タンデム太陽電池セル:効率50%向上で太陽光発電の未来を切り拓く

タンデム太陽電池セル:効率50%向上で太陽光発電の未来を切り拓く - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2024-09-29 09:24 by admin

米国の科学技術誌WIREDは2024年9月28日、タンデム太陽電池セルに関する記事を掲載した。タンデム太陽電池セルは、従来のシリコン太陽電池の上にペロブスカイト層を重ねた構造を持つ。この技術により、太陽電池の効率を50%以上向上させる可能性がある。

現在の一般的な太陽光パネルの効率は20-22%程度だが、タンデム太陽電池セルは30%以上の効率を達成できる。英国のオックスフォードPV社は、2024年6月に25%の効率を持つ太陽光パネルの世界記録を達成した。

中国のLONGi社は2024年6月14日、シリコン-ペロブスカイトタンデム太陽電池セルで34.6%の世界最高効率を達成したと発表した。さらに、6月19日には商用M6サイズのウェハーレベルで30.1%の効率を達成した。

タンデム太陽電池セルの理論上の最大効率は43%とされており、従来のシリコン単接合太陽電池の限界である33.7%を大きく上回る。この技術は、太陽光発電の普及を加速し、クリーンエネルギーへの移行を促進すると期待されている。

from:These Record-Breaking New Solar Panels Produce 60 Percent More Electricity

【編集部解説】

タンデム太陽電池セルの開発が急速に進んでいます。この技術は、従来のシリコン太陽電池の上にペロブスカイト層を重ねることで、太陽光の吸収効率を大幅に向上させるものです。

最新の研究成果によると、中国のLONGi社が2024年6月に34.6%という世界最高効率を達成しました。さらに、同社は商用サイズのM6ウェハーで30.1%の効率を実現しています。これらの数値は、従来のシリコン単接合太陽電池の理論限界である33.7%を超えており、太陽光発電の新たな可能性を示しています。

タンデム太陽電池セルの理論上の最大効率は43%とされており、今後さらなる効率向上が期待されます。この技術が実用化されれば、同じ面積でより多くの電力を生成できるようになり、太陽光発電の経済性と実用性が大きく向上する可能性があります。

一方で、タンデム太陽電池セルの実用化には課題もあります。ペロブスカイト材料の安定性や耐久性の向上、大規模生産技術の確立などが必要です。また、コスト面での競争力を確保することも重要な課題となっています。

規制の面では、この新技術の安全性や環境への影響を評価し、適切な基準を設ける必要があるでしょう。同時に、高効率太陽電池の普及を促進するための政策的支援も求められるかもしれません。

長期的には、タンデム太陽電池セルの実用化により、再生可能エネルギーの普及が加速し、エネルギー転換が促進される可能性があります。また、宇宙開発や電気自動車など、高効率な電力源を必要とする分野への応用も期待されます。

しかし、技術の進歩に伴い、既存の太陽光発電システムの陳腐化や、関連産業の構造変化といった課題も生じる可能性があります。社会全体でこの技術革新の恩恵を享受するためには、長期的な視点に立った戦略的な取り組みが必要となるでしょう。

【編集部解説:日本におけるタンデム太陽電池セルの現状】

日本は、タンデム太陽電池セル、特にペロブスカイト-シリコンタンデム型の開発において世界のトップ集団に位置しています。日本企業や研究機関は、高い変換効率と耐久性を実現するための技術革新に取り組んでおり、着実な成果を上げています。

現在、日本のタンデム太陽電池セル開発は主に以下の3つの方向性で進められています:

  1. フィルム型タンデム太陽電池:
    軽量で柔軟性があり、従来の太陽電池では設置が困難だった場所への応用が期待されています。エネコート・テクノロジーズや積水化学工業などが開発を進めています。
  2. ガラス型タンデム太陽電池:
    建築物の窓や外壁への統合が可能で、アイシン、カネカ、パナソニックなどが取り組んでいます。
  3. 高効率タンデム型太陽電池:
    シリコン太陽電池の置き換えを目指し、メガソーラーなどの大規模発電向けに開発が進められています。

日本政府も、グリーンイノベーション基金を通じてタンデム太陽電池セルの開発を支援しており、2030年までに発電コスト14円/kWh以下の達成を目標としています。また、福島県内での実証実験も計画されており、実用化に向けた取り組みが加速しています。

一方で、中国企業による大規模投資と急速な技術開発の進展が、日本企業にとって大きな課題となっています。日本企業は、高品質・高性能な製品開発や、建材一体型太陽電池(BIPV)などの特殊用途向け製品に注力することで、差別化を図っています。

今後、日本企業がグローバル市場でシェアを確保するためには、早期の量産化と海外展開が重要となります。また、産学連携の強化や政府の継続的な支援も、日本のタンデム太陽電池セル産業の競争力維持に不可欠です。

【用語解説】

  1. タンデム太陽電池
    2種類以上の太陽電池を積層した構造を持つ太陽電池。異なる波長の光を効率よく吸収できる。
  2. ペロブスカイト
    特定の結晶構造を持つ物質の総称。太陽電池材料として注目されている。
  3. シリコン
    現在の太陽電池の主流材料。安定性が高いが、効率に限界がある。

【参考リンク】

  1. LONGi Solar(外部)
    世界最大の太陽電池モジュールメーカー。高効率タンデム太陽電池の開発で世界記録を達成。
  2. Oxford PV(外部)
    ペロブスカイト太陽電池技術のリーダー企業。シリコン太陽電池の効率向上に取り組む。

関連YouTube動画:

Perovskite Silicon Tandem Solar Cells NEW FFICIENCY WORLD RECORD: 34.6% Efficiency (June 17, 2024)

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