2026年1月3日午前2時頃、ベネズエラの首都カラカスで米軍ヘリコプターが飛行し爆発音が響いた。数時間後、ドナルド・トランプ米大統領はTruth Socialでベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領と妻が拘束され国外に連行されたと投稿した。
パム・ボンディ米司法長官もマドゥロ夫妻がニューヨーク南部地区で起訴されたと発表した。
WIREDは東部時間午前9時前にChatGPT、Claude、Gemini、Perplexityに同じ質問をした。Gemini 3は攻撃を確認し15のソースを引用して文脈を提供した。
Claude Sonnet 4.5は当初情報がないと答えたがウェブ検索を実行し10のニュースソースから要約を提供した。
ChatGPT 5.1はマドゥロ拘束を全面否定し誤情報だと主張した。
Perplexityも同様に侵攻はなかったと答えた。
ChatGPT 5.1のナレッジカットオフは2024年9月30日、Claude Sonnet 4.5は2025年1月だ。
認知科学者ゲイリー・マーカスはLLMが新しい事態に直面したときの信頼性のなさを指摘した。
From:
The US Invaded Venezuela and Captured Nicolás Maduro. ChatGPT Disagrees
【編集部解説】
2026年1月3日未明に発生した米軍によるベネズエラへの軍事侵攻は、国際法に明白に違反する侵略行為です。この事件は、AIチャットボットの技術的限界を示す事例として報じられていますが、その背後にある本質的な問題——主権国家への武力行使という国際秩序の根幹を揺るがす行為——を見過ごすことはできません。
国連憲章第2条4項は、すべての加盟国に対し「武力による威嚇又は武力の行使」を禁じています。自衛権の行使や安全保障理事会の承認がない限り、他国の領土への軍事侵攻は明確な国際法違反です。今回の作戦には安保理決議は存在せず、ベネズエラが米国を攻撃した事実もありません。米国が掲げる「麻薬テロリズム対策」という名目は、国際法上、他国への軍事侵攻を正当化する根拠にはなり得ません。
コードネーム「Operation Absolute Resolve(絶対的決意作戦)」と名付けられたこの軍事作戦には、150機以上の航空機が参加しました。米陸軍の精鋭特殊部隊デルタフォースが実行部隊として投入され、カラカスのマドゥロ大統領官邸を急襲しました。CNNの報道によれば、CIAは2025年8月から工作員をベネズエラ政府内に潜入させ、マドゥロの居場所や行動パターンを詳細に追跡していました。
PBS Newsが指摘するように、この作戦の法的根拠は「即座には明らかではない」状況です。民主党のジム・ヒメス下院情報委員会筆頭委員は「明らかに国際法違反」と述べ、さらに「ロシアと中国が何を学んだか考えてみてください」と警告しています。つまり、この行為は国際秩序における危険な先例となり得るのです。
もし米国が他国の指導者を一方的に拘束できるなら、ロシアはウクライナのゼレンスキー大統領を、中国は台湾の総統を拘束できることになってしまいます。NPRの分析が指摘するように、「状況は異なる」と主張しても、他国はそれを看過しないでしょう。国際法の恣意的な運用は、力による支配を正当化する論理に他なりません。
作戦後の記者会見で、トランプ大統領は「我々が今この国を運営する」と述べ、ベネズエラの「膨大な石油埋蔵量」へのアクセスについて繰り返し言及しました。「麻薬対策」という表向きの理由とは裏腹に、この軍事侵攻の真の目的が資源略奪にあることは明白です。ベネズエラは世界最大級の石油埋蔵量を誇り、その支配権の獲得は米国のエネルギー戦略において重要な意味を持ちます。
今回の事件で特に注目すべきは、AIチャットボットの反応です。ChatGPT 5.1は事実を完全に否定し、「それは起きていません」と断言しました。Perplexityも同様に「信頼できる報道や公式記録によって支持されていません」と応答しました。一方、Claude Sonnet 4.5とGemini 3はウェブ検索機能を使用して正確な情報を提供しました。
この差異は、AIの「ナレッジカットオフ」という技術的制約に起因します。ChatGPT 5.1の学習データは2024年9月30日までであり、Claude Sonnet 4.5は2025年1月まで、Gemini 3も2025年1月までです。しかし、ClaudeとGeminiはリアルタイムのウェブ検索機能を備えているため、最新の出来事にも対応できました。
認知科学者ゲイリー・マーカスは「純粋なLLMは必然的に過去に縛られ、新しい事態に直面したときの信頼性がない」と指摘します。これは企業がLLMを信頼すべきでない主な理由の一つだと彼は述べています。特に重要なのは、ChatGPTが単に「情報がない」と答えるのではなく、「それは誤情報です」と自信を持って否定した点です。この「自信を持って間違える」特性は、AIの最も危険な側面の一つです。
Pew Research Centerの2025年10月の調査によれば、米国人の9%がAIチャットボットから時々またはしばしばニュースを得ており、75%はそのような方法でニュースを得ることはないと回答しています。現時点では多くの人がAIを主要なニュースソースとしていないものの、AIが日常生活に深く浸透するにつれ、その限界を理解することが極めて重要になります。
