従業員約11,000人を抱えるLINEヤフーが、人事総務領域での生成AI活用を本格化させます。2026年春までに10件のツールを順次導入し、月間約1,600時間以上の工数削減を目指すこの取り組みは、日本企業のバックオフィス変革における先行事例として注目されます。
LINEヤフー株式会社は2026年2月10日、人事総務領域において生成AIを業務補助ツールと位置付け、2026年春までに新たに10件のAI活用ツールの運用を順次開始すると発表した。
人材育成、労務管理、採用支援、各種申請・問い合わせ対応など人事総務の主要業務に生成AIを活用し、人事総務CBU全体で月間約1,600時間以上の工数削減を見込む。運用開始するツールには、採用戦略検討のためのデータ整理支援、AI自律型面接官トレーニング、面接日程調整の自動化、スケジュール管理の効率化、キャリア自律支援AI、社内公募活性化AIなどが含まれる。
同社は2025年7月に全従業員約11,000人を対象に生成AI活用の義務化を発表しており、現在ほぼ100%の従業員が生成AIを業務で活用している。
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LINEヤフー、人事総務領域での生成AI活用を本格化 2026年春までに新たに10件のAI活用ツールを順次運用開始
【編集部解説】
LINEヤフーが人事総務領域でのAI活用を本格化させた背景には、2025年7月に発表した全社員約11,000人を対象とした生成AI活用義務化があります。当時掲げた「3年間で業務生産性を2倍」という目標に向け、今回の発表はその具体的な実行フェーズへの移行を意味しています。
注目すべきは、AIツールの導入範囲が人事総務の主要業務を網羅的にカバーしている点です。採用戦略のデータ整理支援から、AI自律型面接官トレーニング、そして従業員のキャリア自律支援まで、人事業務のフロントからバックエンドまでを包括的に支援する設計となっています。月間約1,600時間の工数削減という具体的な数値目標は、年間で約19,200時間、つまり約9.6人分のフルタイム労働に相当します。
特に興味深いのは「キャリア自律支援AI」と「社内公募活性化AI」の導入です。これらは単なる業務効率化を超え、従業員が自身のキャリアを主体的に設計するための支援ツールとして位置づけられています。2026年の人材市場では、AIによって定型業務が代替される一方で、企業には従業員のキャリア開発支援がより強く求められる時代に突入しています。LINEヤフーの取り組みは、こうした時代の要請に応える先進的な事例と言えるでしょう。
一方で、同社は生成AIを「業務を補助するツール」と明確に位置づけ、最終的な判断と対応は必ず人が行うとしています。AIガバナンス部門との連携、リスクベースでの利用範囲の判断、継続的な運用状況の確認など、AIの責任ある活用に向けた枠組みも整備されています。これは、AI活用が進む中で、企業がどのようにガバナンスを効かせるべきかという重要な示唆を与えています。
人事領域でのAI活用は、他の大手企業でも急速に進んでいます。しかし、LINEヤフーのように全社的な義務化から約7ヶ月で、特定領域に特化した10件ものツールを順次導入するという具体的な展開は、国内でも先進的な取り組みです。この動きは、AI時代における人事部門の役割が、単なる管理業務から戦略的な人材開発へとシフトしていることを象徴しています。
【用語解説】
人事総務CBU(コーポレートビジネスユニット)
LINEヤフー社内における人事・総務業務を担当する部門。採用、労務管理、人材育成、各種申請対応などを横断的に管理する組織単位。
AIガバナンス
AI技術の開発・導入・運用における倫理的配慮、リスク管理、法令順守などを統制する仕組み。データの取り扱い、AIの判断基準の透明性、バイアスの排除などを組織的に管理する。
【参考リンク】
LINEヤフー株式会社 公式サイト(外部)
ZホールディングスとLINE、ヤフーが統合して2023年10月に誕生した企業。メッセージアプリ「LINE」や検索サービス「Yahoo! JAPAN」などを運営。
ChatGPT Enterprise(OpenAI)(外部)
OpenAIが提供する企業向けのChatGPTサービス。エンタープライズレベルのセキュリティとデータプライバシー保護を備える。
Google Workspace(外部)
Googleが提供するクラウドベースの業務用アプリケーションスイート。LINEヤフーの面接日程調整自動化ツールと連携。
【参考記事】
LINEヤフー、全従業員約11,000人を対象に業務における「生成AI活用の義務化」を前提とした新しい働き方を開始(外部)
2025年7月14日に発表された生成AI義務化の公式プレスリリース。3年間で業務生産性を2倍に高める目標を掲げた。
大企業の「AI義務化」6カ月後の現在…LINEヤフーが取り組む「2倍の効率化」は実現できるか | Business Insider Japan(外部)
義務化から6ヶ月後の状況を報告。調査・検索、資料作成、会議の3つの業務が全体の3割を占めることが判明した。
生成AIを全社員活用義務化で生産性2倍を目指すLINEヤフー、その方法を聞いた | AI経営総合研究所(外部)
生成AI統括本部の藤井氏と有賀氏へのインタビュー。義務化は「まずは触れてもらう」ためのきっかけと説明。
AI活用の本格化で人材要件の見直し進む【主要人材コンサルティング会社アンケート「2026年 人材需要と採用の課題」】(外部)
2026年の人材市場動向を予測。AIで代替できない専門職や管理職の需要増加、定型業務のAI置き換え加速を指摘。
LINEヤフーは全従業員1万1000人が生産性向上、生成AIのフル活用を早く始めよう(外部)
経費精算などの社内規則検索にSeekAI利用、資料作成前にAIでアウトライン作成など、具体的な活用ルールを詳細に紹介。
【編集部後記】
みなさんの職場では、AIは業務効率化のためだけに使われていますか?LINEヤフーの取り組みで興味深いのは、「キャリア自律支援AI」のように、従業員自身が主体的にキャリアを描くための支援にAIを活用している点です。
もし社内の公募情報を横断的に検索し、自分の経験とマッチするポジションをAIが提案してくれたら、キャリアの選択肢はどう広がるでしょうか。AIが業務を代替する時代だからこそ、人間はより創造的で戦略的な領域に注力できる——そんな未来が、すでに一部の企業では始まっています。みなさんの組織では、AIをどう活かしていきたいですか?





































