Metaは2026年1月、3つのVRスタジオであるArmature、Sanzaru、Twisted Pixelを閉鎖した。VRフィットネスアプリSupernaturalの新規コンテンツおよび機能アップデートも停止される。Supernaturalは既存ユーザーには引き続き利用可能とされる。Twisted Pixelは2025年11月にMarvel’s Deadpool VRをリリースし、SanzaruはAsgard’s Wrathで知られる。
Armatureは2021年にResident Evil 4をQuestに移植した。Bloombergが報じ、従業員がソーシャルメディアに投稿した。Metaの広報担当者は投資をメタバースからウェアラブルにシフトすると述べた。同社は2024年にQuest 3Sを発表して以降、新しいVRヘッドセットを発表していない。先月、AsusとLenovoからのHorizon OSヘッドセットを一時停止した。Oculus StudiosディレクターのTamara Sciamannaは、サードパーティの開発者とパートナーに焦点を当てた投資にシフトするとBloombergが報じたメモで述べた。
From:
Meta has closed three VR studios as part of its metaverse cuts
【編集部解説】
Metaによる3つのVRスタジオ閉鎖は、単なる組織再編ではありません。これは、VR業界全体の構造的な課題を象徴する出来事として受け止める必要があります。
Reality Labs部門の約10%に当たる1,000人超の削減は、Metaが2021年以降に投じた累計700億ドル以上(約10兆5000億円、1ドル150円換算)という巨額投資の「総括」を意味しています。この金額は、2026年のVR市場全体の規模の3.5年分以上に相当します。つまり、Metaは市場全体を何年分も上回る資金を投下したにもかかわらず、持続可能なビジネスモデルを確立できなかったのです。
特に注目すべきは、閉鎖されたスタジオの顔ぶれです。Sanzaruが開発したAsgard’s Wrath 2は2024年のGame Awardsで最優秀AR/VRゲームにノミネートされた作品であり、Twisted PixelのDeadpool VRはわずか2ヶ月前の2025年11月にリリースされたばかりでした。つまり、品質の問題ではなく、VRゲーム市場そのものの収益性に疑問符がついた結果なのです。
Metaの戦略転換の背景には、Ray-Ban スマートグラスの成功があります。同製品は200万台以上を販売し、ウェアラブル市場での可能性を実証しました。完全没入型のVRヘッドセットと比較して、日常生活に溶け込むARグラスは、より広い消費者層にアピールできる現実的なソリューションとして評価されています。
VR市場全体を見ると、2025年は製品ローンチの遅延により出荷台数が12%減少すると予測されていますが、2026年には87%のリバウンド成長が見込まれています。しかし、この成長の主役は純粋なVRではなく、MR(Mixed Reality)やER(Extended Reality)といった、現実世界とのインタラクションを重視した技術です。
Metaは「サードパーティの開発者とパートナーに焦点を当てる」と表明していますが、これは自社でリスクを負わず、エコシステムの育成を外部に委ねる方針への転換を意味します。しかし、プラットフォーマー自身がファーストパーティタイトルから撤退することで、サードパーティ開発者の投資意欲が減退する可能性もあります。
この動きは、VRという技術の終焉を意味するものではありません。むしろ、完全没入型のVRから、日常生活に統合されたARやMRへと、市場の重心が移動していることを示しています。人類の技術進化は、必ずしも最も先進的な技術が勝つのではなく、最も人間の生活に適応した技術が生き残るという原則を、改めて教えてくれているのです。
【用語解説】
Reality Labs
Metaの研究開発部門で、VR、AR、メタバース関連の技術開発とハードウェア製品を担当する。Meta Quest ヘッドセットやRay-Banスマートグラスなどを開発している。約15,000人の従業員を抱えるが、2024年には170億ドル以上の損失を計上している。
VR(Virtual Reality / 仮想現実)
コンピュータによって生成された仮想空間に没入できる技術。ヘッドマウントディスプレイを装着することで、360度の視覚体験が可能になる。ゲーム、教育、医療、トレーニングなど幅広い分野で活用されている。
AR(Augmented Reality / 拡張現実)
現実世界にデジタル情報を重ね合わせて表示する技術。スマートグラスやスマートフォンを通じて、現実の視界にデジタルコンテンツを追加できる。VRと異なり、現実世界を見ながら情報を得られるため、日常生活での利用に適している。
MR(Mixed Reality / 複合現実)
VRとARの中間に位置する技術で、現実世界と仮想世界を融合させる。デジタルオブジェクトが現実空間に存在するかのように操作でき、物理的な環境とインタラクションできる。産業用途での需要が高まっている。
メタバース
仮想空間上に構築された3次元の世界で、ユーザーがアバターを通じて交流や経済活動を行える環境。Metaが社名変更までして注力した概念だが、広範な普及には至っていない。
Quest(Meta Quest)
Meta社が開発・販売するスタンドアロン型VRヘッドセット。PCやゲーム機との接続が不要で、単体で動作する。Quest 2、Quest 3、Quest 3Sなどのモデルがあり、VR市場で高いシェアを持つ。
【参考リンク】
Meta Quest公式サイト(外部)
Metaの VRヘッドセット製品ラインナップと最新情報を提供する公式ページ
Meta Reality Labs(外部)
Metaの研究開発部門であるReality Labsの取り組みと技術開発の概要
Oculus Studios ゲームライブラリ(外部)
Meta Questプラットフォームで利用可能なVRゲームとアプリケーションのカタログ
【参考記事】
Meta Closes Twisted Pixel, Armature & Sanzaru Games – UploadVR(外部)
3つのスタジオ閉鎖の詳細と各スタジオの開発実績を詳しく報じる記事
Meta Begins Jobs Cuts After Shifting Focus From Metaverse to Phones – Bloomberg(外部)
Reality Labs部門の人員削減と戦略転換について報じるBloombergの詳細記事
Meta to reportedly lay off 10% of Reality Labs staff – TechCrunch(外部)
Reality Labsの10%人員削減と今後の戦略について分析する記事
Meta Reportedly Closes Three First-party Studios – Road to VR(外部)
VR業界の視点から3つのスタジオ閉鎖の影響を考察する専門メディアの記事
AR/VR Market Rebounds with 18.1% Growth – IDC(外部)
VR市場の最新動向と2026年以降の成長予測を示すIDCの市場調査レポート
Virtual Reality Market Size & Growth Analysis – Mordor Intelligence(外部)
VR市場の規模、成長率、地域別動向を分析する包括的な市場レポート
【編集部後記】
Metaのこの決断を見て、みなさんはどう感じられたでしょうか。完全没入型のVRから、日常に溶け込むARグラスへ。この変化は、私たちが本当に求めている「未来」の姿を映し出しているのかもしれません。技術の進化は必ずしも直線的ではなく、時に立ち止まり、方向を見定めることも必要なのでしょう。
みなさんが日常で使いたいと思うのは、部屋の中で完全に没入する体験でしょうか、それとも現実世界を拡張する体験でしょうか。ぜひSNSで、みなさんの考えをお聞かせください。



































