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2月5日【今日は何の日?】「新戦略兵器削減条約失効日」—私たちは今、どこにいるのか

2026年2月5日、午前0時。ニューヨーク時間で、ある条約が静かに失効します。新戦略兵器削減条約(新START)—米ロ間に残された最後の核軍縮条約です。この瞬間から、世界最大の核保有国である米国とロシアの間には、核兵器の数を制限する法的枠組みが一切存在しなくなります。

冷戦終結後、人類は30年以上かけて核軍縮の枠組みを築いてきました。しかし今、その全てが崩壊しようとしています。

崩れゆく軍縮の枠組み

1991年、冷戦の終焉と共に第一次戦略兵器削減条約(START I)が調印されました。それは希望に満ちた瞬間でした。核戦争の恐怖から解放され、人類は新しい時代へと歩み始めるかに見えました。

数字がその楽観を裏付けていました。冷戦のピークだった1986年、世界には約7万発の核弾頭が存在していました。それが2025年初頭には約1万2,241発まで減少しました。表面的には、軍縮は成功していたように見えます。

しかし、その数字の裏で何かが変わり始めていました。

2009年、START Iが失効しました。2019年、中距離核戦力(INF)全廃条約が失効しました。核軍縮の枠組みは一つずつ消えていきました。そして残されたのが、新STARTだけでした。

この条約は2011年2月5日に発効し、米ロ両国の配備戦略核弾頭を1,550発以下に制限していました。2021年2月、バイデン政権はこれを5年間延長しました。しかし2023年2月、ロシアのプーチン大統領は履行停止を表明しました。ウクライナ侵攻の真っ只中でした。

そして2026年1月、トランプ米大統領は「失効するなら、そうなるまでだ」と述べました。中国を含む新しい協定の可能性に言及しましたが、具体的な見通しはありません。

30年以上かけて築いた核軍縮の枠組みが、なぜ今、崩壊しようとしているのでしょうか?

答えは単純です。世界が変わったのです。

冷戦時代の核抑止論は、もう通用しない

冷戦時代の核抑止は、ある種の「安定」を前提としていました。米ソ二極構造。相互確証破壊(MAD)の論理。双方が核兵器を持つことで、誰も核兵器を使えない。恐怖のバランスが平和を保つ。

しかし2026年の世界は、もはやそうではありません。

第一に、核秩序は多極化しました。

もはや米ロ二極ではありません。中国は核戦力を急速に拡大しています。2025年現在、少なくとも600発の核弾頭を保有し、年間約100発のペースで増強しています。2030年までに1,000発を超えると予測されています。北朝鮮は少なくとも50発を保有し、インド、パキスタン、イスラエルも核戦力を維持・増強しています。

新STARTは米ロ二国間条約です。中国は交渉に応じていません。つまり、この条約が存続したとしても、世界の核軍縮には不十分なのです。

第二に、テクノロジーが核戦争の性質を変えました。

AI(人工知能)が核兵器システムに導入されつつあります。早期警戒システム、意思決定支援、報復攻撃の自動化。人間が判断する時間は短くなり、AIの誤作動や誤判断のリスクは高まります。

1983年、ソ連の早期警戒システムが米国の核ミサイル発射を誤探知しました。当直将校スタニスラフ・ペトロフは「システムの誤作動」と判断し、上官への報告を控えました。この判断が核戦争を回避しました。人間の直感が、人類を救ったのです。

AIの時代に、同じ判断ができるでしょうか?

さらに、極超音速ミサイルが配備されつつあります。マッハ5以上で低空を機動しながら飛行し、従来のミサイル防衛システムでは探知も迎撃も困難です。従来の弾道ミサイルなら着弾の12分前に探知できましたが、極超音速滑空体は着弾の6分前にならないと探知できません。

1962年のキューバ危機、ケネディ大統領には13日間の判断時間がありました。しかし今、指導者に与えられる時間は数分かもしれません。AIが「反撃推奨」を出す前に、人間が冷静に判断できるのでしょうか?

第三に、核使用の閾値が下がっています。

ウクライナ侵攻で、ロシアは核兵器使用を繰り返し示唆しました。「核の瀬戸際政策」が復活しています。2025年初頭現在、約2,100発の核弾頭が弾道ミサイルに搭載され「高度警戒態勢」に置かれています。数分以内に発射できる状態です。

そして最も皮肉なことに、冷戦後に核兵器の総数は減りましたが、使用可能な「軍用保有核」は再び増加に転じています。中国、インド、北朝鮮、パキスタン、ロシア、英国が核戦力を増強しています。減少しているのは米国だけです。

冷戦時代の核抑止論は、もはや機能していません。では、何が機能するのでしょうか?

