新聞社のAI活用は編集業務の効率化から、新たな局面を迎えようとしている。以前、AI時代における新聞の価値や、飛騨市のRAG活用事例を報じたが、今回は地方新聞社が主役だ。創刊150年を迎える山形新聞社が、新潟日報生成AI研究所と連携協定を締結し、過去15年分の記事データベースを活用した生成AIサービスを2026年3月から提供開始する。大手プラットフォームでは得られない「圧倒的に地域に詳しいAI」が、地方の情報格差を埋める可能性を秘めている。
株式会社山形新聞社は2026年2月2日、株式会社新潟日報生成AI研究所と「地域共創 生成AIパートナーシップ協定」を締結した。両社は山形新聞生成AIの実用化を進め、地域特性に合った生成AI活用モデルを構築する。連携事項は、山形新聞社の新聞記事データベースを活用した生成AI開発、山形県における地域情報への生成AIの浸透加速、地域社会における生成AIの活用推進である。
山形新聞社は山形県を基盤とするメディア企業で、2026年に創刊150年を迎える。新潟日報生成AI研究所は株式会社新潟日報社の100%子会社として、地域情報に特化した生成AI技術の研究開発と社会実装を推進している。
From:
【新聞社×生成AI】山形から地方創生DXを。山形新聞社と新潟日報生成AI研究所が生成AI活用で包括連携
アイキャッチは株式会社山形新聞 PRTIMESより引用
【編集部解説】
地方新聞社が生成AIで新たなビジネスモデルを切り拓く動きが加速しています。今回の山形新聞社と新潟日報生成AI研究所の連携は、単なる技術導入ではなく、地域に根差したメディアが持つ情報資産の価値を再定義する試みといえます。
山形新聞社が活用するのは過去15年分の記事データベースです。これにより「圧倒的に山形に詳しい生成AI」を実現し、2026年3月からサービス提供を開始する予定となっています。
ここで注目すべきは、RAG(検索拡張生成)という技術です。一般的な生成AIはインターネット上の公開情報を学習していますが、地方の詳細な情報は圧倒的に不足しています。新潟日報生成AI研究所の鶴間尚社長が指摘するように、新潟県内に限ると情報量が少なく、誤った回答を生成してしまうケースが少なくありません。
RAG技術により、OpenAIなどの大規模言語モデルに新聞社の記事データベースを参照させることで、地域特化型の高精度な回答が可能になります。これは都市部と地方の情報格差を是正する重要な一歩です。
新潟日報生成AI研究所は2024年11月に設立され、既に岩手日報社、茨城新聞社、下野新聞社、北日本新聞社、徳島新聞社などと連携しています。さらに信濃毎日新聞社も2026年3月から同様のサービスを開始する予定で、地方新聞社による生成AI活用が全国的なムーブメントになっています。
この動きは地方企業や自治体にとって大きなメリットがあります。地域の詳細なデータに基づいた資料作成、分析、アイデア創出が効率化され、生産性向上や課題解決につながります。一方で、新聞社にとっては購読者減少が続く中での新たな収益源として期待されています。
長期的には、地域ごとに最適化された生成AIが各地で展開されることで、日本全体の情報インフラがより多層的で豊かになる可能性があります。ただし、記事データの品質維持、プライバシー保護、AIの回答精度の検証体制など、クリアすべき課題も残されています。
【用語解説】
生成AI
テキストや画像、音声などを自動生成する人工知能の総称である。ChatGPTに代表される技術で、大量のデータから学習し、人間の指示に応じて新しいコンテンツを作成する。企業の業務効率化や創造的な作業支援に活用されている。
RAG(検索拡張生成)
Retrieval Augmented Generationの略で、検索拡張生成と訳される。生成AIが回答を作成する際、外部のデータベースから関連情報を検索・参照し、その情報に基づいて回答を生成する技術である。これにより、AIの学習データにない最新情報や専門的な情報も正確に扱えるようになる。
大規模言語モデル(LLM)
Large Language Modelの略で、膨大なテキストデータで学習された自然言語処理のAIモデルである。OpenAIのGPTシリーズなどが代表例で、文章理解や生成を高い精度で実行する。RAG技術と組み合わせることで、特定分野に特化した回答が可能になる。
【参考リンク】
山形新聞社(外部)
山形県を基盤とする地方紙を発行するメディア企業。1876年創刊で2026年に創刊150年を迎える。
新潟日報生成AI研究所(外部)
新潟日報社が2024年11月設立。新潟日報の記事データを活用した生成AIサービスを法人向けに提供。
【参考記事】
新潟発 AIで地方創生 地域特化の知見から価値を生む(外部)
新潟日報生成AI研究所のRAG技術や2010年以降の記事データ活用について詳述。
信濃毎日新聞社が生成AI参入 企業や自治体向けに記事活用(外部)
信濃毎日新聞社の2026年3月生成AIサービス開始と地方新聞社の全国的展開を報じる。
新潟日報生成AI研究所と山形新聞社が「生成AIパートナーシップ協定」締結(外部)
協定締結の公式発表。過去15年分のデータベース活用と3月サービス開始を明記。
「株式会社新潟日報生成AI研究所」設立のお知らせ(外部)
2024年10月の研究所設立発表。2010年以降の記事データ活用と日次更新について記載。
北日本新聞が生成AI開発 富山の記事データ活用 地方紙で4社目(外部)
北日本新聞社の2026年春サービス開始。地方新聞社4社目として全国展開を示す。
【編集部後記】
以前、新聞社のデジタル化とAI活用について考察し、自治体のRAG技術導入も報じてきました。今回の山形新聞社の動きは、それらが一つの形として結実した事例といえるかもしれません。地方新聞社が蓄積してきた記事データベースという情報資産が、生成AIという新技術と出会うことで、外部向けのサービス事業として生まれ変わろうとしています。
みなさんの地域には、どんな情報資産が眠っているでしょうか。大手プラットフォームでは得られない、地域に根差した深い知見をAIが活用できるようになったとき、どんな可能性が広がるのか。そして、それは本当に地域の課題解決につながるのか。岩手、茨城、栃木、富山、徳島、長野と全国で広がるこの動きを、私たちも引き続き追いかけていきたいと思います。みなさんの視点や期待、あるいは懸念をぜひお聞かせください。






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