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中国の三峡ダムが地球の自転を遅らせる – 400億立方メートルの水が地球に与える影響

中国の三峡ダムが地球の自転を遅らせる - 400億立方メートルの水が地球に与える影響 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-06-20 18:16 by admin

NASAが2005年から始めた研究により、中国湖北省の三峡ダムが地球の自転に影響を与えていることが判明した。三峡ダムは2012年に完成し、長江を横断して全長2,309メートル、高さ185メートルの世界最大の水力発電所である。

このダムの発電能力は2,250万キロワット(22,500メガワット)で、約400億立方メートル(40立方キロメートル)の水を貯水している。この巨大な水量が地球の赤道付近に集中することで地球の慣性モーメントが変化し、1日の長さが0.06マイクロ秒延長された。

NASAゴダード宇宙飛行センターのベンジャミン・フォン・チャオ博士は「地球システム内での質量の再分布は地球の自転に影響を与える。0.06マイクロ秒の遅延は微小だが測定可能な結果である」と説明している。

この現象は回転するフィギュアスケーターが腕を広げると回転が遅くなる物理法則と同じ原理である。

From: 文献リンクNASA Warns: China Hidden Power Could Slow Earth’s Rotation Instantly with a Single Move

【編集部解説】

三峡ダムが地球の自転に与える影響は、角運動量保存の法則に基づいています。フィギュアスケーターが腕を広げると回転が遅くなる現象と同じ原理で、地球の質量分布が変化すると自転速度も変わります。三峡ダムの貯水池は北緯30.8度に位置し、赤道寄りに大量の水を集中させることで地球の慣性モーメントを増加させ、結果として自転を遅くしているのです。

測定技術と科学的意義

0.06マイクロ秒という極めて微小な変化を測定できること自体が、現代の精密測定技術の進歩を示しています。この測定は人工衛星や原子時計を用いた高精度観測により可能となっており、人類の工学技術が惑星規模の物理現象に影響を与えることを初めて定量的に証明した画期的な成果といえるでしょう。

他の自然現象との比較

興味深いことに、自然現象も地球の自転に大きな影響を与えています。2004年のインドネシア津波では地球の北極が2.5センチメートル移動し、同年の地震では1日が2.68マイクロ秒短縮されました。これらと比較すると、三峡ダムの影響(0.06マイクロ秒の延長、軸の2センチメートル移動)は相対的に小さいものの、人為的な構造物による初の測定可能な影響として重要な意味を持ちます[5]。

長期的な研究の蓄積

NASAによる三峡ダムの研究は2005年に始まり、約20年間にわたる継続的な観測データに基づいています。この長期間の研究により、人為的な大規模インフラが惑星の物理現象に与える影響を科学的に実証することができました。

エネルギー供給への貢献

三峡ダムは22,500メガワットの発電能力を持ち、15基の原子力発電所に相当する電力を供給しています。これにより石炭依存の削減と炭素排出量の低減に貢献し、重要な再生可能エネルギー源として機能しています。

将来への示唆と課題

この発見は、大規模インフラプロジェクトの設計段階で惑星への影響も考慮すべき時代が到来したことを意味しています。中国が計画している宇宙太陽光発電プロジェクトなど、さらに大規模な工学プロジェクトが実現すれば、累積的な影響はより顕著になる可能性があります。

科学的価値と実用的影響のバランス

現時点では0.06マイクロ秒の変化は日常生活に全く影響しませんが、GPS衛星の精密な時刻同期や天文観測などの超高精度を要求される分野では、将来的に補正が必要になる可能性も考えられます。人類の技術力が惑星規模の現象に影響を与えるという事実は、我々の責任の重さを改めて認識させる重要な発見なのです。

【用語解説】

角運動量保存の法則
回転する物体において、外力が働かない限り角運動量(慣性モーメント×角速度)が一定に保たれる物理法則。

重力式コンクリートダム
コンクリートの重量によって水圧に対抗する構造のダム。三峡ダムもこの形式で、堤高185メートル、堤長2,309メートルの巨大な構造物である。

【参考リンク】

NASA(アメリカ航空宇宙局)(外部)
アメリカ合衆国の宇宙開発と宇宙科学研究を担当する政府機関。宇宙探査、地球観測、天体物理学研究など幅広い分野で活動

NASAゴダード宇宙飛行センター(外部)
メリーランド州にあるNASAの主要研究施設。地球科学、太陽系探査、宇宙物理学の研究開発を担当

中国長江三峡集団公司(外部)
三峡ダムを運営する中国の国有企業。ダムの技術仕様、発電実績、環境への取り組みなどの情報を提供

【参考動画】

【参考記事】

China Disrupts Earth’s Rotation: NASA Confirms Massive Project(外部)
NASAの2005年報告に基づく三峡ダムの地球自転への影響について、環境・持続可能性の観点から詳細に解説

NASA warns: China’s Three Gorges Dam could slow Earth’s rotation(外部)
三峡ダムによる0.06マイクロ秒の地球自転遅延について、物理学的メカニズムと科学的意義を詳述

China has slowed the Earth’s rotation and lengthened the day(外部)
ベンジャミン・フォン・チャオ博士の研究を中心に、三峡ダムが地球の自転軸に与える2cm移動の影響を報告

【編集部後記】

三峡ダムが地球の自転を0.06マイクロ秒遅らせるという発見は、人類の測定技術が遂にマイクロ秒という極微の時間変化を捉えられるまでに進歩したことを物語っています。人工衛星と原子時計による精密観測が可能にしたこの成果は、私たちの工学技術が惑星規模の物理現象に影響を与える時代の到来を告げる歴史的な一歩といえるでしょう。

また、このような発見を踏まえて、未来の巨大プロジェクトには惑星への影響評価も必要になると考えられますが、技術の進歩と地球環境の保護をどのようにバランスさせるべきでしょうか?ぜひご意見をお聞かせください。

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TaTsu
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