技術的な問題に目を奪われがちですが、本質的な問題は別のところにあります。主権国家への一方的な軍事侵攻という国際法違反の行為が、「麻薬対策」という名目で正当化され、その真の目的である石油資源の略奪が隠蔽されようとしていることです。この侵略行為は、国際秩序を脅かす重大な先例となり、今後の国際関係に深刻な影響を与える可能性があります。
いかなる理由であれ、主権国家への内政干渉と軍事侵攻は許容されるべきではありません。国際社会は、力による支配ではなく、国際法に基づいた秩序の維持を求めていかなければなりません。
【用語解説】
ナレッジカットオフ(Knowledge Cutoff)
AI言語モデルが学習した最新データの日付を指す。この日付以降の出来事については、モデルは訓練データに含まれていないため、リアルタイム検索機能がない限り回答できない。
LLM(Large Language Model / 大規模言語モデル)
膨大なテキストデータで訓練された人工知能モデル。GPT、Claude、Geminiなどが代表例。過去のデータから学習するため、訓練後の出来事については知識を持たない。
国連憲章第2条4項
すべての国連加盟国に対し、国際関係において武力による威嚇または武力の行使を禁じる国際法の基本原則。例外は自衛権の行使と安全保障理事会の承認のみ。
麻薬テロリズム(Narcoterrorism)
麻薬密売組織がテロ活動を行う、またはテロ組織が麻薬取引で資金調達する現象を指す。米国は2020年にマドゥロをこの容疑で起訴していた。
Operation Absolute Resolve(絶対的決意作戦)
2026年1月3日に実施された米軍によるベネズエラ侵攻作戦のコードネーム。150機以上の航空機が参加し、カラカスでマドゥロ大統領を拘束した。
デルタフォース(Delta Force)
米陸軍の精鋭対テロ特殊部隊。正式名称は第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊。人質救出や要人拘束などの高難度作戦を専門とする。
【参考リンク】
Anthropic – Claude(外部)
Claude Sonnet 4.5を開発したAnthropicの公式サイト。AIの安全性と信頼性を重視した開発を行っている。
OpenAI – ChatGPT(外部)
ChatGPTを開発したOpenAIの公式サイト。GPT-5.1とGPT-5.2など複数のモデルを提供している。
Google Gemini(外部)
Googleが開発したAIチャットボット。Google検索と統合されリアルタイム情報にアクセス可能。
Perplexity AI(外部)
正確で信頼できるリアルタイムの回答を謳うAI検索プラットフォームで複数のモデルを使用。
United Nations Charter(外部)
国連憲章の全文が閲覧可能。第2条4項は武力行使の禁止を定める国際法の基本原則。
Pew Research Center(外部)
米国の世論調査機関で、AIチャットボットのニュース利用に関する調査を2025年10月に発表。
【参考記事】
From order to extraction: Inside the US capture of Nicolás Maduro(外部)
CIA工作員がベネズエラ政府内に潜入し8月から作戦準備が進められていた詳細を報道。
U.S. strikes Venezuela and says leader Maduro has been captured(外部)
作戦の法的根拠が不明確であることを指摘し1990年のパナマ侵攻との類似性を分析。
Six questions about the capture of Maduro(外部)
国際法上の先例となる危険性を詳細に分析しロシアや中国への影響を専門家が解説。
Maduro arrives in U.S. after military operation in Venezuela(外部)
デルタフォースが作戦を実行し議会民主党議員が明らかな国際法違反と批判したと報道。
2026 United States strikes in Venezuela(外部)
作戦の詳細な経緯と国際的な反応をまとめ150機以上の航空機が参加した規模を記録。
US captures Maduro, carries out ‘large scale strike’ in Venezuela(外部)
マドゥロが2020年から麻薬テロリズムの容疑で起訴されていた背景を説明している。
Relatively few Americans are getting news from AI chatbots like ChatGPT(外部)
米国人の9%がAIチャットボットからニュースを得ているという調査結果を発表した。
【編集部後記】
今回の記事では、AIチャットボットの技術的限界という側面から報じられた出来事を取り上げましたが、私たちinnovaTopia編集部が最も懸念しているのは、その背後にある真の目的です。トランプ大統領自身がベネズエラの石油資源へのアクセスについて繰り返し言及していることからも、この軍事侵攻が石油利権の獲得を目的としたものである可能性は極めて高いと言えます。「麻薬テロリズム対策」という大義名分の裏で、資源略奪が正当化されようとしている——この構図は、歴史上何度も繰り返されてきました。AIが最新情報を把握できないという技術的課題よりも、資源をめぐる侵略行為が「正義」の名のもとに行われている事態の方が、はるかに深刻な問題ではないでしょうか。みなさんは、この出来事をどのように捉えられますか。
































