Last Updated on 2024-10-28 18:02 by admin
Appleは2024年後半、Vision Pro向けのSafariブラウザにスペーシャル(Spatial)フォトとスペーシャル(Spatial)ビデオの表示機能を追加することを発表した。この発表は、AppleのプロダクトマネージャーであるDella Huffと、デザインチームのBilly Sorrentino両氏がPetaPixelのインタビューで明らかにした。
この機能により、ウェブ開発者はウェブサイトに3D表示可能なスペーシャルフォトとビデオを埋め込むことができるようになる。Vision Proユーザーは、これらのコンテンツを3Dで閲覧できる一方、通常のデバイスユーザーは2D表示で見ることができる。
スペーシャルフォトとビデオの撮影に対応している機器は以下の通り:
- iPhone 15 Pro/Pro Max(iOS 18.1以降)
- iPhone 16シリーズ全機種
- Apple Vision Pro
現在、スペーシャルコンテンツの視聴はメッセージ、メール、AirDropでの直接共有に限られているが、この制限はSafariのアップデートで解消される。
また、Canonは自社のEOS R7デジタルカメラ向けに「スペーシャルレンズ」を発売予定で、プロフェッショナル品質のスペーシャルビデオ撮影が可能になる。さらに、Final Cut Proもスペーシャルビデオの編集機能を追加する予定だ。
from Safari On visionOS Is Getting Support For Embedded Spatial Photos & Videos
編集部解説
Appleが発表したSafariブラウザのスペーシャルコンテンツ対応は、空間コンピューティングの普及に向けた重要な一歩と言えます。
これまでスペーシャルフォトやビデオの視聴は、メッセージやAirDropなどの直接共有に限られていました。しかし、SafariでWebサイトに埋め込めるようになることで、コンテンツの共有と視聴の可能性が大きく広がります。
特筆すべきは、Vision Proユーザー以外の体験を損なわない設計です。Vision Proユーザーは3D表示で没入感のある体験ができる一方、通常のデバイスユーザーは従来通り2D表示で閲覧できます。
技術面では、MV-HEVC(Multiview HEVC)という規格を採用しています。これは既存のHEVC(H.265)を拡張したもので、左右の視点画像を1つのファイルに格納できます。
コンテンツ制作の環境も整いつつあります。iPhoneやVision Pro本体での撮影に加え、CanonがEOS R7用の「スペーシャルレンズ」を発売予定です。また、Final Cut Proでスペーシャルビデオの編集が可能になり、プロフェッショナルな制作環境が整います。
注目すべきは、VimeoがVision Pro向けアプリでスペーシャルビデオのアップロードと共有に対応したことです。一方、YouTubeはまだVision Proへの対応を表明していません。今後、プラットフォーム間の競争が活発化する可能性があります。
将来的には、空間コンピューティングの普及に伴い、3Dコンテンツの制作・共有がより一般的になると予想されます。特に、教育、エンターテインメント、eコマースなどの分野での活用が期待できます。
ただし、3Dコンテンツの制作にはスキルと時間が必要です。また、データサイズも2D映像の約2倍(1分あたり約130MB)となるため、配信インフラへの負荷も考慮する必要があります。
参考情報
【用語解説】
スペーシャル(Spatial)フォト/ビデオ
立体的な奥行きを持つ写真・動画です。従来の2D映像と異なり、Vision Proで見ると実際にその場にいるような没入感が得られます。
MV-HEVC
Multiview High Efficiency Video Codingの略。複数の視点から撮影した映像を1つのファイルにまとめる圧縮形式です。左右の目で見る映像を効率的に保存できます。
空間コンピューティング
実世界の3次元空間をデジタル化し、その中でコンピュータを操作する新しいインターフェース技術です。