Oracle、Google Geminiを業務アプリへ統合|マルチモデルAI戦略を強化

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OracleはGoogleのGeminiを業務アプリへ組み込む計画を示しました。重要なのはモデル追加そのものではなく、企業が業務ごとに複数のAIを選び、既存のデータや承認フローの中で使い分けられるようになる点です。


Oracleは2026年7月下旬、Google Cloudとの提携を拡大し、GeminiをOracle AI Agent Studio for Fusion Applicationsで提供するとともに、Fusion ApplicationsとNetSuiteの組み込みAIにも利用する計画を発表した。2026年4月にはOracle AI DatabaseなどとGemini Enterpriseを接続する取り組みも発表しており、今回の拡大で業務アプリを中心としたマルチモデルAI環境を強化する。

一方、具体的な提供開始日、対象地域、利用料金、対応プランは公表されていない。今回の発表は、すぐに利用できる新機能の提供開始ではなく、Oracleが今後進める企業向けAI戦略を示したものだ。

From: 文献リンクOracle (NYSE: ORCL) Embeds Google Gemini Across Enterprise Apps To Strengthen AI Growth Story

【編集部解説】

今回の発表で重要なのは、Oracleが単にGeminiを採用したことではなく、業務に応じて複数のAIモデルを使い分ける方針を、既存の業務アプリケーションへ持ち込もうとしている点です。

Oracleの公式発表によると、Geminiモデルは今後、Oracle AI Agent Studio for Fusion Applicationsで利用可能になる予定です。具体例として、処理効率と価格性能を重視したGemini 3.1 Flash-Liteや、複雑な推論、動画・プレゼンテーション作成などに対応するGemini 3.5 Flashが挙げられています。Oracleは、他社のモデルと並んでGeminiを選択できる環境を提供する方針です。

ただし、現時点でGeminiがFusion ApplicationsやNetSuiteの全利用者へ提供されているわけではありません。公式発表では、AI Agent Studioでの提供、Fusion ApplicationsおよびNetSuiteの組み込みAIへの利用について、いずれも計画段階の表現が使われています。具体的な提供開始日、対象地域、利用料金、対応プランは公表されていません。今回の発表は、すぐに使える新機能の提供開始というより、Oracleが今後進める製品方針を示したものと捉える必要があります。

Oracleのマルチモデル戦略が企業に与える価値は、AIモデルを変更しても、業務の実行部分をFusion Applications内に残せる可能性があることです。Oracle AI Agent StudioはFusion Applicationsに統合されており、アプリケーション内のデータ、API、承認手続き、アクセス権限などを利用してAIエージェントを構築できます。作成したエージェントも既存のワークフローへ直接配置できます。

例えば、AIが売上データを分析して回答を生成するだけでなく、その結果を発注、請求、採用、在庫管理といった業務処理へ接続する場合、権限管理や承認記録、監査ログが必要になります。Oracleは、これらの統制機能を外部のAIツールへ後から追加するのではなく、Fusion Applicationsの内部に組み込む設計を採っています。2026年7月に発表されたAI Agent Studioの開発環境も、ノーコード、ローコード、プロコードによる開発と、Fusion Applicationsのセキュリティやガバナンスを同じ基盤上で扱う構成です。

この構造では、企業は一つのAIモデルへすべての業務を任せる必要がありません。短い文章の処理には低コストで高速なモデル、複雑な判断や画像・動画を扱う業務には高性能なモデルを割り当てるといった選択が可能になります。Oracle自身も、用途ごとの価格性能に応じてGeminiを使用する方針を示しています。モデルの性能競争だけでなく、業務ごとにコスト、速度、推論能力を調整することが、マルチモデル戦略の中心にあります。

一方で、モデルの選択肢が増えることと、システム全体が特定事業者から独立することは同じではありません。Geminiを選択できても、エージェントの実行、データアクセス、承認、監査はOracleのアプリケーション基盤に依存します。モデル層の固定化を弱めながら、業務基盤としてのOracleへの依存度を高める設計とも読み取れます。

