XREAL、ARゲーム体験の発信拡大へ|動画クリエイターに「XREAL1S+Eye」を無償提供

[更新]2026年5月8日

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ARグラスがゲームの周辺機器として認知され始めた今、その体験を等身大の言葉で伝える声は、まだ数えるほどしかない。ハードウェアメーカーが広告ではなくクリエイターを選んだとき、何が変わるのか。XREALが日本市場で仕掛けた新しい実験を、一緒に見てみましょう。


XREALは2026年5月9日より、YouTubeクリエイターとの共同企画「XREALとゲーム:次世代のクリエイター募集!」を開始する。条件を満たした応募者にARグラス「XREAL 1S」と空間追跡カメラモジュール「XREAL Eye」を無償提供し、「AR×ゲーム体験」をテーマにしたYouTubeレビュー動画の制作を依頼する。

応募条件はYouTubeチャンネル登録者数1,000人以上、ゲームまたはガジェット関連コンテンツの投稿実績があること、「AR×ゲーム」領域への強い関心の3点。応募期間は2026年6月9日まで、動画は契約締結・製品発送後1か月以内に制作・提出する。

From: 文献リンクブランドを牽引するYouTubeコンテンツクリエイタープロジェクト企画「XREALとゲーム:次世代のクリエイター募集!」を開始

【編集部解説】

提供製品「XREAL 1S + XREAL Eye」とは何か

今回の企画で提供されるハードウェアの組み合わせは、AR業界の現在地を象徴しています。

XREAL 1Sは、2026年1月のCES 2026で正式発表されたXREALの最新ARグラスです。重量82グラム(公式スペック値)、Sony製の0.68インチMicro-OLEDディスプレイを左右の目それぞれに搭載し、1920×1200の解像度を120Hzのリフレッシュレートで描画します。視野角52度、最大輝度700nit、Sound by Bose技術によるオープンイヤースピーカーを備えた構成。日本での価格は67,980円で、グローバル価格は449ドルです。中核には自社開発のX1空間コンピューティングチップが置かれ、3DoF(3軸自由度)の頭部追跡を内蔵することで、装着者が頭を動かしても仮想スクリーンが視界の中で回転せずに留まる設計になっています。

XREAL Eyeは、これに装着する重量約1.35グラムの小型モジュールです。鼻パッドの間に取り付ける12MPカメラを搭載し、X1チップと連携してmonocular SLAM(単眼SLAM)方式で空間を認識します。これにより、3DoFのみでは不可能だった6DoF(6軸自由度)――頭の回転に加えて、装着者が前後左右に歩いたり身体を傾けたりする位置の変化までもが追跡可能になります。

この差は体験として何を意味するのか。3DoFまでの仮想スクリーンは、装着者の頭が動くと一緒についてくる「頭に貼り付いた画面」に近いものでした。6DoFになると、画面が空間内の特定の位置に固定されます。装着者は仮想スクリーンの周りを歩き、覗き込み、身体を引いて全体を見渡すことができる――壁にかかった本物のテレビと同じ振る舞いをします。一般的にこの機能は外部カメラやベースステーションを必要とするものでしたが、XREAL Eyeはそれを単眼カメラ1個で達成しようとしています。ただし、低照度環境や視覚的特徴の乏しい広い空間では追跡精度が落ちる、という制約も同時に抱えています。

つまり今回提供される組み合わせは、「視聴用ディスプレイグラス」と「空間に画面を固定する機能拡張」のセットです。XREAL Eye単体での北米価格は99ドルとされており、ハードウェア体験としての完成度を測るには両方が揃う必要がある、というXREALの判断が読み取れます。

携帯ゲーム機との接続が前提する「画面」の再定義

XREAL 1Sは、USB-CのDisplayPort Alt-Modeに対応した機器であれば、追加のソフトウェアなしで仮想スクリーンとして機能します。対応機器の一覧には、iPhone 15・16シリーズ、各種Android端末、PC、Mac、iPad、Xbox、Steam Deck、Nintendo Switch、Switch 2、ROG Ally、PlayStation 5などが並びます。

ここで起きているのは、携帯ゲーム機の「物理的な画面サイズ」という制約をハードウェア側で解除する動きです。Steam DeckやROG Allyのような携帯ゲーミングPCは、性能としては据え置き機に迫りつつ、画面サイズは7インチ前後に留まっていました。ARグラスを接続することで、この画面が4メートル先の171インチ仮想スクリーンに置き換わります。Switch 2の場合も、別売りの電源ハブ「XREAL Neo」を介することで同様の体験が可能になります。

