Samsung Electronics Co., Ltd.は2026年2月3日、バルセロナで開催されたIntegrated Systems Europe(ISE)2026において、メガネ不要の3Dデジタルサイネージ「Samsung Spatial Signage」のグローバル展開を発表した。
85インチモデル(SM85HX)は4K UHD解像度(2,160 x 3,840)で9:16の縦型フォーマットを採用し、特許取得済みの3D Plate技術により専用メガネなしで立体視を実現する。今後32インチと55インチモデルも展開予定だ。同社はまた、Samsung VXT内の新AI搭載コンテンツアプリ「AI Studio」を発表した。さらに130インチMicro RGBサイネージ(QPHXモデル)と108インチThe Wall All-in-One(MMF-Aモデル、2K解像度)を商業向けに初披露した。
Spatial SignageはCES 2026でEnterprise Techカテゴリーのイノベーションアワードを受賞している。Samsungはグローバルデジタルサイネージ市場で17年連続のリーダーシップを維持している。
アイキャッチはSamsung 公式ニュースルームより引用




【編集部解説】
Samsungが発表した「Spatial Signage」は、メガネなしで立体視が可能な商業用ディスプレイです。3D映像といえば専用メガネが必要というイメージがありますが、同社の特許技術「3D Plate」により、LCDパネルの背後に空間的な深度を生み出すことで、裸眼での立体視を実現しています。
この技術の特徴は、既存の2Dコンテンツの鮮明さを保ちながら自然な3D効果を追加できる点にあります。つまり、専用に作成された3Dコンテンツでなくても立体的に表示できるため、導入のハードルが大幅に下がります。AI Studio アプリを使えば、静止画像から自動的にサイネージ用の動画コンテンツを生成でき、影の調整や背景処理も最適化されます。
9:16の縦型フォーマットは、商業施設での製品展示に適した形状です。360度回転する商品の全方位を立体的に見せることができるため、高級ブランド店や博物館、ショールームでの訴求力が高まるでしょう。
注目すべきは、Samsungがデジタルサイネージ市場で17年連続のリーダーシップを維持している点です。今回の発表では、130インチのMicro LED技術を搭載した製品や、わずか2時間で設置可能な108インチの「The Wall All-in-One」など、超大型ディスプレイのラインナップも拡充されました。
CiscoやLogitechとの連携により、エンタープライズ向けの会議システムとしての活用も視野に入れています。Samsung The Wall All-in-OneがCisco認証を受けた世界初のLEDディスプレイとなったことで、大画面での高品質なビデオ会議環境の構築が現実的になりました。
ただし、裸眼3Dディスプレイには視野角の制限という課題があります。最適な視聴位置から外れると立体効果が薄れる可能性があるため、設置場所や用途の選定が重要になるでしょう。また、85インチという大型サイズは導入コストも相応のものになると予想されます。
【用語解説】
裸眼3D(らがん3D)
専用メガネやヘッドセットを装着せずに立体視を楽しめる技術。オートステレオスコピック方式とも呼ばれる。レンチキュラーレンズや視差バリア方式などがあり、観察位置によって異なる映像を左右の目に届けることで立体感を生み出す。商業用ディスプレイでは、通行人の注目を集める効果が期待される。
3D Plate技術
Samsungが特許を取得した独自技術。LCDパネルの背後に配置された光学構造により、空間的な深度感を創出する。従来のショーケース型3Dディスプレイのような大型筐体を必要とせず、薄型のフラットパネル形状で立体視を実現できる点が特徴だ。
デジタルサイネージ
商業施設や公共空間に設置される電子看板やディスプレイシステム。従来の紙のポスターや看板と異なり、遠隔からコンテンツを更新でき、動画や双方向コンテンツの表示が可能。小売店舗、交通機関、医療施設などで広く活用されている。
Micro LED
マイクロメートル(μm)単位の微小なLEDチップを画素として使用するディスプレイ技術。自発光のため有機ELと同様に高コントラストを実現しつつ、より高輝度で長寿命という特性を持つ。大型ディスプレイや高精細表示に適している次世代技術として注目されている。
ISE(Integrated Systems Europe)
欧州最大級のAV(オーディオビジュアル)・システムインテグレーション業界の展示会。毎年2月にバルセロナで開催され、世界中から1,700社以上の出展者と9万人以上の来場者が集まる。商業用ディスプレイ、会議システム、放送機器などの最新技術が発表される場となっている。
【参考リンク】
Samsung Spatial Signage 製品ページ(外部)
裸眼3Dディスプレイの公式製品ページ。3D Plate技術の詳細や製品仕様を紹介。
Samsung VXT(Visual eXperience Transformation)(外部)
クラウドベースのデジタルサイネージ管理プラットフォーム。無料トライアル提供。
ISE 2026(Integrated Systems Europe)公式サイト(外部)
2026年2月3〜6日にバルセロナで開催されたAV業界の国際展示会。
Samsung Business ディスプレイソリューション(外部)
Samsung法人向けディスプレイ製品の総合サイト。商業用製品ラインナップを掲載。
【参考記事】
Samsung Bets Big on Glasses-Free 3D at ISE 2026, but the Real Story Is the System Around It(外部)
Display Daily(2026年2月5日)。Spatial Signageの技術分析とビジネス戦略を考察。
How Samsung Spatial Signage brings depth and dimension to in-store retail experiences(外部)
Samsung Business Insights(2026年1月7日)。小売業界での実用的活用方法を解説。
Integrated Systems Europe Releases Results For 2026 ISE Show In Barcelona(外部)
ProSoundWeb(2026年2月7日)。ISE 2026の来場者数など過去最大規模の実績を報告。
Samsung Spatial Signage – CES Innovation Awards 2026(外部)
CES Innovation Awards(2026年)。Enterprise Techカテゴリー受賞時の公式ページ。
【編集部後記】
個人的に楽しみなのは、この技術が日本の街中に登場する日です。渋谷のスクランブル交差点、銀座の高級ブティック、大阪・心斎橋の商業施設。メガネをかけずに立体的な映像が浮かび上がる光景は、通りがかる人々の足を止めるでしょう。
Samsungはグローバル展開を明言しており、日本での導入も時間の問題と思われます。法人向け製品ではありますが、Samsung Businessや販売代理店を通じて国内でも購入可能です。すでに海外では販売が始まっており、価格は未公表ながら数百万円規模と予想されます。
東京オリンピック以降、日本の商業施設はデジタルサイネージの導入を加速させてきました。その次の段階として、裸眼3Dという新しい視覚体験が日常に溶け込む日が、そう遠くない未来に訪れるかもしれません。






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