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ーTech for Human Evolutionー

中国「サイバースペースID」7月15日施行 – 600万人が利用、オンラインプライバシーと国家管理の新時代へ

中国「サイバースペースID」7月15日施行 - 600万人が利用、オンラインプライバシーと国家管理の新時代へ - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-29 05:17 by admin

中国政府は、国家オンラインID制度「サイバースペースID」の規則を承認し、2025年7月15日から施行する。

この制度は、国家ネットワークアイデンティティ認証公共サービスプラットフォームによって運営され、市民が単一のログオンで複数のオンラインサービスにアクセス可能にすることを目指している。

新規則は公安部や国家サイバースペース管理局など6つの政府部門によって発行された1。既に約600万人の市民がこのIDを申請・有効化しており、関連アプリのダウンロード数は1600万回を超えている。

サイバースペースIDの取得は任意であり、オンラインサービス利用時の個人情報提供のあり方を大きく変える可能性があるとされている1

From: 文献リンクChina approves rules for national ‘online number’ ID scheme

【編集部解説】

中国で導入が本格化する「サイバースペースID」制度は、オンライン上のプライバシー保護強化を目的としています1。2025年7月15日に施行される新規則では、利用者がサイバースペースIDで登録・本人確認を選択した場合、サービスプロバイダーは法律で別途定めがある場合や本人の同意がない限り、氏名やID番号といった追加の個人情報提供を要求できなくなります1。これにより、不必要な個人情報の収集を抑制することが期待されます。

運営主体である国家ネットワークアイデンティティ認証公共サービスプラットフォーム自体の情報収集も「最小限かつ必要」の原則に基づき、認証目的に不可欠な個人情報のみを収集し、サービスプロバイダーには基本的に認証結果のみを提供するとしています1

公安部の担当者は、ID取得は任意であり、市民の安全で便利な本人確認を保証するとともに、中国のデジタル経済成長を支援するものだと説明しています1

一方で、この制度は2012年からのISPや携帯電話契約時の実名登録義務化、2017年からのSNS利用時の実名登録義務化といった流れの延長線上にあるとも考えられます5。個人情報を企業に渡す必要がなくなる代わりに、政府が一元的にオンライン活動を把握しやすくなるという側面も持ち合わせており、プライバシー保護と政府によるデータ集約のバランスについては、今後の運用を注視していく必要があります。

【用語解説】

サイバースペースID
中国政府が発行するデジタル身分証明書。実名情報を含まない匿名化されたIDだが、政府は実在の身元情報と紐付けて管理している。

フェデレーテッドID制度
一つのIDで複数のサービスにログインできる仕組み。

国家ネットワークアイデンティティ認証公共サービスプラットフォーム:
サイバースペースIDの発行、認証、管理といった公共サービスを提供する基盤システム。

公安部:
中華人民共和国国務院を構成する行政部門の一つ。日本の警察庁に相当し、国内の治安維持を担当。サイバースペースID制度の推進に関わる主要な政府機関の一つ。

国家サイバースペース管理局(CAC):
中国におけるインターネットコンテンツの監督管理やサイバーセキュリティを担当する主要な規制当局。サイバースペースID制度に関する規則発行にも関与している。

【参考リンク】

中国公安部公式サイト(外部)
サイバースペースID制度を主管する中国の警察機構。制度の詳細や規則について公表している。

【編集部後記】

今回の中国における「サイバースペースID」の本格導入は、デジタル化が加速する現代社会において、国家と個人、そしてテクノロジーの関係性を改めて考えさせられる象徴的な出来事と言えるでしょう。

利便性の向上とプライバシー保護、効率的な社会運営と個人の自由。これらは時にトレードオフの関係として語られますが、テクノロジーの進化は、これらの要素をより高い次元で調和させる可能性も秘めているはずです。

innovaTopiaは「Tech for Human Evolution」を掲げ、テクノロジーが人類の進化にどう貢献できるのかを常に問い続けています。デジタルアイデンティティという領域もまた、その利活用次第で、私たちの社会生活を豊かにすることも、逆に制約をもたらすこともあり得ます。

重要なのは、技術そのものではなく、それをどのような思想で設計し、社会に実装していくかという点です。今回の中国の事例を対岸の火事とせず、私たち自身の社会におけるデジタル化のあり方、そして個々人がテクノロジーとどう向き合っていくべきか、その議論を深める一助となれば幸いです。

今後も、innovaTopiaは未来を形作るテクノロジーの動向を多角的に追い、皆様と共に「Human Evolution」の道筋を探求してまいります。

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TaTsu
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