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ChatGPT解約運動「QuitGPT」が拡大、政治献金問題とICE利用への反発を受けて

ChatGPT解約運動「QuitGPT」が拡大、政治献金問題とICE利用への反発を受けて

2026年2月10日、QuitGPTと呼ばれるキャンペーンがChatGPTのサブスクリプションキャンセルを呼びかけているとMIT Technology Reviewが報じた。

OpenAI社長のグレッグ・ブロックマンと妻はドナルド・トランプ大統領のスーパーPACであるMAGA Inc.に合計2500万ドルを寄付したことが理由の一つだ。MAGA Inc.は2025年後半に約1億200万ドルを調達した。また、米国移民税関捜査局がChatGPT-4を搭載した履歴書スクリーニングツールを使用していることも指摘されている。ミネアポリスでは、移民関連の連邦当局者による致死的発砲事件が発生した。

The Informationによると、2025年12月時点でChatGPTの週間アクティブユーザーは約9億人と報じられている。キャンペーンのInstagram投稿は3600万回以上の閲覧数と130万のいいねを獲得し、ウェブサイトには1万7000人以上が登録した。ニューヨーク大学マーケティング教授のスコット・ギャロウェイもResist and Unsubscribeというキャンペーンを立ち上げている。

From: 文献リンクA “QuitGPT” campaign is urging people to cancel their ChatGPT subscriptions

【編集部解説】

今回のQuitGPTキャンペーンは、単なる製品への不満を超えた、テクノロジー企業と政治権力の関係性をめぐる象徴的な出来事と位置づけられます。

グレッグ・ブロックマンと妻のアンナが2025年9月に合計2500万ドルをトランプ陣営のスーパーPACに寄付したという事実、「人類のためのAI」を掲げて非営利組織として設立されたOpenAIの理念との乖離を象徴する出来事となりました。この寄付額は6ヶ月間の資金調達サイクルで単独最大であり、業界内でも突出しています。

重要なのは、このキャンペーンが単なる政治的立場への反発だけでなく、ICEによるChatGPT-4の履歴書スクリーニングツールとしての使用という具体的な政府機関での利用実態を明らかにしたことです。国土安全保障省が公開したAIインベントリによって、OpenAIの技術が移民政策の執行に直接関与していることが公式に確認されました。テクノロジーは中立的なツールではなく、その使われ方と資金の流れによって政治的な意味を帯びるという認識が、ユーザーの間で急速に広がっています。

The InformationによるとChatGPTの週間アクティブユーザーは約9億人に上るといいます。この巨大なユーザーベースを持つChatGPTにとって、QuitGPT公式サイトに記載されている70万人規模の登録者(記事執筆時点)というキャンペーンの規模は相対的に小さく見えるかもしれません。

しかし、Instagram投稿での148.8万件(記事執筆時点)のいいねという拡散力は、潜在的な影響力の大きさを示しています。アメリカン大学の社会学者ダナ・フィッシャーが指摘するように、消費者ボイコットが企業行動を変えるには臨界質量に達する必要がありますが、その可能性は決して低くありません。

このキャンペーンがより広範な反AI運動の一部として位置づけられている点も見逃せません。データセンターのエネルギーコスト、ディープフェイクポルノ、青少年のメンタルヘルス危機、雇用への影響、低品質なAI生成コンテンツ(スロップ)など、AI技術をめぐる多様な懸念が一つの運動に収斂しつつあります。

ニューヨーク大学のスコット・ギャロウェイ教授が立ち上げた「Resist and Unsubscribe」キャンペーンも同様に、2月の1ヶ月間、Amazon、Apple、Google、Microsoftなど主要テック企業へのサブスクリプションのキャンセルを呼びかけており、企業と政権の癒着への批判が横断的な運動として展開されています。

興味深いのは、OpenAI内部の従業員でさえこのキャンペーンの存在を知らなかったというMIT Technology Reviewの報告です。これは企業のトップと現場の認識のギャップを示唆するものであり、同時に組織外で起きている評判の変化が企業内部に伝わりにくい構造的な問題を浮き彫りにしています。

元記事ではサム・アルトマンがICEの行動について「やりすぎている」と内部メッセージで批判し、Appleのティム・クックも社内メモで事件について「緊張緩和」を呼びかけるなど、複数のテック企業のCEOが米国の移民執行をめぐる対応について公に懸念を示し始めていると報じています。トランプ政権との蜜月関係を築いてきた経営者たちが、社内外からの圧力によって軌道修正を迫られている状況は、テクノロジー業界の政治的立ち位置が流動的であることを示しています。

