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中国が世界初の快挙:炭素排出量1.6%減少を達成、太陽光・風力発電が石炭火力を逆転

中国が世界初の快挙:炭素排出量1.6%減少を達成、太陽光・風力発電が石炭火力を逆転 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-31 07:26 by admin

中国の炭素排出量が2025年第1四半期に前年同期比1.6%減少し、過去12か月間では1%減少した。これは経済減速ではなく、クリーンエネルギーの拡大による初の排出量削減である。中国の電力需要は2.5%増加したが、石炭火力発電は4.7%減少した。

3月単月で太陽光発電23ギガワット、風力発電13ギガワットが新設され、これは前月記録をそれぞれ80%、110%上回る。Carbon Briefの分析によると、電力部門のCO₂排出量は5.8%減少した。

一方、金属・化学産業では石炭使用量が増加し、粗鋼生産は0.6%、非鉄金属は2%上昇した。6月には再生可能エネルギーの新価格政策が導入され、太陽光・風力プロジェクトは買い手との直接契約が必要となる。

中国電力評議会は風力発電の年間追加容量が最大130ギガワットに達すると予測している。2026年予定の次期5か年計画が今後の排出量動向を決定する重要な要因となる。

From: 文献リンクA Global First: The World’s Biggest Polluter Switches From Fossil Fuels to Clean Energies — and the Planet Felt It

【編集部解説】

この排出量減少が歴史的である理由は、過去の減少が経済成長の鈍化や新型コロナウイルスによる活動制限に起因していたのに対し、今回は電力需要が増加する中での減少だからです。これは中国のエネルギー構造が根本的に変化していることを示唆しています。

再生可能エネルギーの爆発的成長

中国の太陽光・風力発電の設備容量が火力発電を上回ったのは2025年第1四半期が初めてです。太陽光・風力合計で1,482ギガワットに対し、火力発電は1,451ギガワットとなりました。この逆転は単なる数字の変化ではなく、エネルギー安全保障の観点から重要な意味を持ちます。

6月に導入される新価格政策は、再生可能エネルギー事業者にとって大きな転換点となります。これまでの固定価格制度から市場ベースの価格設定に移行することで、より効率的な事業者が生き残る競争環境が生まれる一方、短期的には設置ラッシュを引き起こしています。

グローバルな波及効果

中国は世界の炭素排出量の約30%を占めるため、この変化は地球規模の気候変動対策に大きな影響を与えます。また、中国製の太陽光パネルや風力発電機器の価格競争力が高まることで、世界各国の再生可能エネルギー導入コストも下がる可能性があります。

潜在的なリスクと課題

ただし、排出量は過去のピークからわずか1%の減少に留まっており、経済刺激策や産業政策の変更によって再び増加に転じるリスクも残されています。特に石炭化学部門の成長や、米中貿易摩擦への対応として輸出産業が拡大すれば、排出量が再び増加する可能性もあります。

長期的な展望

2026年に発表予定の第15次5か年計画が、この傾向の持続性を決定する重要な要因となるでしょう。中国政府が国内消費重視の経済構造転換を進められるかどうかが、世界の脱炭素化の行方を左右することになります。

【用語解説】

Carbon Brief
英国を拠点とする気候科学・気候政策・エネルギー政策の最新動向を扱う独立系ウェブサイト。データ駆動型の記事とグラフィックスを専門とし、気候変動の科学と政策対応の理解向上を目的としている。

Centre for Research on Energy and Clean Air(CREA)
エネルギーと大気汚染の動向、原因、健康への影響、および解決策の解明に焦点を当てた独立系研究機関。化石燃料燃焼による健康被害汚染物質が年間少なくとも300万人の大気汚染死を引き起こしているとの分析を行っている。

ギガワット(GW)
電力の単位で、10億ワットに相当する。大規模発電所の発電容量を表す際に使用される。参考として、一般的な原子力発電所1基の出力が約100万キロワット(1GW)程度である。

石炭化学部門
石炭を原料として化学製品を製造する産業分野。石炭をガス化して合成ガスを製造し、それを原料にプラスチックや化学繊維などの化学製品を生産する。中国では石油・ガス輸入依存度を下げる戦略として重視されている。

第15次5か年計画
中国政府が2026年から2030年までの経済・社会発展目標を定める国家計画。エネルギー政策や気候変動対策の方向性を決定する重要な政策文書となる。

【参考リンク】

Carbon Brief(外部)
英国を拠点とする気候科学・エネルギー政策の専門ウェブサイト。データ駆動型の分析記事と視覚的なグラフィックスで気候変動問題を解説している。

Centre for Research on Energy and Clean Air(外部)
エネルギーと大気汚染研究に特化した独立系研究機関。化石燃料による健康影響の分析や、クリーンエネルギー移行に関する政策提言を行っている。

ジェトロ(日本貿易振興機構)(外部)
日本の貿易・投資促進機関。中国の炭素排出削減政策とビジネスチャンスに関する詳細な分析レポートを提供している。

【参考動画】

【編集部後記】

中国がクリーンエネルギーへの転換を進める中、私たちの生活や未来にどのような影響があるか一緒に考えてみませんか?再生可能エネルギーの拡大は地球環境にどんな変化をもたらすでしょうか?皆さんの身近なエネルギー利用についても振り返ってみる良い機会です。未来のエネルギー社会について、どんな期待や不安を感じますか?ぜひ、あなたの考えをSNSで共有してください。

【参考記事】

Analysis: Clean energy just put China’s CO2 emissions into reverse for first time – Carbon Brief(外部)
今回の記事の主要データソースとなったCarbon Briefの詳細分析記事。中国の排出量減少の構造的要因を数値とグラフで詳しく解説している。

China achieves milestone in renewable energy transition – Power Technology(外部)
2025年4月に風力・太陽光発電が中国の電力供給の26%を占めたという画期的な達成について報じた記事。再生可能エネルギーの急速な拡大を具体的数値で示している。

China’s carbon emissions decline by 1.6% amid clean energy surge – Energy Monitor(外部)
CREAの分析に基づく中国の炭素排出量減少に関する報告。電力需要増加にもかかわらず排出量が減少した歴史的転換点について詳しく分析している。

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TaTsu
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