Last Updated on 2025-03-21 17:52 by admin
マクドナルド日本は2025年3月19日から6月17日までの期間限定で、ソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」内に公式ブランドワールドを開設した。このバーチャル空間では、仮想フライドポテトを食べたり、超大型フライドポテト容器に入ったり、マクドナルドマスコットの段ボール切り抜きと一緒に写真を撮ったりすることができる。
このVRChatワールドは、マクドナルド日本の年次プロモーション「ティロリミックス」と連動している。ティロリミックスは2022年に始まったキャンペーンで、マクドナルド店舗で注文が準備できた際に流れる「ティロリ」チャイムをリミックスしたアニメーション音楽ビデオと人気J-popアーティストのコラボレーションである。2025年版には歌手のAdo、音楽ユニットのYOASOBI、そしてVTuberの星街すいせいが参加している。
VRChatは日本で特に人気が高く、同社ウェブサイトへの訪問者の33%以上が日本からのアクセスである。その人気の理由の一つは、ユーザーが独自のアバターを作成・カスタマイズできる点にある。これは日本で急成長しているVTuber文化と親和性が高い。
星街すいせいは、ホロライブ所属のVTuberで、YouTubeチャンネル登録者数200万人以上を誇る日本最大級の音楽VTuberである。彼女はライブコンサート開催やテレビ出演の経験があり、日本の音楽チャートにもランクインした実績を持つ。
from McDonald’s Japan Launches Official ‘VRChat’ World, Tapping Into Japan’s Massive VTuber Trend
【編集部解説】
マクドナルド日本がVRChatに公式ワールドを開設したというニュースは、企業のバーチャル空間活用の新たな展開として注目に値します。この取り組みは単なるプロモーションを超え、日本のVTuber文化とVR技術の融合を象徴する事例といえるでしょう。
VRChatは日本で特に人気が高く、ウェブサイト訪問者の33%以上が日本からのアクセスという事実は、日本のユーザーがいかにこのプラットフォームに親しんでいるかを示しています。これは日本のアニメ文化やVTuber現象と深く関連していると考えられます。
今回のコラボレーションでは、「ティロリミックス」という音楽プロジェクトとVRChat空間が連動している点が興味深いです。マクドナルドの店舗で注文が準備できた際に流れる「ティロリ」チャイムを基にした音楽プロジェクトは、2022年から始まり今年で4年目を迎えます。過去3回のプロジェクトでも人気アーティストとのコラボレーションが行われ、特に2024年版は1,100万回以上の再生回数を記録する大ヒットとなりました。
今回のVRChat空間は、単に仮想フライドポテトを食べたり写真を撮ったりするだけの単純な体験に見えるかもしれませんが、その背景には重要な意味があります。これはZ世代を中心とした若年層へのアプローチ戦略であり、彼らが日常的に利用するプラットフォームに企業が積極的に参入する動きの一環です。
特筆すべきは、今回のコラボレーションにVTuberの星街すいせいが参加している点です。彼女はホロライブ所属のVTuberとして200万人以上のYouTubeチャンネル登録者を持ち、日本の音楽チャートにもランクインした実績を持つアーティストです。VTuberとリアルアーティスト(AdoとYOASOBI)が同じプロジェクトに参加することで、バーチャルとリアルの境界がさらに曖昧になっていることを示しています。
この事例は、MetaのHorizon Worldsとの対比でも興味深い視点を提供しています。VRChatがユーザー生成アバターの自由度の高さで日本市場で成功している一方、Metaのプラットフォームはアバターカスタマイズの制限があり、日本のVTuber文化との親和性が低いとされています。Metaが5,000万ドル(約75億円)のクリエイターファンドを立ち上げたことは、この差を埋めようとする動きと解釈できるでしょう。
企業のマーケティング戦略としても、この取り組みは従来の広告手法からの大きな転換を示しています。消費者に一方的に情報を届けるのではなく、消費者が自ら体験し、その体験を共有することでブランド価値を高める「体験型マーケティング」の好例といえるでしょう。
さらに、このようなバーチャル空間でのブランド体験は、物理的な制約を受けないという大きな利点があります。世界中のユーザーが同時にアクセスでき、言語の壁を超えて共通の体験を共有できる点は、グローバルブランドにとって非常に魅力的です。
今後、このようなバーチャル空間でのブランド体験はさらに進化していくことが予想されます。単なる宣伝の場から、ユーザーとブランドが共創する場へと発展していく可能性を秘めています。マクドナルド日本の取り組みは、その先駆けとなる事例として注目に値するでしょう。
VRとブランドの融合は、まだ始まったばかりです。これからどのような形で発展していくのか、引き続き注目していきたいと思います。
【参考用語】
VRChat: バーチャルリアリティ上でユーザーが交流できるソーシャルプラットフォーム。アバターを通じて他のユーザーと会話や活動ができる。
VTuber: バーチャルYouTuberの略。CGアバターを使用して動画配信や活動を行うクリエイター。
マッシュアップ: 複数の楽曲や音源を組み合わせて新しい楽曲を作る手法。
ティロリ♪音:マクドナルド店舗でポテトが揚がった際に鳴る特徴的な音。
【参考リンク】
マクドナルド公式サイト(外部)マクドナルドの商品情報、キャンペーン、店舗検索などができる公式サイト。
VRChat公式サイト(外部)VRChatの登録、ワールド探索、アバター作成などができるプラットフォーム。
ホロライブプロダクション公式サイト(外部)星街すいせいが所属するVTuber事務所の公式サイト。所属タレント情報やニュースを掲載。