日本の読者にとって重要なのは、この動きが単なる米国内の政治問題ではなく、グローバルなテクノロジー企業のガバナンスと企業倫理をめぐる普遍的な問いを投げかけている点です。AI技術の開発と展開を誰が、どのような価値観のもとでコントロールするのか。企業の政治的活動が製品の利用にどのような倫理的意味を付与するのか。こうした問いは、日本国内でも生成AI技術の社会実装が進む中で、避けて通れないテーマとなるでしょう。

ジョージワシントン大学のデビッド・カープフ教授が指摘するように、ユーザーがビッグテックに対して「これには納得していない」と明確に意思表示する動きは、今後さらに拡大していく可能性があります。テクノロジー企業にとって、技術的優位性だけでなく、企業としての価値観と行動がユーザーの選択を左右する時代が到来しつつあるのです。

【用語解説】

スーパーPAC
Political Action Committee(政治活動委員会)の一種で、2010年のCitizens United判決などを契機に認められた独立支出専門の政治活動委員会。候補者への直接献金はできないが、広告などの選挙活動に無制限の支出が可能だ。

ICE(Immigration and Customs Enforcement)
米国移民税関捜査局。国土安全保障省の下部組織で、不法移民の取り締まりや国境警備を担当する連邦機関。2026年1月にミネアポリスで捜査官が2人を射殺する事件が発生し、政治的な焦点となっている。

GPT-4
OpenAIが開発した大規模言語モデル。ChatGPTの基盤技術として使用されており、テキスト生成、翻訳、コーディング支援などの機能を提供する。ICEの履歴書スクリーニングツールにも採用されている。

【参考リンク】

QuitGPT(外部)
ChatGPTサブスクリプションキャンセルを呼びかける草の根キャンペーンの公式サイト。30万人以上がボイコットについて共有している。

OpenAI(外部)
ChatGPTを開発したAI研究企業。グレッグ・ブロックマンは社長兼共同創業者を務める。

ChatGPT(外部)
OpenAIが開発した対話型AI。2025年12月時点で週間アクティブユーザーは約9億人に達している。

Resist and Unsubscribe(外部)
スコット・ギャロウェイ教授によるビッグテック企業への2月中のサブスクリプションキャンセルキャンペーン。

Federal Election Commission(外部)
米国連邦選挙委員会。ブロックマンのMAGA Inc.への2500万ドル寄付も記録で確認できる。

【参考記事】

OpenAI exec becomes top Trump donor with $25 million gift(外部)
ブロックマンが2025年9月に2500万ドルを寄付し、6ヶ月間で最大の献金者となったことを報じる。

Trump’s super PAC builds $300 million cash stockpile(外部)
MAGA Inc.が約1億200万ドルを調達し、ブロックマンの寄付が約4分の1を占めたと報じる。

Pro-Trump Super PAC Raises Record-Breaking $305 Million(外部)
MAGA Inc.の3億500万ドルが過去の大統領関連スーパーPACの5倍に相当する額であることを分析。

Big Tech Boycott February 2026: Scott Galloway’s Campaign(外部)
ギャロウェイ教授の「Resist and Unsubscribe」キャンペーンを詳報。2月中のサブスクリプションキャンセルを呼びかける。

【編集部後記】

私たちが日常的に使うテクノロジーサービスの背後にある企業が、どのような価値観を持ち、どこに資金を流しているのか。これまであまり意識してこなかった方も多いのではないでしょうか。QuitGPTキャンペーンは、便利さと企業倫理のバランスをどう考えるか、という問いを投げかけています。

皆さんは、使っているサービスの提供企業が政治献金を行っていることを知ったとき、サービスの利用を続けますか。それとも代替サービスを探しますか。正解はありません。ただ、選択肢があることを知り、自分なりの基準を持つことが、これからのテクノロジー時代には大切になるかもしれません。

投稿者アバター
omote
デザイン、ライティング、Web制作を行っています。AI分野と、ワクワクするような進化を遂げるロボティクス分野について関心を持っています。AIについては私自身子を持つ親として、技術や芸術、または精神面におけるAIと人との共存について、読者の皆さんと共に学び、考えていけたらと思っています。

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