キーワード検索で商品を「探す」時代から、AIとの対話で商品と「出会う」時代へ。楽天市場アプリに搭載されたエージェント型AI「Rakuten AI」が、日本のECに新しい風を吹き込もうとしている。
楽天グループ株式会社は2026年1月5日、エージェント型AIツール「Rakuten AI」を「楽天市場」のスマートフォンアプリに搭載したと発表した。
AIコンシェルジュがユーザーとの対話を通じてニーズを理解し、商品選びをサポートする。ユーザーはアプリのホーム画面右下のアイコンからアクセスし、希望予算、購入目的、活用シーンなどをテキスト、音声、画像で入力できる。約5億点の商品群から条件に合った商品を提案する。提案する商品情報には、商品情報や価格比較情報に加えて、気候、流行、社会情勢などのトレンドも反映される。
今後はEコマースサービスから得られるマーケティングデータを活用し、提案精度を向上させる予定だ。楽天は「AI-nization(エーアイナイゼーション)」をテーマに掲げ、AI活用を推進している。iOS版とAndroid版で利用可能である。
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楽天、エージェント型AIツール「Rakuten AI」を「楽天市場」のスマートフォンアプリに搭載

【編集部解説】
楽天が2025年7月に本格提供を開始した「Rakuten AI」が、ついに楽天市場のスマートフォンアプリに搭載されました。この展開は当初から予告されていたもので、楽天が掲げる「AI-nization(エーアイナイゼーション)」戦略における重要なマイルストーンとなります。
今回注目すべきは、単なるチャットボットではなく「エージェント型AI」という点です。エージェント型AIとは、ユーザーの指示に対して単に応答するだけでなく、自律的に判断し、複数のステップにわたるタスクを実行できるAIを指します。従来の生成AIが「質問に答える」ことに特化していたのに対し、エージェント型AIは「目標達成のために行動する」ことができます。
楽天市場における約5億点という膨大な商品群から最適な商品を見つけ出すには、従来のキーワード検索だけでは限界がありました。「30代男性へのプレゼントで予算1万円」といった曖昧な条件や、「夏のキャンプで使える便利グッズ」といった状況ベースの検索に対して、AIが対話を通じて潜在的なニーズを引き出し、最適な提案を行います。
特に興味深いのは、マルチモーダル入力への対応です。テキストだけでなく、音声や画像を使って商品を探せるため、「この写真と似た商品を探して」といった直感的な検索が可能になります。これは、ECにおける「偶然の出会い」を生み出す「ディスカバリーショッピング」という新しい購買体験の実現を意味しています。
さらに注目すべきは、楽天市場の商品情報だけでなく、気候や流行、社会情勢といったウェブ上のトレンド情報も反映される点です。季節性や最新のトレンドを加味した提案により、より文脈に沿った商品選びが可能になります。
楽天は2025年12月に7000億パラメータの日本語特化LLM「Rakuten AI 3.0」を発表しており、日本語の微妙なニュアンスや文化的文脈を理解する能力を強化しています。今後、楽天エコシステム全体から得られる膨大な購買データを活用することで、一人ひとりにパーソナライズされた提案精度がさらに向上していくことが期待されます。
一方で、パーソナライズが進むことによるプライバシーへの配慮や、AIによる推薦がユーザーの選択肢を狭めてしまう「フィルターバブル」のリスクも存在します。楽天がどのようにこれらの課題に対応していくかは、今後注視すべき点といえるでしょう。
エージェント型AIは、ECの世界を「探す」から「出会う」へと変革する可能性を秘めています。楽天市場でのRakuten AI搭載は、日本のEC市場における大きな転換点となるかもしれません。
【用語解説】
エージェント型AI
ユーザーの指示に応答するだけでなく、自律的に判断し、複数のステップにわたるタスクを実行できるAIシステム。従来のAIが「質問に答える」ことに特化していたのに対し、エージェント型AIは「目標達成のために行動する」ことができる。人間の継続的な監視を必要とせず、データ分析や経験からの学習によって意思決定を行う。
AI-nization(エーアイナイゼーション)
楽天グループが掲げる、AI化を意味する造語。ビジネスのあらゆる面でAI活用を推進し、さらなる成長を目指す戦略的テーマ。
ディスカバリーショッピング
明確な購入目的がなくても、AIとの対話や推薦を通じて新しい商品との「偶然の出会い」を創出する購買体験。従来のキーワード検索とは異なり、潜在的なニーズを引き出しながら商品を提案する。
LLM(大規模言語モデル)
膨大なテキストデータで学習された大規模なAIモデル。数億から数千億のパラメータを持ち、人間の言語を理解し生成する能力を持つ。Large Language Modelの略。
フィルターバブル
AIによるパーソナライズが進むことで、ユーザーの嗜好に合った情報ばかりが提示され、多様な選択肢や新しい発見の機会が狭められてしまう現象。
楽天エコシステム(経済圏)
楽天グループが提供する、EC、金融、モバイル、旅行など70以上の多様なサービスが相互に連携する経済圏。共通の楽天IDで各サービスを利用でき、ポイントも統合されている。
【参考リンク】
楽天グループ株式会社(外部)
日本最大級のインターネットサービス企業。EC、フィンテック、モバイル通信など70以上のサービスを展開。
Rakuten AI(外部)
楽天が提供するエージェント型AIツール。楽天エコシステムの各サービスと連携し、パーソナライズされた体験を提供。
Rakuten AI 3.0(プレスリリース)(外部)
2025年12月発表の約7000億パラメータを持つ楽天の日本語特化LLM。日本語のニュアンスや文化を深く理解。
【参考記事】
エージェント型AIとは | IBM(外部)
エージェント型AIの定義と特徴について解説。自律性、目標主導の動作、適応性を備えた新しいAIシステムの概要。
エージェント型 AI とは | Red Hat(外部)
エージェント型AIの適応性と動的な特性を解説。過去のパターンから学習しリアルタイムで戦略を変更できる能力を説明。
エージェント AI とは定義と差別化要因 | Google Cloud(外部)
エージェント型AIの動作プロセスを詳細に解説。認識、推論、計画、行動、振り返りのサイクルにより学習し進化。
【編集部後記】
「欲しいものがあるのに、うまく言葉にできない」。そんな経験はありませんか。キーワード検索では見つからなかった商品が、AIとの対話を通じて見つかるかもしれません。今回の楽天市場アプリへのRakuten AI搭載は、そんな新しい買い物体験の入口といえそうです。
実際に使ってみて、AIが自分の好みをどこまで理解してくれるのか、私自身試してみたいなと思います。一方で、AIが提案する商品ばかりを見ていると、思わぬ出会いを逃してしまうかもしれません。みなさんは、AIに商品選びを任せることに、どのような期待や不安を感じますか。
































