商品ページのURLを貼るだけで、ブランドに馴染んだ広告画像とキャンペーン素材が湧き出してくる——そんな未来が、無料で日本からも手の届く場所までやってきました。Googleが5月5日に発表した「Pomelli Catalog」は、中小企業のマーケティング現場を静かに、しかし確実に変えようとしています。
Googleは米国時間2026年5月5日、Google Labsが提供するAIマーケティングツール「Pomelli」の新機能「Pomelli Catalog」を発表しました。発表は公式Xアカウント「Pomelli By Google」(@PomelliByGoogle) の投稿で行われ、ユーザーが自身の商品やサービスを登録することで、Pomelliがそれらを活用し、ブランドに合わせてパーソナライズされたキャンペーンと高品質なフォトシュート(商品撮影)を自動生成する機能となります。
利用料金は無料で、提供地域は170カ国超に拡大。ツールには labs.google.com/pomelli からアクセスできます。発表時点での当該投稿の表示回数は150.9万件に達しました。Pomelliは、Google LabsとGoogle DeepMindが2025年10月28日に公開した、Webサイトを解析して「Business DNA」と呼ばれるブランドプロファイルを生成するAIマーケティングツールです。
From:
Pomelli By Google (@PomelliByGoogle) — Introducing Pomelli Catalog
【編集部解説】
今回の発表で見逃せないのは、Pomelli Catalogが「URLを入れるだけ」だったPomelliに、「自社の商品データそのものを起点とする」という新しい入り口を加えた点です。これまでのPomelliはWebサイトを解析してブランドの特徴(Business DNA)を抽出するアプローチが中心でしたが、Catalog機能は商品ページのURLを指定する方式と、商品名・説明・画像を手動で入力する方式の2通りで、より具体的な「販売対象」に紐づいたキャンペーンや商品撮影画像を生成できるようになります。
つまり、「ブランドらしさ」だけでなく「在庫されている個別商品」にAIが直接アクセスできるようになったわけです。
もうひとつ重要なのが、地域制限の大幅な撤廃です。2025年10月28日のローンチ時は米国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドの英語圏4カ国限定でしたが、2026年3月には170カ国以上へ拡大し、今回のPomelli Catalog発表とほぼ同時に「Available everywhere(どこからでも利用可能)」が宣言されました。ただし現時点でも提供言語は英語が中心である点には留意が必要です。日本のSMB(中小企業)にとっても、ようやく実機検証ができるフェーズに入ったと言えます。
技術的な背景として、Pomelliは商品撮影機能「Photoshoot」(2026年2月公開)でGoogleの画像生成モデルNano Banana(Gemini 2.5 Flash Image系)を、動画生成機能「Animate」(2026年1月公開)ではGoogle DeepMindのVeo 3.1を採用しています。Catalogはこの2つの生成エンジンに「何を作るか」という商材データを供給するハブとして機能する設計です。
ポジティブな側面として大きいのは、デザイナーやコピーライターを社内に抱えられない事業者でも、ブランドトーンが揃った素材を継続的に量産できる点です。記者として現場の声を聞く限り、SMBがマーケティングで挫折する最大の理由は「初稿が出るまでの時間」と「ブランドのブレ」です。Catalogはその両方を同時に圧縮する可能性を持っています。
一方で、潜在的なリスクも冷静に見ておく必要があります。第一に、生成された商品画像が「実物と微妙に異なる」可能性です。景品表示法上の「優良誤認」につながりかねず、ECで使う際は必ず人間によるチェックが要ります。第二に、ブランドの均質化です。同じツールを多数の事業者が使えば、結果として「Pomelliっぽい」見た目が市場に溢れる懸念があります。
規制面では、EUのAI法やデジタルサービス法を踏まえた表示義務(AI生成コンテンツの明示)が今後さらに厳格化される見込みで、日本でも生成AI素材を広告に使う際のガイドライン整備が議論されている段階です。「無料・全世界対応」の手軽さに飛びつく前に、自社が属する業界・地域のルールを確認するワンクッションが欠かせません。
長期的に見れば、Pomelli Catalogは「マーケティング部門を持たない事業者向けの自律型マーケティング基盤」へ向かう一里塚と読み取れます。Google I/O 2026(2026年5月19日・20日開催予定)でさらなる機能拡張が示される可能性も高く、CanvaやAdobe Expressといった既存ツールとの競争構図が一段と立体的になる局面に入りました。
【用語解説】
Pomelli Catalog
Pomelliの新機能で、ユーザーが自社商品やサービスを登録できるカタログ機能だ。商品ページのURLを指定する方法(Add from URL)と、商品名・説明・画像を手動で入力する方法(Add from scratch)の2通りに対応する。登録された商品データを起点に、パーソナライズされたキャンペーン素材や商品撮影画像が生成される。
Business DNA
Pomelliが対象企業のWebサイトを解析し、自動抽出するブランドプロファイルである。トーン・オブ・ボイス、カラーパレット、フォント、ビジュアルスタイルなどを含み、生成されるすべての素材のブランド一貫性を担保する仕組みだ。
Photoshoot
Pomelliが2026年2月に公開した商品撮影機能である。シンプルな商品写真を、スタジオ撮影品質の画像に変換する。Googleの画像生成モデル「Nano Banana」を基盤としている。
Animate
