Seattle Ultrasonics社は2025年9月18日、家庭料理人向けとしては世界初の超音波シェフナイフC-200を発表した。開発者は料理革新者のScott Heimendingerで、開発に約6年を費やした。
このナイフは毎秒4万回以上振動し、切断に必要な力を50%削減する。価格は米国で399ドル、カナダで529ドルである。8インチの刃は日本製AUS-10三枚合わせステンレス鋼で作られており、従来のナイフと同様の機能を維持している。コードレス設計でUSB-Cによる充電が可能な取り外し可能バッテリーパックを搭載する。149ドルの無垢材製ワイヤレス充電タイルも提供される。
予約注文はseattleultrasonics.comで受け付けており、2026年1月の配送予定である。限定バンドルパッケージはナイフと充電タイルで499ドルとなっている。
From: ‘World’s First’ Ultrasonic Chef’s Knife Vibrates 40,000 Times Per Second for Easy Cutting
【編集部解説】
超音波技術がついにキッチンに上陸しました。Seattle Ultrasonics社が発表したC-200は、これまで産業用途に限られていた超音波切断技術を家庭用シェフナイフに応用した革新的な製品です。
毎秒4万回以上の微細な振動は人間の感覚では検知できませんが、食材と刃の間の摩擦を大幅に軽減します。この技術により切断に必要な力が50%削減されるということは、特に手首や腕に負担をかけがちな食材の下処理において、料理人の身体的負担を軽減できる可能性があります。
注目すべきは、この製品が単なる技術のデモンストレーションではなく、実用性を重視した設計になっている点です。日本製AUS-10三枚合わせステンレス鋼の採用により、従来のナイフと同等の切れ味と耐久性を確保しています。また、右利き・左利き両対応や従来の研ぎ直し方法に対応するなど、既存のキッチン環境への適応性も考慮されています。
一方で、399ドルという価格設定は一般的なシェフナイフの数倍に相当するため、市場への普及には時間がかかると予想されます。USB-C充電が必要な電動ツールという性質上、バッテリー寿命や防水性能といった長期使用における課題も残されています。
この技術の真価は、関節炎や握力の低下に悩む高齢者、長時間の調理作業を行うプロの料理人にとって特に発揮されるでしょう。超音波技術の家庭用キッチンツールへの展開は、今後の調理器具業界における技術革新の先駆けとなる可能性を秘めています。
【用語解説】
超音波切断技術
毎秒数万回の高周波振動を利用して物体を切断する技術。振動により摩擦を軽減し、より少ない力で正確な切断が可能になる。産業分野では食品加工や医療機器製造などで広く使用されている。
AUS-10三枚合わせステンレス鋼
日本製の高品質ステンレス鋼の一種。AUS-10は炭素含有量1.0%の高炭素ステンレス鋼で、優れた切れ味と耐久性を持つ。三枚合わせは異なる鋼材を重ね合わせて鍛造する伝統的な日本の製法。
Scott Heimendinger
料理革新者として知られる人物。Seattle Ultrasonics社の創設者で、Quantified Knife Projectなどの実験的な料理技術プロジェクトも手がける。
【参考リンク】
Seattle Ultrasonics公式サイト(外部)
C-200超音波シェフナイフを開発・販売する企業の公式ウェブサイト。製品詳細、技術解説、購入情報などを掲載している。
CNET(外部)
米国の大手テクノロジー系メディア。消費者向け製品のレビューやテクノロジーニュースを幅広く扱う信頼性の高い情報源。
【参考動画】
The World’s First Ultrasonic Chef’s Knife for Home Cooks – Seattle Ultrasonics公式
C-200の開発者Scott Heimendingerが超音波切断の科学原理と製品の動作を詳しく解説する9分間の公式動画。
【参考記事】
Scott Heimendinger Wants to Reinvent a Two Million Year Old Kitchen Tool – The Spoon(外部)
開発者Scott Heimendingerの6年間の開発過程と、産業用超音波技術を家庭用キッチンツールに応用する革新性について詳述した記事。
High Frequency Food: Better Cutting With Ultrasonics – Hackaday(外部)
超音波切断技術の科学的原理と食品加工への応用について技術的観点から解説した記事。産業用途から家庭用途への技術転用の可能性を分析。
【編集部後記】
料理をする際、切れない包丁にイライラしたり、トマトが潰れてしまったり、手首が疲れてしまった経験はありませんか?
今回ご紹介した超音波シェフナイフは、そうした日常の小さなストレスを解決する可能性を秘めています。特に関節に不安を抱えている方や、長時間の調理作業をされる方にとって、切断に必要な力が半分になるという技術は魅力的かもしれません。一方で399ドルという価格設定をどう捉えるかは人それぞれでしょう。
皆さんなら、このような革新的なキッチンツールに投資する価値を感じますか?それとも従来の包丁で十分だと思われますか?ぜひご自身の料理スタイルと照らし合わせて考えてみてください。