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ーTech for Human Evolutionー

Niantic SpatialとMeow Wolf、VPS技術で現実世界と融合する次世代ARアートを発表

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Meow WolfとNiantic Spatialは、拡張現実(AR)を活用したマルチメディアアート体験の拡張を目指して提携した。

2025年6月11日(現地時間、日本時間6月12日)に発表されたこのプロジェクトは、Niantic SpatialのジオスペーシャルAI技術「ビジュアル・ポジショニング・システム(VPS)」を活用し、従来の物理展示を超えて都市や公園など日常空間に『Meow Wolf』の世界を拡張することを目指している。

両社はまず、2025年後半にデンバーの『コンバージェンス・ステーション』でクローズドベータを開始し、現実世界での発見と展示内ストーリーテリングを結びつける体験のプロトタイプを検証する予定だ。今後は、ARポータルやスカベンジャーハント、コミュニティによるワールドビルディングなど多様な機能の実装も検討されている。Nianticは『ポケモンGO』など一部ゲーム事業をScopelyに売却し、ジオスペーシャルAIに特化している。Meow Wolfは今後もロサンゼルスやニューヨークで新拠点を展開予定である。

from:
Meow Wolf and Niantic Spatial explore expansion of multimedia art with AR | VentureBeat

【編集部解説】

今回のMeow WolfとNiantic Spatialの提携は、単なる技術デモンストレーションを超えた、空間コンピューティング時代の本格的な社会実装として注目すべき事例です。特に興味深いのは、両社が「アート」という感情的・創造的な領域を通じて、最先端のジオスペーシャルAI技術を一般ユーザーに浸透させようとしている点にあります。

これまでARやVR技術は、しばしば「技術ありき」の体験設計に陥りがちでした。しかし、Meow Wolfが持つ物語性とコミュニティ形成力、そしてNianticが培ってきた現実世界との融合技術が組み合わさることで、テクノロジーが人間の創造性や社会的つながりを拡張する理想的なモデルが生まれる可能性があります。

また、この取り組みは日本のコンテンツ産業やクリエイティブ分野にとっても重要な示唆を含んでいます。日本が世界に誇るアニメ、ゲーム、アートなどの文化的資産を、空間コンピューティング技術と融合させることで、新たな体験価値や経済圏を創出できる可能性が見えてきます。特に、地域活性化や観光分野での応用は、日本の地方創生戦略とも親和性が高いでしょう。

今後数年間で、ARグラスの普及やAI技術の進化により、こうした空間拡張型の体験はより身近なものになるでしょう。その時、私たちがどのような未来を選択するかが、人間とテクノロジーの関係性を決定づけることになります。Meow WolfとNiantic Spatialの挑戦は、その未来への重要な一歩として、継続的な注目と議論が必要な取り組みです。

【用語解説】

拡張現実(AR):現実世界にデジタル情報や映像を重ねて表示する技術。スマートフォンやARグラスなどのデバイスで利用される。

ジオスペーシャルAI:地理空間情報をAIで解析・活用し、現実世界の位置や空間認識を高精度に行う技術。

ビジュアル・ポジショニング・システム(VPS):カメラ画像をもとに現実空間での位置を特定する技術。GPSより高精度な位置認識を実現し、AR体験の精度を高める。

コンバージェンス・ステーション:ミャオウルフがデンバーで展開する大型の没入型アート施設。異世界をつなぐ体験型展示が特徴。

スカベンジャーハント:参加者が指定されたアイテムや情報を現実空間で探し出すゲーム形式のイベント。

コミュニティ・ワールドビルディング:複数のユーザーやアーティストが協力し、物語や世界観、アート作品を共同で創造する手法。

【参考リンク】

Meow Wolf(ミャオウルフ)(外部)アメリカ発の没入型アート体験を提供する企業。複数都市で大型展示施設を運営し、独自のストーリー世界とアート体験を融合している。

Niantic Spatial(ナイアンティック・スペーシャル)(外部)ナイアンティック社が展開する空間コンピューティング・プラットフォーム。VPS技術を活用し、現実空間とデジタル体験を融合するサービスを提供。

【参考記事】

Meow Wolf and Niantic Spatial bring AR to immersive art | CNET
両社の提携内容やAR技術の活用事例について第三者視点で詳しく解説。

Meow Wolf’s AR expansion with Niantic Spatial | Blooloop
業界専門メディアによる、コラボレーションの背景や今後の展望の分析記事。

【編集部後記】

街角でスマートフォンをかざすと突然アートポータルが現れ、公園のベンチに座ると隠された物語が始まる——そんな未来が、もはや空想ではなく具体的なプロジェクトとして動き出しているのです。

特に印象的だったのは、Meow Wolfの「世界がキャンバスになる」という表現です。これまで美術館や展示会場という「箱」に閉じ込められていたアート体験が、ついに現実世界全体に解き放たれる。朝の通勤路が冒険の舞台に変わり、いつものカフェが異世界への入り口になる可能性を想像すると、日常の風景が全く違って見えてきます。

2025年後半のクローズドベータが待ち遠しくてなりません。デンバーの街を歩く参加者たちが、どんな驚きや発見を体験するのか。そして、それが世界中の都市にどう広がっていくのか。私たちが生きている「今」が、未来の教科書に「空間コンピューティング時代の幕開け」として記録される瞬間なのかもしれません。

読者の皆さんも、次に街を歩くときは少し想像してみてください。目の前の現実に、もう一つの魔法のような層が重なっている未来を。その日は、思っているより早くやってくるはずです。

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乗杉 海
新しいものが大好きなゲーマー系ライターです!