GoogleのAI Overviewsが検索エコシステムを激変させている。オーガニックCTRは61%減少、有料広告も68%急落する中、SEO担当者が今すぐ経営層と共有すべきデータと戦略とは何か。
Search Engine Landは2025年12月23日、Nick LeRoyによる記事「AI’s impact on search isn’t a secret (How to talk to execs about the new era of search)」を公開した。
記事では、AIが検索エコシステムに与える影響と経営層への説明方法を解説している。ChatGPT、Gemini、Perplexityなどのツールがユーザー行動を変化させ、Googleから検索を引き離している。
GoogleのAI Overviewsの展開により、サードパーティサイトへのクリック数が減少し、オーガニックCTRの61%減少が報告されている。LLMは一部のトラフィックを送っているが、従来の検索から失われたものと比較すると微々たるものである。
記事は、データに基づいた経営層へのブリーフィング方法、期待値のリセット、SEO戦略の適応方法を提示し、2026年には何らかのバージョンの「AIモード」がGoogleのデフォルト体験になる可能性が高いと述べている。
From:
AI’s impact on search isn’t a secret (How to talk to execs about the new era of search)
【編集部解説】
この記事が投げかけているのは、SEO業界における「不都合な真実」との向き合い方です。2024年6月から2025年9月にかけて実施されたSeer Interactiveの調査によると、AI Overviewsが表示される検索クエリにおいて、オーガニックCTRは1.76%から0.61%へと61%減少しました。さらに深刻なのは、有料広告のCTRが19.7%から6.34%へと68%も急落している点です。
注目すべきは、AI Overviewsが表示されない検索クエリでさえ、オーガニックCTRが前年比で41%減少している事実でしょう。これは単にGoogleの機能変更による影響ではなく、ユーザーの検索行動そのものが根本的に変化していることを示唆しています。
一方で、ChatGPTやPerplexityからの参照トラフィックは、全体のわずか0.1%から0.25%程度に留まっています。Googleが1日に140億回の検索を処理するのに対し、ChatGPTは約3,750万回のプロンプトしか処理していません。つまり、LLMからの新規流入は失われたトラフィックを補填するには程遠い状況です。
GoogleのAIモードについては、2025年3月に静かに導入され、同社のLogan Kilpatrick氏が「間もなくデフォルト体験になる」と発言しましたが、その後Google側は慎重な姿勢に転じています。しかし、google.com/aiという直接アクセスURLが設定されるなど、インフラとしての位置づけは着実に強化されています。
この状況で企業が取るべき戦略は、従来のランキングやトラフィック指標からの脱却です。AI Overviewsに引用されたブランドは、引用されないブランドと比較してオーガニッククリックが35%増、有料クリックが91%増となるデータも出ています。つまり、「クリックされる前提」から「引用される前提」への戦略転換が求められているのです。
この記事が経営層との対話を強調する理由は明確です。SEO担当者だけでこの構造変化に対応することは不可能だからです。予算配分、KPI設定、部門横断の協力体制、そして何より「短期的な数値悪化を許容する覚悟」が組織全体に必要になります。
【用語解説】
AI Overviews(AIO)
Googleが検索結果ページの上部に表示するAI生成の回答要約機能。ユーザーの検索クエリに対して、複数のソースから情報を統合し、直接的な回答を提供する。従来の検索結果とは異なり、ユーザーがサイトをクリックせずに情報を得られるため、サードパーティサイトへのトラフィック減少の主因となっている。
LLM(Large Language Model)
大規模言語モデルの略称。膨大なテキストデータで学習された人工知能モデルで、ChatGPTやGemini、Claude等がこれに該当する。人間のような自然な対話や文章生成が可能で、検索エンジンの代替として利用されるケースが増加している。
オーガニックCTR(Click-Through Rate)
検索結果に表示された際に、実際にクリックされる割合を示す指標。AI Overviewsの展開により、ユーザーが検索結果ページ内で情報を得て満足するケースが増え、サイトへのクリック率が大幅に低下している。
SERP(Search Engine Results Page)
検索エンジンの検索結果ページのこと。ユーザーがキーワードを入力した後に表示される画面を指す。AI Overviewsの登場により、SERPの構造と機能が根本的に変化している。
【参考リンク】
Search Engine Land(外部)
検索エンジンマーケティングとSEOに特化した業界メディア。最新のアルゴリズム変更、ベストプラクティス、業界動向を報じる専門サイト。
ChatGPT(OpenAI)(外部)
OpenAIが開発した対話型AI。自然言語処理により質問に詳細な回答を生成し、検索エンジンの代替として利用されるケースが増加している。
Perplexity AI(外部)
AI搭載の検索エンジン。従来の検索結果リストではなく、質問に対する直接的な回答を引用元明示で提供する新興プラットフォーム。
Google Gemini(外部)
Googleが開発した大規模言語モデルおよび対話型AIサービス。多様なタスクに対応し、検索機能とも統合されている。
Semrush(外部)
SEO、コンテンツマーケティング、競合分析を支援する総合的なデジタルマーケティングプラットフォーム。AI可視性追跡機能も提供。
【参考記事】
Google AI Overviews reduce organic CTR 61%, paid traffic 68%(外部)
Seer Interactiveの調査データを基に、AI Overviewsが表示される検索クエリにおけるCTR減少を報告している。
AIO Impact on Google CTR: September 2025 Update(外部)
2024年6月から2025年9月にかけてのデータ分析により、AI Overviewsの影響を定量化した調査レポート。
AI search traffic from Perplexity & ChatGPT is just a rounding error with good PR(外部)
ChatGPTやPerplexityからの参照トラフィックが全体の0.25%未満に過ぎない現実を示すデータ分析記事。
Google AI Mode may become the default Google Search experience soon(外部)
GoogleのLogan Kilpatrick氏が「AIモードが間もなくデフォルト体験になる」と発言したことを報じる記事。
AI Traffic in 2025: Comparing ChatGPT, Perplexity & Other AI Platforms(外部)
2025年のAIプラットフォームからのトラフィック動向を比較分析し、具体的なデータと共に検証している。
【編集部後記】
検索トラフィックの減少に直面している方も多いのではないでしょうか。この記事が示すのは、従来のSEO指標だけでは見えない構造変化です。あなたのサイトでは、AI Overviewsが表示されるクエリとそうでないクエリで、CTRにどれほどの差が生まれているでしょうか。
Google Search Consoleのデータを改めて見直してみると、新たな発見があるかもしれません。そして、もし経営層との対話を躊躇しているなら、この記事が提案する「データで語る」アプローチは参考になるはずです。変化を恐れるのではなく、変化の中で何が測定可能かを一緒に考えていきましょう。































