙船との衝突リスクが高まります。SpaceXが迅速に原因を特定し対策を講じることが期待されます。

このような状況において、Artemis IIとCrew-12という2つの重要なミッションが同時期に計画されていたことは、2026年が有人宇宙飛行にとって重要な年であることを物語っています。Artemis IIは月周回飛行のみで月面着陸は行いませんが、将来のArtemis IIIでの月面着陸に向けた重要なステップとなります。

宇宙開発においては、スケジュールの遅延は決して珍しいことではありません。安全性を最優先する文化が、長期的には成功への確実な道となるのです。

【用語解説】

ウェット・ドレス・リハーサル
実際の打ち上げと同じ手順でロケットに燃料を充填し、カウントダウンまで実施する総合テスト。エンジンの点火は行わないが、燃料系統や各種システムの動作を確認できる。打ち上げ前の最終確認として極めて重要である。

SLSロケット(Space Launch System)
NASAが開発した超大型打ち上げロケット。高さ約98メートル、推力約880万ポンドを誇り、人類を月や火星に送ることを目的としている。Artemisプログラムの中核を担うロケットである。

軌道離脱燃焼
ミッション完了後、ロケット上段を軌道から離脱させて大気圏に再突入させるための逆噴射。これにより宇宙ゴミの発生を防ぐ。正常に実行されない場合、機体は軌道上に残り続けることになる。

【参考リンク】

NASA Artemis II(外部)
NASAのArtemis IIミッション公式ページ。ミッション詳細とクルー情報を提供

SpaceX(外部)
イーロン・マスク率いる民間宇宙企業。Falcon 9で有人輸送を担当

European Space Agency (ESA)(外部)
欧州宇宙機関の公式サイト。22カ国が参加し国際宇宙プログラムに貢献

Canadian Space Agency(外部)
カナダ宇宙庁。Artemis IIにJeremy Hansenを派遣し初の月周回飛行を実現

【参考記事】

NASA Conducts Artemis II Fuel Test, Eyes March for Launch Opportunity(外部)
NASAの公式ブログ。ウェット・ドレス・リハーサルの結果と延期の詳細を報告

NASA delays Artemis II moon mission after hydrogen leak detected(外部)
水素漏れの技術的詳細とNASAの対応を解説。過去の類似問題にも言及

SpaceX grounds Falcon 9 after upper stage anomaly(外部)
Falcon 9の上段異常についてSpaceXの対応と今後の影響を分析

【編集部後記】

月への旅が延期となったArtemis IIと、軌道上の宇宙ステーションを目指すCrew-12。この2つのミッションは、人類が宇宙に挑む2つの異なるアプローチを象徴しています。安全性を最優先する慎重さと、技術的課題を乗り越えていく決意。みなさんは、こうした有人宇宙飛行の未来にどのような期待を抱いていますか? 月への帰還が実現する瞬間を、私たちも、みなさんと一緒に見届けたいと思います。

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Satsuki
テクノロジーと民主主義、自由、人権の交差点で記事を執筆しています。 データドリブンな分析が信条。具体的な数字と事実で、技術の影響を可視化します。 しかし、データだけでは語りません。技術開発者の倫理的ジレンマ、被害者の痛み、政策決定者の責任——それぞれの立場への想像力を持ちながら、常に「人間の尊厳」を軸に据えて執筆しています。 日々勉強中です。謙虚に学び続けながら、皆さんと一緒に、テクノロジーと人間の共進化の道を探っていきたいと思います。

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