Last Updated on 2024-08-07 16:06 by admin
2024年8月6日、S&Pグローバル(NYSE: SPGI)とアクセンチュア(NYSE: ACN)は、金融サービス業界におけるジェネレーティブAIイノベーションを推進するための戦略的提携を発表した。
この提携の一環として、S&Pグローバルは全従業員35,000人を対象に、ジェネレーティブAIに関する包括的な学習プログラムを8月から開始する。このプログラムは、アクセンチュアのLearnVantageサービスを活用し、カスタマイズされたコンテンツを提供する。
両社は、金融サービス業界向けのAI開発とベンチマーキングソリューションの強化も計画している。アクセンチュアのFoundation Model Servicesと、S&PのAI Benchmarks by Kenshoを組み合わせ、大規模言語モデル(LLM)の管理とスケーリングを支援する。
S&Pグローバルの最高AIオフィサーであるバヴェシュ・ダヤルジ氏は、この取り組みが従業員と顧客のジェネレーティブAI活用を支援し、金融サービス業界の変革を促進すると述べた。
アクセンチュアの最高AIオフィサーであるラン・グアン氏は、AIを効果的に展開・拡大できる人材が現在不足しており、S&Pグローバルのような企業がジェネレーティブAI時代に向けて適切な対策を講じていると評価した。
from:S&P Global partners with Accenture, launches massive AI training program for 35,000 employees
【編集部解説】
S&Pグローバルとアクセンチュアの戦略的提携は、金融サービス業界におけるジェネレーティブAIの活用を大きく前進させる可能性を秘めています。この取り組みの中核となる35,000人規模のAI学習プログラムは、業界全体に波及効果をもたらす可能性があります。
まず、この大規模な教育プログラムは、金融データ分析の革新を加速させると考えられます。S&Pグローバルの従業員がAIツールを効果的に活用できるようになれば、より迅速かつ正確な金融分析が可能になるでしょう。これは、投資家や企業にとって、より信頼性の高い情報に基づいた意思決定を可能にします。
また、この取り組みは金融サービス業界全体のAI活用を促進する可能性があります。S&Pグローバルのような大手企業がAI教育に本格的に乗り出すことで、他の金融機関も追随する可能性が高く、業界全体のAIリテラシー向上につながるでしょう。
一方で、AIの急速な導入には潜在的なリスクも存在します。例えば、AIモデルのバイアスや誤った予測が金融市場に与える影響は無視できません。そのため、アクセンチュアのFoundation Model ServicesとS&PのAI Benchmarksの組み合わせは、AIモデルの性能評価と責任あるAI開発を促進する重要な役割を果たすと考えられます。
長期的な視点では、この取り組みは金融サービス業界の労働市場にも大きな影響を与える可能性があります。AIスキルを持つ人材の需要が高まり、従来の金融スキルとAIスキルを併せ持つハイブリッド人材が重宝されるようになるかもしれません。
規制の観点からも、このような大規模なAI導入は注目されるでしょう。金融規制当局は、AIの使用に関する新たなガイドラインや規制の必要性を検討する可能性があります。
【用語解説】
【参考リンク】
【編集部追記】
記事本文に出てくるS&Pのkenshoについて、興味を持ったので調べてみました。
最初はkaizen(改善)のようにkensho(検証)という言葉が海外で使われているのかな?と思いました。また、日本人が創業者かな・・とか。
ぜんぜん違いました。
Kensho Technologies社の紹介:
Kensho Technologiesは、2013年にハーバード大学の卒業生によって設立された人工知能企業です。同社は、金融サービス業界向けの革新的なAIソリューションを提供しています。2018年にS&Pグローバルに買収され、現在はS&Pグローバルの人工知能イノベーションハブとして機能しています。Kenshoは、複雑な金融データを分析し、意味のある洞察を導き出すための先進的なツールを開発しています。
Kensho Technologies社のデータへのアプローチ:
Kensho Technologies社は、「乱雑なデータを意味のあるものに変換する」というミッションを掲げています。同社は、高度な機械学習や自然言語処理技術を駆使して、構造化されていないデータから価値ある情報を抽出します。特に、Kensho Linkという製品は、企業のデータベース内のエンティティをS&Pグローバルの企業データベースにマッピングする機能を提供し、データの標準化と管理を支援しています。このアプローチにより、金融機関はより正確で迅速な意思決定を行うことが可能になります。
見性の本来の意味:
「見性」(けんしょう)は禅仏教に由来する言葉で、「自己の本性を見る」または「自己の仏性を見る」という意味を持ちます。これは、人間に本来備わっている根源的な本性を直接的に認識する体験を指します。禅の修行において、見性は悟りへの重要な一歩とされ、物事の本質を見抜く能力や新しい視点の獲得を意味します。Kensho Technologies社の名前は、このような深い洞察や本質の理解という概念から着想を得ていると考えられ、複雑なデータの中から真の意味を見出すという同社のミッションと通じるものがあります。