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GOTY受賞作Astro Botの偽物がPS Storeに─AI生成ゲーム「Slop」蔓延で揺らぐプラットフォームの信頼性

GOTY受賞作Astro Botの偽物がPS Storeに──AI生成ゲーム「Slop」蔓延で揺らぐプラットフォームの信頼性 - innovaTopia - (イノベトピア)

2025年12月下旬、ファンがPlayStation Storeで2024年のゲーム・オブ・ザ・イヤーに輝いた『Astro Bot』(Team Asobi開発)の模倣と思われるタイトルを発見した。このタイトル「Astrofix Galaxy Quest」は、2026年発売予定としてストアに掲載されているが、説明文やゲーム内容が『Astro Bot』に酷似しており、AI生成による低品質コンテンツ、いわゆる“slop”ではないかとの指摘がコミュニティで広がっている。

RedditのPlayStationファンが最初に発見したもので、AI生成による低品質コンテンツが使用されている疑いがある。メリアム・ウェブスター辞典は「Slop」を2025年の言葉に選定しており、これは「人工知能によって大量に生産される低品質のデジタルコンテンツ」と定義されている。ゲームの説明文ではAstrofixを「大きな心を持つ恐れ知らずの小さな修理ロボット」としており、散らばった破片を通じて「星々のバランスを回復」するという内容だ。

TheGamerは2月にソニーが低品質タイトルのパブリッシャーを削除していたと報じているが、類似のタイトルは次々と登場している状況だ。

From: 文献リンクAstro Bot Clone, Seemingly Built With AI, Spotted On PlayStation Store By Fans

【編集部解説】

このニュースは、ゲーム業界におけるAI生成コンテンツの品質管理問題という、2025年以降も続く構造的な課題を浮き彫りにしています。

まず押さえておくべき背景として、Astro BotはThe Game Awards 2024でGame of the Yearを含む4つの賞を獲得した正真正銘の傑作です。Team Asobi開発のこの3Dプラットフォーマーは、PlayStation 30周年を記念して制作され、150体を超えるPlayStationキャラクターが登場する愛に満ちた作品として高く評価されました。その成功が、皮肉にも模倣の対象となってしまったわけです。

問題の核心は、デジタルストアフロントにおける品質管理の難しさにあります。Astrofix Galaxy Questの開発元Witenova Studioは、エストニアに拠点があるとされていますが、同社の他のタイトルを見ると、状況の深刻さが見えてきます。Netflix人気シリーズ「Wednesday」のジェナ・オルテガに酷似したキャラクターを主人公とする「Wednesday the 13th」、さらには「Stray」「Cyberpunk 2077」「Mafia」「Sleeping Dogs」を混ぜ合わせたような「SyndiCAT: Stray Mafia」など、既存の人気作品を模倣したタイトルを量産しているのです。

ソニーは2024年2月にも同様の低品質タイトルのパブリッシャー削除を行ったと報じられていますが、完全には対処しきれていません。これは「モグラ叩き」のような状況で、1つ削除しても次々と新しいものが現れる構造的な問題です。

興味深いのは、メリアム・ウェブスター辞典が2025年の言葉として「Slop」を選定した点です。これは「人工知能によって通常大量に生産される低品質のデジタルコンテンツ」と定義されており、まさに今回のAstrofixのような存在を指しています。言葉として認知されるほど、この問題が社会的に広がっていることを示唆しています。

ユーザーからは「本物のゲームにたどり着くためにAIゴミをふるいにかけなければならない」という不満の声が上がっています。特に要望されているのが、AI生成コンテンツを非表示にするフィルター機能です。これは技術的には実装可能ですが、「何をAI生成と定義するか」という新たな問題を生み出します。

長期的な視点で見ると、この問題はプラットフォームの信頼性に直結します。優れたインディーゲームとAI生成の低品質ゲームの区別がつきにくくなれば、発見可能性が低下し、真摯に開発された作品が埋もれてしまう懸念があります。

同時に、AI技術そのものへの過度な警戒感を煽ることも避けるべきでしょう。問題は技術ではなく、それを悪用する姿勢と、プラットフォーム側の審査体制にあります。今後、ソニーを含むプラットフォーマーには、より厳格な審査基準の設定と、ユーザーが質の高いコンテンツを見つけやすくする仕組みづくりが求められます。

【用語解説】

Slop(スロップ)
メリアム・ウェブスター辞典が2025年の言葉として選定した用語で、「人工知能によって通常大量に生産される低品質のデジタルコンテンツ」を指す。もともとは1700年代に「軟泥」、1800年代に「食品廃棄物」を意味していたが、AI時代の到来とともに新しい意味が加わった。

Reddit(レディット)
米国発の大規模なソーシャルニュースサイト兼掲示板コミュニティ。ユーザーが情報を投稿し、投票やコメントで議論を展開する。ゲーム関連のコミュニティも活発で、今回のAstrofix発見もRedditユーザーによるものだった。

インディーゲーム
大手パブリッシャーに依存せず、独立系の小規模スタジオや個人開発者が制作するゲーム。創造性や独自性を重視した作品が多いが、AI生成の低品質ゲームが増えることで、発見されにくくなる懸念がある。

モグラ叩き
1つの問題を解決してもすぐに別の問題が発生する状況を表す比喩表現。アーケードゲーム「モグラたたき」に由来し、今回の文脈では低品質ゲームを削除しても次々と新しいものが現れる状況を指している。

【参考リンク】

Astro Bot 公式サイト(PlayStation)(外部)
2024年Game of the Year受賞作。Team Asobi開発のPS5専用プラットフォーマーで、150体以上のPlayStationキャラクターが登場する。

PlayStation Store – Astrofix Galaxy Quest(外部)
問題となっているAI生成と思われるAstro Botの模倣ゲーム。Witenova Studio開発で2026年発売予定として掲載中。

Merriam-Webster Word of the Year 2025(外部)
米国の主要辞書出版社による年間ワード選定ページ。2025年は「Slop」を選定し、AI生成低品質コンテンツの蔓延を反映。

【参考記事】

Word of the Year 2025 | Slop | Merriam-Webster(外部)
メリアム・ウェブスター辞典による2025年の言葉「Slop」の解説。AI生成低品質コンテンツの定義と言葉の歴史的変遷を詳述。

Astro Bot takes home four 2024 Game Awards – NPR(外部)
NPRによるThe Game Awards 2024の総括記事。Astro BotがGame of the Yearを含む4部門を受賞したことを報じている。

Merriam-Webster declares ‘slop’ its word of the year – CNBC(外部)
CNBCによる「Slop」が2025年の言葉に選ばれた背景の分析。AI生成コンテンツへの警戒感とソーシャルメディアの低品質化。

【編集部後記】

デジタルストアで新しいゲームを探すとき、あなたはどのように「本物」を見分けていますか?レビューを読む、トレーラーを確認する、開発者の過去作を調べる——私たちも同じ作業を繰り返しています。

今回のAstrofix問題は、単なる模倣ゲームの話ではなく、私たち全員が直面する「情報の海での羅針盤」の話かもしれません。AIが生成する大量のコンテンツの中から、人の手で丁寧に作られた作品をどう見つけるか。これは、これからの私たちにとって避けられない課題です。

あなたは最近、デジタルストアで「これは違う」と感じた経験はありますか?もしあれば、ぜひSNSで共有してみてください。その小さな声の積み重ねが、プラットフォームを変える力になるかもしれません。

投稿者アバター
TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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