XREALはCES 2026で、ASUS Republic of Gamersとの共同開発製品「ROG XREAL R1」を発表しました。これは240Hzリフレッシュレートを実現したマイクロOLED FHDゲーミンググラスで、ROG Allyに最適化された設計を持ち、2026年上半期の発売が予定されています。同時に、Googleとの提携も継続しており、Android XRプラットフォーム向けの主要ハードウェアパートナーとして「Project Aura」の開発が進行中です。

これらの動きを並べて見ると、XREALは「ARグラスは何を表示する装置か」という問いに対して、まず「既存のデバイスのモニター置き換え」という答えを選んでいることがわかります。Apple Vision Proのような独立したコンピューティング・プラットフォームを目指す方向ではなく、すでに存在するゲーム機やPCの隣に置く周辺機器として位置づける戦略です。

XREALの市場ポジションと「AR×ゲーム」というカテゴリの未成熟

XREALは2017年に北京で創業した企業で(旧社名Nreal)、CEOのチー・スー(Chi Xu)氏のもと、コンシューマー向けARグラスの設計と製造を専業としてきました。日本法人XREAL株式会社の本社は東京・港区にあります。

ただし、市場での立ち位置は単純ではありません。IDCの2025年第3四半期データによれば、XR(VR・MR・スマートグラスを含む拡張現実全般)市場全体ではMetaが75.7%という圧倒的なシェアを保持し、XREALは2.0%で第3位というポジションです。一方、ディスプレイ搭載型ARグラスという狭いセグメントに絞ると、XREALは2022年から2025年まで4年連続で売上シェア首位を維持しています。同社は2025年6月時点で累計70万台以上の出荷を確認しており、一部の集計では年末に100万台を超えたとの推計もあります。

この「ニッチ市場では首位、全体では一桁のプレイヤー」という構造は、ARグラスというカテゴリ自体の未成熟さを反映しています。Metaの主力製品であるRay-Ban Metaシリーズは、ディスプレイを持たずカメラとAI機能を搭載した「スマートグラス」で、XREAL 1Sとは設計思想がそもそも異なります。Appleが2026年後半にスマートグラスを発表し、2027年初頭にも発売する可能性が報じられ、SamsungとGoogleも消費者向け製品を準備していると見られる中で、「ARグラス」という言葉が指し示すものは2026年内に大きく揺れ動く可能性があります。

デバイスとしての認知が広まりつつあることと、その体験の語彙が整っていることは、別の問題です。「AR×ゲーム」というカテゴリも、まだ成熟した語彙を持っていません。VRゲームのように没入空間に入り込むのでもなく、従来のゲーム機の小さな画面で遊ぶのでもなく、その中間にある体験――携帯機の画面を空間に固定し、自分の周囲の環境を残しながら大画面で遊ぶ――をどう言語化するかは、レビュアーごとに表現が分かれている状況です。XREAL Eyeによる6DoFが加わると、「リビングの壁にゲーム画面を貼り付けて、立ち上がってお茶を取りに行きながらプレイする」といった体験が成立しますが、これを既存のどの体験に喩えればよいのかは、まだ確定していません。

私たちはここで、ARグラスの体験がまだ「分かった」と言えない領域にあることを認めておく必要があります。スペック上の数値や対応機器のリストはハードウェアの輪郭を伝えますが、それを身体に装着した1時間がどんな感覚なのか、どの場面で適合し、どの場面で違和感を生むのか――その経験的知見はまだ蓄積の途上にあり、業界として共有された言葉も整っていません。XREALが今回クリエイターを募集した先には、おそらくこうした語彙の空白があります。ただし、動画は公開前にXREALによる内容審査を通過する必要があるため、クリエイターがどこまで率直な評価を盛り込めるかは、応募者自身が判断する問題でもあります。

【用語解説】

ARグラス(拡張現実グラス)
現実の視界に仮想の映像を重ねて表示するウェアラブルデバイス。XREALのようなディスプレイグラス型は、目の前に大型の仮想スクリーンを投影することで、携帯ゲーム機や動画視聴用の「どこでも大画面」として機能する。VRゴーグルと異なり、現実の環境が見えたままになるのが特徴。

