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MetaとAnduril、米軍向けXR「EagleEye」開発へ—Reality LabsのAI×AR技術が戦場を変える

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-06-12 14:00 by admin

夜明け前、戦場の静寂を破るのは銃声ではなく、視界に浮かぶデータの光だった。
MetaとAndurilが生み出した新しいヘッドセットが、兵士の五感を拡張する。
現実と仮想がシームレスに重なり合い、敵味方の動きも、地形の変化も、瞬時に把握できる。
AIが耳元で最適な判断を囁き、迷いはデータの波に溶けて消える。
戦場はもはや肉体と精神の限界を競う場所ではない。
テクノロジーが人間の直感と融合し、意思決定の速度と精度は新たな次元へと進化する。


MetaとAndurilは2025年5月29日(現地時間、日本時間5月30日)、米軍向けに拡張現実(AR)・仮想現実(VR)を活用したXRデバイスの共同開発を発表した。両社は、米陸軍が推進するSBMC Next(旧IVAS)プログラムに向けて、戦場で兵士の状況認識を高める統合XR製品を設計・提供する計画である。

MetaのReality Labsが開発したAIやLlamaモデル、AR/VR技術が、AndurilのLattice AIプラットフォームと連携し、リアルタイムの戦場情報を兵士に提供する。MetaとAndurilは、米軍契約の成否にかかわらず協業を進める方針を示している。今回の提携は、MicrosoftがAndurilに移管することを発表したIVAS契約(10年間で最大220億ドル規模)の流れを受けたもので、今後は「EagleEye」と呼ばれる新型ヘッドセットの開発も進められる。MetaのReality Labs部門は依然赤字だが、軍事分野への進出で新たな成長機会を模索している。

from:
 - innovaTopia - (イノベトピア)A New Lifeline for Reality Labs? Meta Partners with Anduril on Military XR | XR Today

【編集部解説】

MetaとAndurilによる米軍向けXR(エクステンデッド・リアリティ)提携は、テクノロジーと防衛産業の最前線が大きく変わりつつあることを象徴しています。Microsoftの『HoloLens』を中心としたIVASプログラムが苦戦し、2025年初頭にAndurilが主導権を引き継いだことで、Metaが新たなパートナーとして登場しました。今回の協業は、単なるハードウェア開発ではなく、AI・AR・VR・センサー・指揮統制ソフトウェアの総合力を活かした「EagleEye」エコシステムの構築を目指しています。

この動きの本質は、民間のイノベーションと軍事技術の融合です。MetaのReality Labsが培った消費者向けXRデバイスの量産ノウハウやAIモデル(Llamaなど)、AndurilのLattice AIによるリアルタイム指揮統制技術が組み合わさることで、兵士は現場で直感的に情報を取得し、複数の無人システムやセンサーを統合的に活用できるようになります。これは、従来の防衛調達モデルから、商用技術(COTS)を積極的に取り入れる新たな潮流を示しています。

EagleEyeは、単なる「見える化」デバイスではありません。戦場の状況認識、脅威検知、意思決定支援、さらには将来的な生体認証や健康モニタリングまで、兵士の「拡張知覚」を実現するプラットフォームとなる可能性を秘めています。ゲーム分野で培われた没入感やユーザビリティの知見も取り込まれており、軍事だけでなく訓練、シミュレーション、産業用途にも波及効果が期待されます。

一方で、AIやXRの軍事転用には倫理・法規制・サイバーセキュリティの課題も伴います。AIによる自律判断やデータ統合が誤作動した場合、現場の混乱や民間人被害につながるリスクがあるため、米議会や規制当局も透明性や説明責任を重視しています。また、今回のプロジェクトは全額民間資本で進められており、納税者負担を抑えつつも、民生技術の防衛転用によるコスト削減が期待されています。

MicrosoftがHoloLensハードウェアから撤退し、クラウドやAI基盤提供に特化する一方で、MetaとAndurilは「商用×軍事」のハイブリッドモデルを推進しています。これは、今後の防衛技術調達の新たな標準モデルとなる可能性が高く、企業や産業界もこの動向を注視する必要があります。

総じて、MetaとAndurilの提携は、米軍のデジタル戦闘環境の進化だけでなく、民生技術と防衛技術の垣根を超えたイノベーションの加速を意味します。今後、EagleEyeやLattice AIの進化が、XR・AI業界全体の競争地図や社会実装のあり方にどのようなインパクトをもたらすか、引き続き注目したいところです。

 【用語解説】

SBMC Next(Soldier-Borne Mission Command Next):米陸軍が推進する次世代戦闘用ARヘッドセット開発プログラム。旧IVAS(統合視覚増強システム)から発展したプロジェクト。

EagleEye(イーグルアイ):MetaとAndurilが共同開発中の新型XRヘッドセット。戦場での兵士の視覚・聴覚能力を拡張し、リアルタイム情報を提供する。

シリコンカーバイドレンズ:MetaがOrionプロトタイプで採用した高性能AR用レンズ材料。広い視野角と高解像度を実現するが、現時点では高価。

Llama(ラマ):Metaが開発した大規模言語モデル(LLM)。AIによる音声認識や翻訳などに活用される。

【参考リンク】

Meta Platforms(メタ)公式サイト(外部)MetaはAIやXR技術開発を行う米国の大手テクノロジー企業。Reality Labs部門でAR/VR製品やAIモデルを展開。

Anduril Industries(アンドゥリル・インダストリーズ)公式サイト(外部)防衛テクノロジー企業。Lattice AIや各種無人システム、軍事用XRデバイスなどを開発・提供。

Ray-Ban Meta(レイバン・メタ)公式サイト(外部)MetaとRay-Banが共同開発したスマートグラス。カメラやAIアシスタント、ライブ翻訳機能を搭載。

Reality Labs(リアリティ・ラボ)公式紹介ページ(外部)MetaのAR/VR技術開発部門。Meta QuestやRay-Ban Metaなどを手掛ける。

【参考動画】

【参考記事】

Meta and Anduril Team Up to Transform XR for the American Military | Anduril公式
MetaとAndurilによる米軍向けXR提携の公式発表。

Meta, Anduril partner on VR, AR project intended for U.S. Army | CNBC
米陸軍向けXRデバイス開発に関するMetaとAndurilの提携報道。

Meta and Anduril work on mixed reality devices for the US military | Defense News米軍向けXRデバイス開発の背景と今後の展望を解説。

【編集部後記】

今回のMetaとAndurilによる米軍向けXR提携のニュースを読んで、「テクノロジーの進化が、ここまで現実の世界と密接に結びついてきたのか」と感じた方も多いのではないでしょうか。かつてはゲームやエンタメの領域で語られることが多かったXRやAIが、今や国家の安全保障や現場の命を守るツールとして本格的に活用され始めています。

一方で、「軍事転用」というワードに対して複雑な感情を抱く読者もいるかもしれません。最先端の民生技術が防衛分野に流れ込むことで、技術革新やコストダウンが進む一方、倫理や安全性の議論も避けて通れません。

また、今回の事例は「軍事×民生」の境界がますます曖昧になっていく時代の象徴です。今後、EagleEyeやLattice AIのような技術が、産業や医療、教育といった他分野にも応用される可能性は十分にあります。

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乗杉 海
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