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7月10日【今日は何の日?】「ニコラ・テスラ誕生」テスラといえば…?

[更新]2025年12月25日

 - innovaTopia - (イノベトピア)

交流電流が照らした未来

1856年7月10日深夜。オーストリア帝国の辺境、スミリャンの小さな村で、激しい雷雨が村を包み込んでいました。正教会の牧師セルビア人の家庭に、一人の男児が産声を上げます。助産婦は不吉な予兆だと呟きました。しかし母は静かに答えたと言います。「いいえ、この子は光の子よ」

その予言は、文字通り実現することになります。ニコラ・テスラ――後に「電気の魔術師」と呼ばれ、現代文明の電力システムの基盤を築いた天才発明家です。

彼の名は今、電気自動車メーカーに、磁束密度の単位に、月のクレーターに刻まれています。しかし、テスラとは何者だったのでしょうか。

天才と孤独――テスラの生涯

テスラは幼い頃から異質でした。頭の中で複雑な機械を設計し、実際に作ることなく動作を検証できる特殊な能力を持っていたのです。グラーツ工科大学で電気工学を学んだ後、1884年、28歳でアメリカに渡ります。所持金はわずか4セント。ポケットには自作の詩集と、鳩の餌だけでした。

エジソンの会社で働き始めたテスラでしたが、両者の対立は避けられませんでした。エジソンは直流(DC)を、テスラは交流(AC)を信じていたからです。1年足らずでエジソンの元を離れたテスラは、路上で穴掘りの仕事をして食いつなぎます。

転機は1888年5月。ウェスティングハウス社がテスラの多相式交流システムの特許権を買い取ったのです。「電流戦争」と呼ばれる激しい技術競争が始まりました。エジソンは交流の危険性を訴え、公開処刑にまで交流電流を使わせました。しかし、1893年のシカゴ万博で、テスラの交流システムが25万個の電球を点灯させた瞬間、勝負は決しました。

1899年、コロラド・スプリングスでテスラは「地球の定常波」を発見したと主張します。世界規模の無線通信システムを夢見て、1901年にはロングアイランドに巨大なウォーデンクリフ・タワーを建設しました。しかし資金難により計画は頓挫。晩年のテスラは、ニューヨークのホテルで鳩に餌をやりながら暮らし、1943年1月7日、86歳で孤独な死を迎えます。

テスラが遺した発明

交流電動機と多相交流システム。これがテスラの最大の遺産です。従来の直流電動機とは異なり、回転磁界を利用した画期的な仕組みでした。この発明により、電力の長距離送電が可能となり、現代の電力網の基盤が築かれました。

1891年にはテスラコイルを発明します。高電圧・高周波の交流電流を発生させる装置です。蛍光灯を無線で点灯させるデモンストレーションは、観客を驚愕させました。この技術は、現代の無線通信の基礎となっています。

無線通信技術の分野でも、テスラは先駆者でした。1893年のシカゴ万博でのデモンストレーションは、マルコーニより数年早いものでした。また、1898年には無線操縦のボートを公開し、リモートコントロールの概念を世界で初めて実証しています。

テスラは生涯で約300の特許を取得しました。X線撮影装置の改良、高周波電流を使った医療器具、一方向弁「テスラバルブ」。その発想力は、常識の枠を超えていました。

現代に受け継がれる名前

Tesla, Inc. ――2003年7月、マーティン・エバーハルトとマーク・ターペニングが設立した電気自動車メーカーです。すべての車両に交流電動機を使用しています。2008年、最初のモデル「Roadster」が発表されました。2025年現在、Tesla社の時価総額は自動車業界でトップクラスに達しています。

物理学の世界では、**磁束密度の単位として「テスラ(T)」**が使用されています。1960年の国際単位系(SI)導入の際に定められました。

セルビアでは、ニコラ・テスラの肖像が100ディナール紙幣に使われています。2023年1月、クロアチアがユーロを導入した際、10、20、50セント硬貨のデザインにテスラの肖像が選ばれました。母国は、彼を忘れていません。

小惑星「2244 Tesla」、月のクレーター「Tesla」。宇宙の彼方にも、その名は刻まれています。

未完の夢

テスラが生涯をかけて追い求めたのは、無線による電力伝送でした。ウォーデンクリフ・タワーは、その夢の結晶です。「地球そのものを導体として使えば、世界中どこでも無線で電力を送れる」――当時は狂気の沙汰と思われました。

2025年現在、スマートフォンの無線充電パッドが日常になり、電気自動車の無線充電システムの研究が進んでいます。テスラの夢は、少しずつ現実になりつつあるのかもしれません。

彼が晩年まで大切にしていた白い鳩がいました。テスラはその鳩を愛し、こう語ったと言います。「あの鳩が私を愛していたように、私も鳩を愛していた。もしあの鳩が死んだら、私の人生の仕事は完了する」

鳩が死んだ後、テスラは新たな発明をほとんど生み出しませんでした。


7月10日、雷雨の夜に生まれた「光の子」は、本当に世界を照らしたのでしょうか。


Information

参考リンク

用語解説

直流(DC)と交流(AC)
直流は電流の方向が一定、交流は周期的に方向が変わります。交流は変圧が容易で、長距離送電に適しています。

多相交流システム
位相の異なる複数の交流を組み合わせたシステム。現代の三相交流はこの原理に基づいています。

テスラコイル
共振変圧器の一種。高電圧・高周波の交流を発生させ、無線送電の実験などに使用されました。

磁束密度(テスラ)
磁界の強さを表す物理量。1テスラは、1平方メートルあたり1ウェーバーの磁束に相当します。MRI装置は通常1.5〜3テスラの磁場を使用します。

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Satsuki
テクノロジーと民主主義、自由、人権の交差点で記事を執筆しています。 データドリブンな分析が信条。具体的な数字と事実で、技術の影響を可視化します。 しかし、データだけでは語りません。技術開発者の倫理的ジレンマ、被害者の痛み、政策決定者の責任——それぞれの立場への想像力を持ちながら、常に「人間の尊厳」を軸に据えて執筆しています。 日々勉強中です。謙虚に学び続けながら、皆さんと一緒に、テクノロジーと人間の共進化の道を探っていきたいと思います。

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