3DoF / 6DoF(3軸自由度 / 6軸自由度)
DoFはDegrees of Freedom(自由度)の略。3DoFは頭の回転(うなずき・首振り・傾け)の3軸を追跡する。6DoFはこれに加えて、装着者の位置移動(前後・左右・上下)の3軸も追跡する。6DoFになることで、仮想スクリーンが「頭についてくる画面」ではなく「空間に固定された画面」として振る舞うようになる。

SLAM(スラム)
Simultaneous Localization and Mappingの略。カメラ映像をリアルタイムで解析し、空間の構造を把握しながら自己位置を推定する技術。XREAL Eyeは1個のカメラのみで行う「単眼SLAM(monocular SLAM)」を採用。低照度や特徴の乏しい空間では精度が低下するという制約がある。

Micro-OLED(マイクロOLED)
シリコン基板上に極小の有機EL画素を直接形成したマイクロディスプレイ技術。スマートフォン用OLEDよりも画素密度が高く、高輝度・高コントラストを小型光学系で実現できる。ARグラスのレンズ内に収める必要があるため、一般的なディスプレイとは異なる製造技術が用いられる。

DisplayPort Alt-Mode
USB-Cポートを通じてDisplayPort映像信号を伝送する規格。対応したケーブル1本で接続するだけで、スマートフォン・ゲーム機・PCをARグラスの映像ソースにできる。ドライバーや専用アプリのインストールが不要なのが特徴で、XREAL 1Sの「挿すだけで使える」体験の根拠となっている。

Project Aura
GoogleのAndroid XRプラットフォーム向けにXREALが開発中のARグラス。Googleとの協業による製品で、Android XRのエコシステムを担う主要ハードウェアの一つとして位置づけられている。

【参考リンク】

XREAL 公式サイト(日本)(外部)
XREAL 1S・XREAL Eye・XREAL Beam Proなど全製品の仕様・購入・サポート情報。実機体験イベントの情報も掲載。

XREAL 1S 製品ページ(日本)(外部)
XREAL 1Sのスペック詳細・対応デバイス・購入ページ。日本価格67,980円。

XREAL Eye 製品ページ(外部)
XREAL Eyeのスペック・対応機器リスト・購入情報。6DoFトラッキングの詳細も確認できる。

ROG XREAL R1 プレスリリース(ASUS)(外部)
XREALとASUS ROGが共同開発した240Hzゲーミンググラス「ROG XREAL R1」の公式発表資料。スペック・発売予定・対応機器を確認できる。

Android XR(Google)(外部)
GoogleのXRプラットフォームの概要ページ。XREALが開発参加する「Project Aura」の位置づけを理解する文脈として参照できる。

【参考動画】

【参考記事】

XREAL、1200pの光学系とNeo Power Hubを搭載した新ARグラス「XREAL 1S」をCES 2026で発表(PRNewswire)(外部)
XREAL公式プレスリリース。Sound by Bose・電気色変光調光・X1チップの詳細が確認できる一次情報源。

XREAL One Becomes 6DoF With XREAL Eye Camera(UploadVR)(外部)
XREAL Eyeが実現する6DoFの仕組みと、3DoFとの体験的な違いを解説した技術記事。

ROG and XREAL Partner to Deliver Gaming-Optimized AR Glasses(Tom’s Hardware)(外部)
ROG XREAL R1のスペック詳細と、XREAL×ROGのゲーミング戦略を伝える記事。

IDC Worldwide Quarterly Augmented and Virtual Reality Headset Tracker(IDC)(外部)
2025年第3四半期のXR市場シェアデータ。Meta 75.7%・XREAL 2.0%(第3位)の根拠となる調査レポート。

Apple Plans Glasses for 2026 as Part of AI Push(Bloomberg)(外部)
Appleのスマートグラス開発計画に関する報道。2026年後半の発表・2027年初頭発売の可能性を伝える。

【編集部後記】

ARグラスで遊ぶ体験に、まだ共通の言葉がないのは自然なことかもしれません。道具が先に届き、語彙があとからついてくる――テクノロジーの歴史はいつもこの順番をたどってきました。今回集まるクリエイターたちが、この体験をどんな言葉で切り取るのか。その言葉がどれだけ広がっていくかによって、「AR×ゲーム」というカテゴリの輪郭がはっきりしてくるのかもしれません。

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乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。