スマホの次に来る「日常の画面」は、手元ではなく、あなたの視界そのものかもしれません。
Galaxy XRとAIグラスを軸に動き始めたAndroid XRの現在地から、これから5年のデジタルライフを一緒にのぞいてみませんか。
2025年12月8日、Googleは「The Android Show: XR Edition」でSamsung Galaxy XR向けのPC Connect、トラベルモード、Likenessの提供開始と、Android XR対応デバイスのロードマップを公表した。
PC ConnectによりWindows PCのデスクトップやウィンドウをGalaxy XR内で表示でき、トラベルモードは移動中の利用時に視界を安定させる。Likenessは顔や手の動きをトラッキングし、ビデオ通話でリアルタイムに反映されるデジタルアバターを生成する。
Android XRはAIグラス、ディスプレイ付きAIグラス、有線XRグラス(XREALのProject Auraを含む)をサポートし、Android XR SDK Developer Preview 3を通じてAIグラス向けAPIも開放された。
From:
The Android Show: New features for Galaxy XR and a look at future devices

【編集部解説】
今回の発表は、Galaxy XR向けアップデートという枠を超えて、「ポスト・スマートフォン時代のAndroidをどう設計するか」というGoogleの戦略が明確に示されたものと言えます。ヘッドセット、AIグラス、有線XRグラスまでをAndroid XRという一つのレイヤーで束ね、現実世界とデジタル世界をまたぐ新しい標準OSを目指す方向性が打ち出されました。
PC Connect、トラベルモード、Likenessという3つの機能は、XRを「いつ」「どこで」「誰と」使うかという具体的な利用シーンを想定した設計となっています。PC ConnectはノートPCの画面サイズという制約を解消し、トラベルモードは飛行機など移動環境での制約を軽減し、Likenessはビデオ通話時の”顔が見えない違和感”を低減する狙いがあります。
AIグラスとディスプレイ付きAIグラスは、「常時装着することを前提としたコンピューティング」をどう実現するかという課題に取り組むデバイスです。SamsungやGentle Monster、Warby Parkerとの協業は、スペックだけでなく、日常的に身につけられるデザインや重量の基準をXR側に引き寄せる取り組みと位置づけられます。
一方、XREALのProject Auraのような有線XRグラスは、フルヘッドセットと軽量グラスの中間に位置するデバイスです。
約70度の視野角と光学シースルーを備えたこのタイプは、現実の視界に複数のウィンドウを重ねる用途に適しており、リモートワークや現場作業の支援といった実務的なシナリオへの展開が想定されます。
開発者向けには、Android XR SDK Developer Preview 3でAIグラスの開発環境が正式に提供されました。UberやGetYourGuideといったパートナー事例が公開されていることから、位置情報やカメラ、音声インターフェースを活用した「文脈に応じて情報を重ねる体験」の実装が期待されていることが読み取れます。同時に、常時カメラ・マイクが稼働するグラスの普及は、プライバシー保護や視界内広告の扱いなど、新しい規制・倫理の議論を必然的に引き起こすでしょう。
Andoroidに興味を持つユーザーにとって、このトピックは「Galaxy XRを購入すべきか」という判断以上に、自社のプロダクトやサービスを「視界」「空間」「文脈」を前提に再設計するタイミングをどう見極めるか、という問いにつながります。Android XRが複数フォームファクタを正式にサポートし始めた現在、平面ディスプレイ前提のUIから脱却する準備を進めることが、数年先の競争力を左右する可能性があります。
【関連記事】
【用語解説】
Android XR
Googleが提供する、ヘッドセットやスマートグラスなどXRデバイス向けのAndroidプラットフォームの総称である。
Galaxy XR
SamsungがAndroid XRを採用して開発したヘッドセットであり、Googleと共同で発表された最初のAndroid XRデバイスである。
PC Connect
Windows PCとGalaxy XRを接続し、PCのデスクトップやアプリウィンドウをヘッドセット内に表示できる機能である。
トラベルモード
移動中の飛行機などでも視界を安定させ、マルチウィンドウでの作業や映像視聴をしやすくするGalaxy XR向けのモードである。
Likeness
ユーザーの顔の表情や頭・手の動きをトラッキングし、リアルタイムに反映するデジタルアバター機能である。
Project Aura
XREALが開発中の有線XR グラスで、約70度の視野角と光学シースルー技術により、現実世界に複数の仮想ウィンドウを重ねて表示できるデバイスである。
Android XR SDK Developer Preview 3
Android XR向けの開発ツール群の開発者向けプレビュー第3弾であり、AIグラス対応APIなどが追加されている。
【参考リンク】
Android XR(公式サイト)(外部)
GoogleのXRプラットフォーム概要を紹介する公式サイトで、対応デバイスや機能、ニュースレター登録情報などを掲載している。
Android XR developer preview(外部)
Android XR向けアプリ開発手順やAPI概要、対応デバイス情報をまとめた開発者向けドキュメントである。
Gemini on Android XR coming to glasses, headsets(外部)
GeminiがAndroid XRのヘッドセットやグラスに展開される構想と、想定ユースケースを紹介するGoogle公式ブログ記事である。
XREAL(公式サイト)(外部)
ARグラスなどXRデバイスを開発するXREALの公式サイトで、既存製品と開発中プロジェクトの概要を掲載している。
【参考動画】
【参考記事】
Samsung Galaxy XR Gets Realistic Face-Tracked ‘Likeness’ Avatars(外部)
Galaxy XR向けLikenessアバター機能とtravel mode、PC Connectの詳細やトラッキング仕様、ユースケースを解説するVR専門メディアの記事である。
Android XR developer preview(外部)
Android XR SDK Developer Previewの内容を説明し、AI グラスやヘッドセット向けのAPI概要と開発フローを示す公式ドキュメントである。
Gemini on Android XR coming to glasses, headsets(外部)
GeminiとAndroid XRの統合により、ナビゲーションや翻訳などのAI体験がヘッドセットやグラスにもたらされることを紹介するGoogle公式記事である。
Google Sends Big Update to Galaxy XR With 3 Crazy New Features(外部)
PC Connect、トラベルモード、Likenessという3つのGalaxy XR向け新機能に焦点を当て、提供状況と利用シナリオを紹介するDroid Lifeの記事である。
【編集部後記】
スマホの次のコンピューティング環境が、いよいよ現実味を帯びてきました。Galaxy XRやAI グラス、有線 XR グラスの話は、単なるガジェット情報ではなく、「自分はどんな状況で、どんな情報を、どう受け取りたいか」を改めて考えるきっかけになると感じています。
もし、移動中でも自宅でも、視界のどこにでも自由に画面を置けるとしたら、今の仕事や生活のどこを変えてみたいでしょうか。あるいは、常にカメラとマイクを持つグラスに、どこまで権限を渡せるかという問いも避けて通れません。
このテーマについて、正解を持っているわけではありませんが、未来の道具が整っていく今だからこそ、「どんな世界なら心地よく暮らせるか」「そこに自分はどう関わりたいか」をいっしょに想像していけたらうれしいです。






