Pomelliが2026年1月に公開した動画生成機能だ。静的なマーケティング素材から、ブランドに沿った短尺アニメーション動画を生成する。Google DeepMindの動画生成モデル「Veo 3.1」を採用している。
Nano Banana
Google DeepMindが開発した画像生成モデルのシリーズである。初代(Gemini 2.5 Flash Image)は2025年8月に公開され、上位版のNano Banana Proが2025年11月、後継のNano Banana 2(Gemini 3.1 Flash Image)が2026年2月に登場した。Pomelli Photoshootは初代Nano Bananaを採用している。
Veo 3.1
Google DeepMindの動画生成モデルである。Pomelli AnimateやFlowなどGoogle製品群に組み込まれており、静的素材から自然な動きを持つ動画を生成する。
SMB(Small and Medium-sized Businesses)
中小企業を指す英語圏のビジネス用語だ。Pomelliは主にこの層をターゲットとして開発されている。
Google Labs
Googleの実験的プロダクトを公開するプラットフォームである。一般公開前のAI技術や新機能を、パブリックベータとして提供する役割を担う。
Google I/O
Googleが毎年開催する開発者向け年次カンファレンスだ。2026年は5月19日・20日に開催が予定されており、Pomelliの追加発表が観測されている。
【参考リンク】
Pomelli by Google Labs(公式サイト)(外部)
Pomelli本体の公式紹介ページ。アクセス・サインインから機能概要までを案内する入口となるページだ。
Pomelli Help Center(Google Labs Help)(外部)
Pomelli CatalogやBusiness DNAの操作手順、利用制限、安全対策などを網羅した公式ヘルプドキュメント。
Google公式ブログ Pomelli launch記事(外部)
Pomelli初公開時のGoogle公式アナウンス記事。設計思想と提供範囲が記載されている。
Pomelli By Google 公式Xアカウント(外部)
Pomelliのアップデート情報を発信する公式アカウント。今回のCatalog発表もここから行われた。
Google Labs 公式Xアカウント(外部)
Google Labs全体のアップデートを発信する公式アカウント。Pomelli Catalogの同時告知もこちらから行われた。
Google DeepMind: Nano Banana / Gemini Image(外部)
Pomelli Photoshootの基盤モデルである「Nano Banana」シリーズの公式技術ページである。
Google Labs(トップページ)(外部)
Pomelliを含むGoogleの実験的AIプロダクトを一覧できる公式ポータル。最新の実験情報を確認できる。
【参考記事】
Google tests Catalog and Website generation for Pomelli Experiment(TestingCatalog)(外部)
Pomelliの欧州拡大とCatalog・Websites機能追加の経緯、Google I/O 2026での発表可能性を報じる。
Google Labs and DeepMind launch AI marketing tool Pomelli(Google公式)(外部)
Pomelli初公開時の公式発表。Business DNAの仕組みと初期提供国(米・加・豪・新)が示される。
Pomelli expands to 170+ countries(aihola)(外部)
2026年3月の170カ国拡大、AnimateとPhotoshootの基盤モデル、月300枚生成上限を報じる。
Google Launches AI-Powered Product Photography Tool, Photoshoot(mlq.ai)(外部)
Photoshoot機能の2026年2月19日公開、Nano Banana採用、業界相場500〜5,000ドルを報じる。
Pomelli Product Catalog: Add Your Items and Create Personalized AI Marketing Campaigns(外部)
Pomelli Catalog公式発表(2026年5月5日)とGoogle I/O 2026前倒し公開の背景を整理する。
Google launches Nano Banana 2 model with faster image generation(TechCrunch)(外部)
Nano Banana 2の技術仕様、512px〜4K対応、最大5キャラ・14オブジェクトの一貫性保持を報じる。
Google Labs & DeepMind Launch Pomelli AI Marketing Tool(Search Engine Journal)(外部)
SMB向けマーケティング支援としての位置づけ、Canva・Adobe Expressとの差別化を分析する。
【関連記事】
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GoogleとAdobeのクリエイティブAI比較記事。Pomelliが置かれた競争環境を理解する補助線となる。
【編集部後記】
Pomelli Catalogが170カ国以上に対応した今、私たち日本のビジネスパーソンも、ようやく実機で触れる段階に入りました。みなさんがいま手がけている商品やサービスを、もしAIが自動で撮影し、キャンペーン素材にしてくれるとしたら、何から試してみたいですか。
便利さに飛びつく前に、「自社らしさはどこに残したいか」を一度言葉にしておくと、AIとの付き合い方がぐっと豊かになる気がしています。よろしければ、感想や試した結果を聞かせてください。












