インフルエンサー選定が「フォロワー数」から「視聴者行動データ」へ──。博報堂がGoogle「Insights Finder」を武器に、860億円規模の市場で起きているマーケティングの地殻変動を加速させる。
株式会社博報堂は、2025年12月19日、Googleが提供するインサイト発見ツール「Insights Finder」を活用したインフルエンサー施策支援を開始した。
「Insights Finder」は、GoogleやYouTubeなどのデータを用い、特定トピックに関心を持つオーディエンスの発見や市場トレンド、関連興味関心を分析・可視化するマーケティングツールである。博報堂は、このツールで得られるオーディエンスインサイトを活用し、インフルエンサーの選定に用いることで、インフルエンサーマーケティングの効果最大化を目指す
。施策では博報堂が戦略立案を行い、Hakuhodo DY ONEおよびHUUMと連携し、広告の制作から配信、分析まで博報堂DYグループとして一貫支援する。効果計測にはGoogleのデータクリーンルーム「Ads Data Hub」を活用し、商材理解や購買などKPIへの寄与度の可視化を行う。
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博報堂、Googleの「Insights Finder」を活用しインフルエンサーマーケティングを強化
【編集部解説】
博報堂のこの取り組みは、インフルエンサーマーケティング領域における「勘と経験」から「データドリブン」への大きな転換点を示しています。
「Insights Finder」は、Google検索やYouTubeなど膨大なプラットフォームデータを活用し、特定トピックに関心を持つオーディエンスの行動パターンや興味関心を可視化するツールです。例えば、ある商品カテゴリに興味を持つ層がどのYouTubeチャンネルを視聴しているか、どんな検索トレンドと連動しているかといった、従来は把握しづらかったインサイトを抽出できます。
日本のインフルエンサーマーケティング市場は2024年に約860億円規模となり、前年比116%という急成長を遂げています。2029年には1,645億円に達する見込みで、デジタルマーケティングの中核戦略として確立しつつあります。一方で、多くの企業が「誰を起用すべきか」「効果をどう測るか」という課題に直面しており、この領域でのデータ活用ニーズは極めて高まっています。
今回の施策で注目すべきは、単なるインフルエンサー選定にとどまらず、効果測定まで一気通貫でカバーする点です。「Ads Data Hub」というデータクリーンルームを活用することで、プライバシーを保護しながら広告ログデータに直接アクセスし、インフルエンサー施策が商材理解や購買行動にどう寄与したかを定量的に検証できます。
この仕組みによって、マイクロインフルエンサーのような従来発掘が難しかった層も、ターゲットとの親和性を根拠に選定できるようになります。また、施策後の効果をKPIレベルで可視化できるため、PDCAサイクルを高速で回せる環境が整います。
ただし、データに依存しすぎると、数値には表れにくい「共感」や「文脈」を見落とすリスクもあります。博報堂が強調する「生活者インサイト」や「企画力」との掛け合わせが、どこまで機能するかが成否の鍵を握るでしょう。
【用語解説】
Insights Finder
Googleが提供するマーケティングツールで、Google検索やYouTubeのデータを活用し、特定トピックに関心を持つオーディエンスの行動パターンや市場トレンドを分析・可視化する。企業が効果的なターゲティング戦略を立案するためのインサイト発見を支援する。
Ads Data Hub
Googleが提供するデータクリーンルームで、プライバシーを保護しながら広告キャンペーンのログデータに安全にアクセスし、詳細な効果測定や分析を可能にする。広告がどのようにコンバージョンや購買行動に寄与したかを定量的に検証できる。
データクリーンルーム
複数企業のデータを個人情報を匿名化した状態で統合・分析できる安全な環境。プライバシー規制に準拠しながら、マーケティング効果の詳細な測定やオーディエンス分析を実現する技術基盤である。
マイクロインフルエンサー
フォロワー数は数千から数万程度と限定的だが、特定のニッチな分野で高いエンゲージメント率と信頼性を持つインフルエンサー。メガインフルエンサーよりも費用対効果が高く、ターゲット層への深いリーチが可能である。
オーディエンスインサイト
視聴者や顧客層の行動パターン、興味関心、属性、コンテンツ消費傾向などを深く分析して得られる知見。マーケティング戦略の精度を高めるための重要なデータである。
【参考リンク】
Google Insights Finder(外部)
Googleの無料オーディエンス分析ツール。検索やYouTubeデータから市場トレンドや顧客インサイトを発見し、マーケティング戦略立案を支援
博報堂(外部)
東京都港区に本社を置く総合広告代理店。生活者発想を軸にマーケティング、クリエイティブ、デジタルなど幅広い事業領域を展開
Hakuhodo DY ONE(外部)
博報堂DYグループのデジタルマーケティング専門会社。デジタル広告の戦略立案から運用、分析まで一貫したサービスを提供
HUUM(外部)
博報堂DYグループのインフルエンサーマーケティング専門会社。YouTubeやSNSクリエイターとのネットワークを活かす
【参考記事】
Insights Finder: Google’s Market Insights Tool(外部)
Insights Finderがどのように市場トレンドやオーディエンスの興味関心を可視化し、広告主のターゲティング精度を向上させるかを解説
Influencer Marketing in Japan – Statistics & Facts (Updated 2025)(外部)
日本のインフルエンサーマーケティング市場が2024年に約860億円規模、2029年には1,645億円に達する見込みを示す統計データ
Real-Time Insights from Google’s Ads Data Hub(外部)
Ads Data Hubがプライバシーを保護しながらリアルタイムのキャンペーン効果測定を可能にする技術的仕組みを解説
Influencer Marketing in Japan: Complete 2025 Strategy Guide(外部)
日本市場におけるインフルエンサーマーケティングの特性、主要プラットフォームの活用戦略、成功のポイントを包括的に解説
【編集部後記】
インフルエンサーマーケティングが「データで選ぶ時代」に入りつつあることを、みなさんはどう感じますか。従来の「フォロワー数」や「知名度」だけでなく、視聴者の行動データから最適な発信者を見つける手法は、企業だけでなく、クリエイター側にとっても新たなチャンスを生むかもしれません。
一方で、数値化できない「共感」や「文脈」の価値が見落とされるリスクも気になります。データとクリエイティビティのバランスをどう取るべきか、みなさんと一緒に考えていきたいテーマです。































