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MetaのCTOが「VRは死んでいない」と反論 Reality Labs予算削減報道の真相と戦略転換の背景

[更新]2025年12月16日

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Metaはメタバース関連予算の一部をAIグラスやウェアラブルへシフトすると公表したが、CTO Andrew Bosworthは「VRは死んでいない」と強調し、VR・グラス・AIへ並行投資していると説明した。

Reality Labs(リアリティラボ)はQuest 3Sにより2024年Q4に最高収益を記録したものの、2025年は通年の需要が伸び悩み、Horizon Worldsも大きな成長を見せていない。一方でEssilorLuxottica(エシロールルックスオティカ)によるRay-Ban Metaは累計200万台販売、売上は前年比3倍超と好調で、Metaは2027年前半の超軽量ヘッドセットやゲーム特化のQuest 4も計画している。

From: 文献リンクMeta CTO Responds To The Speculation: “VR Is Not Dead”

【編集部解説】

今回の一連の報道から見えてくるのは、Metaの戦略的ピボットというよりも、投資配分の最適化プロセスです。Reality Labsは2021年以降で累計700億ドル以上の損失を計上しており、ザッカーバーグは2025年末までに20%の支出削減を求めていましたが、実際には達成されませんでした。このため2026年に向けて最大30%という、通常の予算サイクルで求められる10%の3倍に相当する削減幅が検討されています。

注目すべきは、削減対象が主にVRヘッドセットとHorizon Worldsに集中している点です。Quest 3Sは2024年第4四半期にAmazon USで最も売れたコンソールとなり、リアリティラボの四半期収益記録を更新しましたが、2025年第1四半期には前年同期比6%減となり、この勢いが一時的なホリデーギフト需要であったことが明らかになりました。第3四半期の回復も小売店の在庫積み増しによるもので、エンドユーザーの恒常的需要拡大とは言えません。

対照的に、Ray-Ban Metaスマートグラスは299ドルという価格帯で市場に受け入れられ、2025年上半期の売上が前年同期比で3倍以上に成長しています。月間アクティブユーザー数も前年比4倍に増加しており、需要が供給能力を上回る状況が続いています。EssilorLuxotticaは2026年末までに年間生産能力を1000万台に拡大する計画を発表しており、ウェアラブルAI市場への確信を示しています。

この状況が示唆するのは、消費者が没入型VR体験よりも、日常生活に溶け込むAI搭載ウェアラブルに価値を見出しているという現実です。3500ドルのApple Vision Proが苦戦する中、299ドルで通常のサングラスと変わらない外観のデバイスが成功している事実は、XR技術の普及における「見た目の自然さ」と「価格の妥当性」の重要性を物語っています。

潜在的なリスクとしては、VR投資の大幅削減が長期的なイノベーション停滞を招く可能性があります。2027年前半予定の超軽量ヘッドセットやQuest 4の開発は継続されていますが、予算制約が製品の完成度や市場投入時期に影響を及ぼす懸念は残ります。また、Horizon Worldsへの投資削減は、MetaがRobloxやFortniteのようなクロスプラットフォーム「メタバース」構想から事実上撤退する可能性を示唆しており、Web3時代のソーシャル体験構築において競合他社に主導権を譲ることになるかもしれません。

【用語解説】

Meta Reality Labs
Metaの研究開発部門で、VR・AR・スマートグラスなどのXR技術とウェアラブルデバイスの開発を担当。2021年以降で累計700億ドル以上の営業損失を計上している。

Horizon Worlds
Metaが開発するソーシャルVRプラットフォーム。VR専用から始まり、現在はスマートフォンにも対応したクロスプラットフォーム展開を目指している。

【参考リンク】

Meta Quest 公式サイト(外部)
MetaのVRヘッドセット製品ラインナップの公式ページ。Quest 3SやQuest 3の製品情報、仕様、価格、購入オプションが掲載されている。

EssilorLuxottica公式サイト(外部)
Ray-BanやOakleyなど多数のブランドを傘下に持つ世界最大級のアイウェア企業で、レンズからフレーム、リテールまで垂直統合したグローバル展開を行い、Metaとのスマートグラス共同開発も手がけている。

【参考記事】

Meta’s Zuckerberg Plans Deep Cuts for Metaverse Efforts(外部)
BloombergによるMeta Reality Labsの予算削減計画に関する初期報道。ザッカーバーグがメタバース関連チームの支出を最大30%削減する方向で検討していることを報じた。

Meta Plans Budget Cuts for Reality Labs Group(外部)
Business InsiderによるReality Labs予算削減の詳細分析。過去4年間で700億ドル以上の損失を計上した部門の再編について、複数の情報源からの証言を基に報道している。

Meta’s Quest 4 shift: Reality Labs is reportedly cutting the fat(外部)
Android CentralによるQuest 4開発とReality Labs再編の関連性についての分析記事。2026年予算で通常の3倍にあたる削減幅が求められている背景を解説している。

Ray-Ban Meta Sales Have More Than Tripled This Year So Far(外部)
UploadVRによるRay-Ban Metaグラスの販売実績報道。2025年上半期に売上が前年同期比で3倍以上に成長し、月間アクティブユーザー数も4倍に増加したことを報告している。

Meta’s XR Revenue Declined Due To Decreased Quest Sales(外部)
2025年第1四半期のReality Labs収益減少に関する分析記事。Quest販売台数の前年同期比減少が収益に与えた影響と、その要因について詳述している。

Ray-Ban Meta Glasses Triple Revenue While Apple and Google Scramble(外部)
XR TodayによるRay-Ban Metaグラスの市場成功分析。AppleやGoogleとの競合関係や、EssilorLuxotticaによる年間生産能力1000万台への拡大計画について報じている。

【編集部後記】

MetaのVR投資削減は単なる予算最適化なのか、それとも没入型デバイス市場そのものの限界を示しているのでしょうか。Ray-Ban Metaが299ドルで成功する一方、Quest 3Sがホリデーギフト需要に留まった事実は、日常に溶け込むウェアラブルこそが次の主戦場であることを示唆しています。AppleもGoogleも追随する中、2027年の超軽量ヘッドセットは市場をどう変えるのか。Horizon Worldsへの投資削減がメタバース構想の事実上の終焉を意味するなら、Web3時代のソーシャル体験は誰が構築するのか。700億ドルの損失は高い授業料だったのか、それとも未来への必要投資だったのか。皆さんはどう見ますか。

投稿者アバター
乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。

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