Fender Musical Instruments Corporation(FMIC)は2026年1月13日、PreSonus Studio One Proと録音用インターフェースを統合した新ブランド「Fender Studio」を発表した。主力製品はDAWソフトのFender Studio ProとFender Quantumシリーズ・インターフェースである。Fender Studio Proは57種類のアンプ・モデルを含むMustangおよびRumble Nativeプラグインを搭載し、AIによるオーディオ・ノート変換機能やコード生成技術を備える。ハードウェアはFender AudioBox GOが89.99ドル、Quantum LTシリーズが149.99ドルから499.00ドル、Quantum HDシリーズが599.00ドルから1,099.00ドル、Motion Controllersが269.99ドルから349.99ドルで展開される。既存のPreSonusユーザーはMyFenderプラットフォームへ移行する。
From:
FENDER UNVEILS CONNECTED MUSIC ECOSYSTEM WITH FENDER STUDIO PRO, AUDIO INTERFACES AND CONTROLLERS
【編集部解説】
音楽史に名を刻む伝説的なギターメーカー、フェンダーが、ついにデジタル領域での「完全な垂直統合」へと舵を切りました。2021年のPreSonus買収から数年、私たちはこの瞬間を待っていました。今回の発表は、単なるブランドの名称変更ではありません。それは、アナログの象徴であったフェンダーが、AIとソフトウェアが主導する現代の音楽制作エコシステムの中心に立つという、野心的な宣言です。
この記事を報じる理由は、これが「道具の進化」から「知性の拡張」への転換点であると考えるからです。特筆すべきは、AIによるオーディオ・ノート変換機能やインテリジェントなコード技術の導入です。これは、演奏者のインスピレーションを即座にデータ化し、創作の壁を取り払う試みです。人類が弦を弾くという物理的行為から、音楽という抽象概念を構築するプロセスにおいて、テクノロジーがこれまで以上に深いパートナーシップを築き始めています。
ビジネス的な側面で見れば、フェンダーは「楽器を売る企業」から、創作活動の全工程を支える「プラットフォーム企業」へと進化しました。MustangやRumbleといった伝説的なアンプの回路をネイティブプラグインとしてDAWに直接組み込むことで、物理的な機材を持たない次世代のクリエイターたちにも、フェンダーのDNAを提供することが可能になります。
一方で、既存のPreSonusユーザーにとっては、長年親しんできたブランドの統合に対する懸念もあるでしょう。しかし、ハードウェアとソフトウェアが同一の思想で設計される「Apple的」な垂直統合は、レイテンシー(遅延)の極小化や直感的な操作感という形で、最終的にはユーザーに大きな恩恵をもたらすはずです。
私たちは、このエコシステムが「誰でもプロレベルの表現ができる世界」を加速させると同時に、AIが創作を支援することで、人間の創造性がどこまで高められるのかという点に注目しています。フェンダーという伝統が、AIという先端技術と融合したとき、私たちの「聴く」体験や「作る」体験はどのように進化していくのでしょうか。それは、音楽という人類最古の表現手段の一つが、新たな次元へと移行するプロセスそのものなのです。
【用語解説】
DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション):コンピューター上で音楽のレコーディング、編集、ミキシング、マスタリングを完結させるための統合ソフトウェア。現代の音楽制作における中枢。
プラグイン:DAWなどのホストアプリケーションに機能を追加するソフトウェア。本件では、実機のアンプやエフェクターの音をデジタル上で再現するプログラムを指す。
レイテンシー:楽器を弾いてから、その音がコンピューターで処理され、スピーカーやヘッドホンから聞こえるまでの遅延時間。音楽制作においてはこの数値を極小化することが至上命題となる。
【参考リンク】
Fender Musical Instruments Corporation(外部)
世界最大級の楽器メーカー、フェンダーの公式サイト。伝統的なギター製造から、デジタルプラットフォーム「Fender Studio」まで展開。
PreSonus Audio Electronics(外部)
高品質なオーディオインターフェースやDAWの開発元。フェンダーによる統合後も、スピーカーやミキサー等のハードウェア供給を継続する。
【参考記事】
Fender’s Digital Transformation: The Evolution from Guitars to Ecosystems(外部)
フェンダーがなぜPreSonusブランドを再編したのか、その戦略的意図とブランドがデジタル時代に生き残るための道筋を分析。
Understanding the Hardware-Software Synergy in Fender Quantum Interfaces(外部)
Fender Quantumシリーズの内部設計に迫り、DAWとの高度な統合がいかにプロレベルの低レイテンシーを実現しているかを解説。
AI and the Future of Songwriting: Fender Studio Pro’s Intelligent Chord Technology(外部)
Fender Studio Proに搭載されたAI機能が、初心者からプロまでの創作プロセスをどのように変容させるかを多角的に分析。
【編集部後記】
ギターという「体温」を感じるアナログな楽器が、AIという「知能」と完全に溶け合う時代がやってきました。皆さんは、テクノロジーが私たちの直感を先回りしてサポートしてくれることに、どのような可能性を感じるでしょうか。
単なる作業の効率化を超えて、私たち自身の創造性が拡張される瞬間。その第一歩を、フェンダーはこの新しいエコシステムで示してくれました。道具が進化することで、私たちの奏でる「音楽」そのものも進化していく。そんな刺激的な未来を、ぜひ一緒に感じていただければ嬉しいです。


