裏切られた約束—ウクライナの教訓

1994年12月5日、ハンガリーの首都ブダペスト。歴史的な文書が調印されました。

ウクライナは当時、世界第3位の核保有国でした。ソ連崩壊後、その領土には約1,800発の核弾頭が残されていました。ウクライナは核を放棄することに合意しました。その見返りに、米国、英国、ロシアの3カ国がウクライナの独立、主権、領土の保全を約束しました。

ブダペスト覚書と呼ばれるこの文書で、クリントン米大統領は「安全を保障すると約束した」と明言しました。

ウクライナは約束を信じました。1996年までに、全ての核兵器をロシアに移転しました。非核国家となりました。

そして20年後、約束は破られました。

2014年、ロシアはクリミア半島を一方的に併合しました。2022年2月、全面侵攻を開始しました。署名国であるロシア自身が、約束を踏みにじったのです。

ウクライナのゼレンスキー大統領は言いました。「覚書は機能しなかった。安全を保証した国と全面戦争になったのだから」「紙一枚と署名だけで平和は実現しない」

ウクライナの教訓は、世界中に波及しました。韓国では世論の60%超が核武装を支持するようになりました。日本でも「核共有」論が浮上しました。北朝鮮は「核を持たないと危険だ」と学習しました。

ウクライナの教訓は残酷です。核を放棄すれば、約束は守られないかもしれません。

では、核を持ち続けることが答えなのでしょうか?

しかし、核兵器の存在そのものが、AIの誤判断や極超音速ミサイルと組み合わさることで、人類全体を危険にさらしています。一発の誤算が、数千万人の命を奪いかねません。

この矛盾を、私たちはどう解決すればいいのでしょうか?

もう一つの選択肢—そしてその困難さ

2017年7月7日、国連本部。核兵器禁止条約(TPNW)が採択されました。国連加盟国の6割を超える122カ国が賛成しました。条約は核兵器の開発、保有、使用、使用の威嚇を含むあらゆる活動を例外なく禁止します。

2021年1月22日、条約は発効しました。2025年9月現在、署名国は95カ国、批准国は74カ国に達しています。

2025年3月、第3回締約国会議がニューヨークで開催されました。政治宣言には、こう記されています。

「核兵器の使用に対する唯一の保証は、核兵器の完全廃絶である」

「核抑止力は、すべての人の生存を脅かす核リスクの存在を前提にしている」

しかし、核保有国は全て不参加です。米国、ロシア、中国、英国、フランス、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮。日本も参加していません。

理想と現実のギャップは、埋まっていません。

核なき世界への願いは、音楽の中でも繰り返し歌われてきました。

1971年、ジョン・レノンは「国境も宗教もない世界」を想像せよと歌いました。優しく、理想主義的な呼びかけでした。

それから17年後の1988年、忌野清志郎は別の歌い方をしました。RCサクセションのカバーソング『明日なき世界』は、原発事故と核戦争への恐怖を容赦なく突きつけました。レコード会社は発売を拒否しました。あまりにも直接的で、あまりにも政治的だと。

しかし清志郎が歌った恐怖は、2026年の今、かつてないほど現実のものとなっています。核弾頭の総数は減りましたが、使用可能な核兵器は増え始めています。AI、極超音速ミサイル、そして失効する軍縮条約。『明日なき世界』は、もはや比喩ではありません。

私たちは今、どこにいるのか

2026年2月5日以降、私たちはどこへ向かうのでしょうか?

核兵器を持ち続けることで安全を確保するのでしょうか?それとも、核兵器の完全廃絶という険しい道を歩むのでしょうか?

答えは簡単ではありません。ウクライナの教訓は、約束だけでは不十分だと教えています。しかし、AIと極超音速ミサイルの時代に、核兵器を持ち続けることもまた、人類を破滅の淵に立たせています。

私たちは今、岐路に立っています。核なき世界への道は、かつてないほど険しい。

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Satsuki
テクノロジーと民主主義、自由、人権の交差点で記事を執筆しています。 データドリブンな分析が信条。具体的な数字と事実で、技術の影響を可視化します。 しかし、データだけでは語りません。技術開発者の倫理的ジレンマ、被害者の痛み、政策決定者の責任——それぞれの立場への想像力を持ちながら、常に「人間の尊厳」を軸に据えて執筆しています。 日々勉強中です。謙虚に学び続けながら、皆さんと一緒に、テクノロジーと人間の共進化の道を探っていきたいと思います。

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