Alibaba Cloudは2026年2月4日、Milano Cortina 2026冬季オリンピックに向けてOBSおよびIOCと提携し、先進的なクラウドおよびAI技術を展開すると発表した。同社の大規模言語モデルQwenを搭載したAMD Systemは、アスリートと重要な瞬間を自動識別し、数秒以内にビデオアセットにタグ付けする。
Real-Time 360º Replayシステムは15〜20秒で3次元再構築を実現し、17の競技と種目に展開される。Live Cloudプラットフォームは39の放送事業者に対し、26のウルトラハイビジョンストリームを含む428のライブビデオフィードと72のオーディオフィードを配信する。IOCはオリンピック史上初のLLMベースシステムとしてOlympic AI Assistantsを導入し、olympics.comに組み込まれた。Sports AIは8ペタバイト以上の歴史的オリンピックメディアを管理する。
Alibaba Groupは2017年にIOCのWorldwide TOPパートナーとなった。
From: Alibaba Brings Cloud-Based AI Innovation to Milano Cortina 2026 Winter Olympics
【編集部解説】
このニュースは、Milano Cortina 2026冬季オリンピック開幕のわずか2日前に発表されたものです。Alibaba CloudがOBSおよびIOCと共に展開する先進技術は、オリンピック放送史における大きな転換点を示しています。
注目すべきは、オリンピック史上初めて大規模言語モデルが本格的に統合された点です。AlibabaのQwenモデルは、ファン向けのチャット型アシスタントとして公式サイトに組み込まれただけでなく、ローザンヌのオリンピック博物館での音声ガイド、さらには国内オリンピック委員会の内部業務支援にまで活用されています。生成AIがスポーツイベントの表舞台と裏方の両面で実用化される事例として、極めて重要な意味を持ちます。
放送技術の面では、Real-Time 360º Replayシステムの進化が目を引きます。Beijing 2022で導入されたBulletTime機能に加え、新たにSpacetime Slices機能が追加されました。これは、アスリートの動きの複数のフェーズを1枚の合成画像で可視化する技術で、視聴者が技術や演技をより深く理解できるようになります。15〜20秒という処理速度は、ライブ放送での使用を可能にする水準であり、AIによる背景分離技術の実用性を証明しています。
クラウド放送の拡大も見逃せません。Tokyo 2020では選択肢の一つだったOBS Live Cloudは、Paris 2024で主要な配信手段となり、Milano Cortina 2026では39の放送事業者が428のライブビデオフィードを受信します。従来の衛星回線や専用線を置き換えることで、コスト削減と柔軟性の向上を同時に実現しています。特に小規模な放送事業者にとって、初期投資なしにプロフェッショナルグレードの放送能力にアクセスできることの意義は大きいでしょう。
一方で、このような技術の集中には潜在的な懸念も存在します。2025年9月には、米国議会の委員会がLA 2028オリンピックにおけるAlibabaの役割について、データセキュリティとプライバシーの観点から警告を発しています。フランスでもParis 2024の際、Alibabaがセンシティブなデータシステムにアクセスすることを制限する措置が取られました。技術の進化と国家安全保障のバランスは、今後のオリンピックが直面する課題となるでしょう。
Sports AIによる8ペタバイト以上のアーカイブ管理は、オリンピックの歴史保存という観点からも重要です。自然言語での検索が可能になることで、過去数十年分の映像資産が「生きた知識ライブラリ」として再生されます。これは単なる効率化ではなく、オリンピックの文化的価値を未来世代へ継承する新しい形態と言えます。
Alibaba Groupが2017年にIOCと長期パートナーシップを結んでから約9年が経過しました。その間、同社のクラウドとAI技術はオリンピックのデジタル変革において中核的な役割を果たしてきました。Milano Cortina 2026は、その集大成として、スポーツイベントにおけるAI統合の最前線を示す大会となるでしょう。
【用語解説】
LLM(Large Language Model / 大規模言語モデル)
大量のテキストデータで訓練された深層学習モデルで、自然言語の理解と生成が可能。ChatGPTやClaudeなどが代表例。Milano Cortina 2026では、Qwenモデルが会話型アシスタントや検索システムに活用されている。
Real-Time 360º Replay
複数のカメラで撮影した映像をAIが解析し、あらゆる角度からの3次元リプレイ映像を生成するシステム。Beijing 2022で導入されたBulletTime(静止画のような演出)に加え、Milano Cortina 2026では選手の動きの複数フェーズを1枚の画像で表現するSpacetime Slices機能が追加された。
ペタバイト(PB)
デジタル情報の単位で、1ペタバイトは1,000テラバイト、または100万ギガバイトに相当する。8ペタバイトは、フルHD映画約200万本分の容量に匹敵する膨大なデータ量。
ウルトラハイビジョン(UHD)
4K(3840×2160ピクセル)または8K(7680×4320ピクセル)の高解像度映像規格。フルHD(1920×1080)の4倍または16倍の解像度を持つ。
AMD System(Automatic Media Description System)
Qwen大規模言語モデルを搭載し、オリンピック映像のアスリート識別、イベント説明生成、タグ付けを数秒で自動実行するシステム。自然言語での検索を可能にする。
【参考リンク】
Alibaba Cloud(外部)
Alibaba Groupのクラウド部門。2017年よりIOCパートナーとしてオリンピックのデジタル変革を支援している。
Olympic Broadcasting Services (OBS)(外部)
IOC所有の放送機関。オリンピック大会の映像制作と配信を統括し、世界中の放送事業者に提供する。
International Olympic Committee (IOC)(外部)
国際オリンピック委員会の公式サイト。大会運営やパートナーシップ管理を行い、AI Assistantsも提供。
Qwen(通義千問)(外部)
Alibabaが開発したオープンウェイトの大規模言語・マルチモーダルAIモデルファミリー。2023年デビュー。
Milano Cortina 2026公式サイト(外部)
2026年2月6日〜22日開催の第25回オリンピック冬季競技大会の公式情報サイト。16競技を実施。
【参考記事】
Milano Cortina 2026: Alibaba brings cloud-based AI innovation to Winter Olympics(外部)
放送業界専門メディアによる技術解説。17競技への展開と428ライブフィード配信を詳述。
The Cloud Revolution: Transforming Olympic Games for the AI Era(外部)
パートナーシップの歴史的経緯を詳述。Paris 2024で放送信号の3分の2以上がクラウド経由と報告。
From chatbots to replays: Alibaba rolls out AI suite for 2026 Winter Olympics(外部)
Qwenモデルの統合の意義を分析。Alibabaが海外でのQwen採用加速を狙うと指摘。
Alibaba on the road to Milano Cortina 2026(外部)
IOC公式記事。Paris 2024で14会場21競技に展開、Beijing 2022で現地スタッフ40%削減を報告。
LOS ANGELES 2028: Congressional watchdog committee on China warns Dept. of Homeland Security on IOC sponsor Alibaba role(外部)
2025年9月の米国議会警告を報道。データ主権とグローバル技術統合の対立軸を浮き彫りに。
【編集部後記】
オリンピックという世界最大のスポーツイベントが、ここまでAI技術と深く結びついているとは驚きでした。私たちが何気なく見ているリプレイ映像の裏側で、これほど高度な技術が動いていることに、改めて技術の進化を感じます。一方で、データセキュリティの懸念も無視できない現実として存在しています。
スポーツの感動と技術革新、そして安全性のバランスについて、みなさんはどう考えますか?Milano Cortina 2026の放送を見る際、ぜひ映像技術の進化にも注目してみてください。きっと新しい発見があるはずです。






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