鴻池運輸株式会社は、業務プロセスのデジタル化やデータ活用に向けた「生成AI活用プロジェクト」を本格始動する。
同プロジェクトは2024年12月に鴻池運輸ICT推進本部デジタルトランスフォーメーション推進部が発足し、労働力不足の解消や働き方改革の実現、従業員の生産性とウェルビーイング向上を目的とする。
プロジェクト内容は、自社クラウド上でのセキュアな開発環境構築、2025年6月のAIガバナンス協会への加入、全社員と経営層を対象としたAI活用研修の実施、AIアンバサダー認定制度の開始、定型資料作成自動化やFAQチャットボット開発などである。
2028年3月期までに生成AIを活用したユースケース数12件以上を数値目標とする。KONOIKEグループは2030年ビジョンで「技術で、人が、高みを目指す」を掲げている。
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KONOIKEグループ「生成AI活用プロジェクト」を本格始動
【編集部解説】
物流業界が2024年問題という大きな転換期を迎えた中で、鴻池運輸の取り組みは「現場主導のAI活用」という点で注目に値します。多くの企業が生成AI導入を検討する段階にとどまる中、同社は2024年12月のプロジェクト発足から約1年で全社展開の基盤を整えました。
特筆すべきは「AIアンバサダー」という仕組みです。これは単なる研修制度ではなく、現場で実際にAIを使いこなせる人材を各部署に配置し、その人材が周囲に活用法を広げていく自律的なエコシステムを目指しています。トップダウンでのツール配布ではなく、現場の声を反映しながらユースケースを増やしていく手法は、物流という多様な現場を持つ企業ならではの戦略といえるでしょう。
AIガバナンス協会への加入も重要なポイントです。生成AIの活用が進むほど、セキュリティリスクや倫理的課題が浮上します。鴻池運輸は自社クラウド上にセキュアな環境を構築することで、機密情報を外部に出さずにAIを活用する体制を整えました。これは物流業界が扱う顧客情報や配送データの機密性を考慮した、現実的な選択です。
2028年3月期までにユースケース12件以上という数値目標は、一見控えめに映るかもしれません。しかし物流業界におけるAI活用の現状を見れば、実証実験段階の企業が多い中で、実務に根ざした12のケースを確立することは十分に野心的な目標といえます。定型資料作成の自動化やFAQチャットボットといった「小さな成功体験」を積み重ねることで、現場の抵抗感を減らし、より高度な活用へと段階的に進化させる戦略が見て取れます。
物流業界では配送ルート最適化で効率20〜30%向上、在庫管理で回転率30%改善といった成果が報告されています。鴻池運輸の取り組みが、労働力不足という構造的課題に対する一つの解答として、業界全体に波及していく可能性は高いでしょう。
【用語解説】
PoC(概念検証)
Proof of Conceptの略で、新しい技術やアイデアが実現可能かどうかを検証する初期段階のプロセスを指す。本格導入前に小規模で試験的に実施し、効果や課題を確認する。
ハンズオン型教育
座学ではなく、学習者が実際に手を動かして体験しながら学ぶ実践的な学習方法。AIツールの場合、実際の業務データを使いながら操作方法や活用法を習得する。
AIアンバサダー
組織内でAI活用を推進する役割を担う人材。自らAIツールを使いこなすだけでなく、周囲の社員にノウハウを伝え、現場でのAI活用の浸透を促進する。
AIガバナンス
AI技術の開発・利用における倫理性、透明性、安全性を確保するための管理体制。データのプライバシー保護や偏見の排除、説明責任などを含む包括的な取り組みを指す。
ウェルビーイング
単なる健康だけでなく、身体的・精神的・社会的に良好な状態を指す概念。企業文脈では、従業員の働きがいや生活の質の向上を含む総合的な幸福を意味する。
【参考リンク】
鴻池運輸株式会社(外部)
物流を中核に製造、医療、空港業務などを展開するKONOIKEグループの中核企業。1880年創業の歴史を持つプロフェッショナルサービス集団。
一般社団法人 AIガバナンス協会(AIGA)(外部)
AI技術の適切な利活用とガバナンス体制の構築を支援。企業のAI導入における倫理的配慮やリスク管理のガイドライン策定を行う。
Algomatic株式会社(外部)
企業向けに生成AIプラットフォームの導入支援やAI人材育成プログラムを提供。セキュアなLLM導入支援を中心に企業のAI活用を総合サポート。
【参考記事】
鴻池運輸/業務プロセスデジタル化などに向け生成AI活用プロジェクト本格始動(外部)
鴻池運輸の生成AI活用プロジェクトの詳細。AIアンバサダー制度の導入と2028年3月期までにユースケース12件以上という具体的な数値目標を紹介。
物流・運輸業における生成AI活用|業務効率化の最前線と実践(外部)
物流業界におけるAI活用事例を包括的に解説。配送ルート最適化で効率20〜30%向上、在庫管理で回転率30%改善という具体的な成果データを提示。
鴻池が全社AI活用を本格化、Algomaticが基盤構築(外部)
鴻池運輸とAlgomaticの協業体制を詳述。セキュアな自社クラウド環境の構築と現場主導でのAI活用推進という戦略的アプローチを報じる。
【Algomatic】企業の業務変革を実現する生成AI人材育成のための研修プログラム(外部)
Algomaticが提供するAI人材育成プログラムの詳細。ハンズオン型の実践的な教育手法と企業ごとにカスタマイズされた研修内容を説明。
2025年 サプライチェーンにおけるAI活用実態調査(外部)
物流・サプライチェーン業界全体のAI活用動向を調査。業界における導入状況と課題、今後の展望について包括的なデータを提供。
【編集部後記】
みなさんの職場では、AIをどのように活用していますか?鴻池運輸の取り組みで興味深いのは、トップダウンではなく「現場の声」を大切にしている点です。
AIアンバサダーという仕組みは、各部署に実践者を配置することで、現場ならではの使い方を見つけていく試みといえます。物流業界では配送効率20%向上や配送コスト15%削減といった成果が報告されていますが、数字以上に大切なのは「人と技術の融合」という姿勢かもしれません。みなさんの業界でも、こうした現場主導のアプローチは可能でしょうか?






























