Last Updated on 2024-09-28 08:42 by admin
カリフォルニア大学バークレー校の研究チームが、プラスチックをガス化してリサイクルする新しい化学プロセスを開発した。この研究は2024年8月29日に科学誌「Science」で発表された。
主な特徴は以下の通り:
- ポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)という2種類の主要なプラスチックを分解できる。
- アルミナ上のナトリウムとシリカ上の酸化タングステンという2つの触媒を使用する。
- 混合プラスチックでも約90%の効率で分解が可能。
- 分解後はプロピレンとイソブチレンというガス状の化学物質になる。
- これらのガスは新しいプラスチック製品の原料として再利用できる。
- 従来の方法と比べて、より安価で一般的な触媒を使用している。
- 320℃程度の比較的低温で反応が進む。
- 少量の不純物が混じっていても効率的に分解できる。
この技術が実用化されれば、プラスチックの循環型経済の実現に大きく貢献する可能性がある。ただし、PETやPVCなどの不純物が多く混じると効率が低下するなど、課題も残されている。
from:Scientists Figured Out How to Recycle Plastic by Vaporizing It
【編集部解説】
プラスチックのリサイクル技術に大きな進展がありました。カリフォルニア大学バークレー校の研究チームが開発した新しい化学プロセスは、プラスチック廃棄物問題に対する画期的な解決策となる可能性を秘めています。
この技術の最大の特徴は、ポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)という2種類の主要なプラスチックを、元の単量体(モノマー)に分解できることです。これらのプラスチックは、世界の消費者プラスチック廃棄物の約3分の2を占めており、従来のリサイクル方法では効率的に処理することが困難でした。
新しいプロセスでは、アルミナ上のナトリウムとシリカ上の酸化タングステンという2つの触媒を使用します。これらの触媒は、プラスチックの長い高分子鎖を効率的に分解し、新しいプラスチック製品の原料となるガス状の化学物質に変換します。
従来の方法と比較して、この技術には several advantages があります。まず、使用する触媒が比較的安価で一般的なものであり、貴金属などの希少な材料を必要としません。また、320℃程度の比較的低温で反応が進むため、エネルギー効率が高いのも特徴です。
さらに、混合プラスチックでも約90%の効率で分解が可能であり、少量の不純物が混じっていても効果的に機能します。これは、実際のプラスチック廃棄物の処理において大きな利点となります。
しかし、課題もあります。PETやPVCなどの不純物が多く混じると効率が低下するため、これらの物質を分離する方法や、より耐性のある触媒の開発が必要です。また、産業規模での実用化に向けては、さらなる研究と最適化が求められます。
この技術が実用化されれば、プラスチックの循環型経済の実現に大きく貢献する可能性があります。新しいプラスチック製品を作るために化石燃料に頼る必要性が減少し、環境への負荷を軽減できるでしょう。
長期的には、この技術がプラスチック廃棄物管理の中核となり、廃棄物削減と温室効果ガス排出量の削減に貢献することが期待されます。しかし、プラスチックの使用自体を減らす努力も並行して続ける必要があることを忘れてはいけません。
この研究成果は、化学リサイクルの分野に新たな可能性を開くものであり、私たちの日常生活や環境保護に大きな影響を与える可能性があります。今後の発展と実用化に向けた取り組みに、注目していく必要があるでしょう。