Google Cloudとの協業は、アプリケーションだけでなくデータベース層でも進んでいます。Oracle AI Database Agent for Gemini Enterpriseでは、SQLを記述せずにOracleデータへ自然言語で問い合わせられます。こちらはGoogle Cloud Marketplaceで提供され、Oracle AI Database@Google Cloudは東京と大阪を含む15リージョンに展開されています。ただし、これは今回発表されたFusion ApplicationsやNetSuiteへのGemini組み込みとは別の仕組みです。

Oracleの方針からは、企業に単独のAIチャットを導入させるのではなく、既存の業務データ、権限、承認手続きの中で複数のAIモデルを動かすという設計思想が読み取れます。実際の導入価値を判断するには、Geminiの提供時期だけでなく、モデルごとの料金、データの取り扱い、管理者が設定できる範囲、既存のOracle製AIとの差を確認する必要があります。

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【編集部後記】

OracleとGoogleが提携するとは、個人的には少し意外でした。OpenAIやAnthropicではなく、GoogleのGeminiを選んだ点にも注目しています。企業向けAIでは、モデル性能だけでなく、既存のクラウドや業務システムとの相性が重要なのでしょう。今回の連携が一時的な機能追加にとどまるのか、それともより深い協業へ進むのか気になります。

OracleとGoogleのパートナーシップが、今後どのような展開を見せるのか見守りたいです。


【用語解説】

マルチモデルAI
一つのAIモデルに固定せず、処理速度、料金、推論能力、画像・動画への対応などに応じて複数のモデルを使い分ける構成。今回のOracleの方針では、Geminiを既存の選択肢に加え、業務ごとに利用モデルを選べる環境を目指している。

Oracle AI Agent Studio for Fusion Applications
Oracle Fusion Cloud Applicationsの業務データ、API、ツールを利用し、AIエージェントや複数エージェントによるワークフローを作成、検証、展開するための環境。作成したエージェントをFusion Applicationsの業務フローへ直接組み込める。

Oracle Fusion Cloud Applications
財務、人事、サプライチェーン、製造、営業、サービスなどを扱うOracleのクラウド業務アプリケーション群。共通のデータ、アクセス制御、承認、監査機能の中でAIエージェントを動かせる構成を採る。

NetSuite
会計、顧客管理、在庫、受注、電子商取引などの機能をクラウドで提供するOracle傘下の業務管理サービス。公式サイトでは、自然言語によるデータ分析、レポート作成、業務自動化などのAI機能を案内している。

マルチモーダルAI
文章だけでなく、画像、音声、動画など複数形式の情報を処理できるAI。OracleはGeminiの採用により、Fusion向けエージェントで利用できるマルチモーダル機能を拡大する方針を示している。

【参考リンク】

Oracle Fusion Cloud Applications(外部)
財務、人事、サプライチェーン、製造、営業などを統合するOracleのクラウド業務アプリケーション群。組み込みAIやAI Agent Studioの概要も確認できる。

Oracle AI Agent Studioの概要(外部)
AIエージェントの作成、構成、検証、展開方法を説明するOracle公式ドキュメント。Fusion Applicationsとの統合範囲を確認できる。

NetSuite Artificial Intelligence(外部)
NetSuiteに組み込まれているAI機能の公式案内。自然言語による分析、レポート作成、業務処理の自動化などを紹介している。

Gemini Enterprise(外部)
Google Cloudが提供する企業向けAI環境。社内データや外部サービスと接続し、業務データに基づく回答やエージェントの利用を支援する。

【参考記事】

Oracle to Make Gemini Models Available to Thousands of Enterprise Applications Customers(外部)
GeminiをOracle AI Agent Studio、Fusion Applications、NetSuiteで利用可能にする計画を示したOracleの公式発表。今回の解説における主要な一次情報。

Oracle Introduces AI-Native Builder Experience to Create and Run Agentic Applications|Oracle(外部)
AI Agent Studioのノーコード・プロコード開発機能と、承認、ガバナンス、監査をFusion内部で扱う設計を説明した公式発表。

AI Agent Studioの概要|Oracle Help Center(外部)
AI Agent StudioがFusion Applicationsのナレッジ、ツール、APIへアクセスし、エージェントをワークフローへ展開する仕組みを説明する公式資料。

Gemini EnterpriseとOracle AI Databaseでビジネス・データから得た知見をすべてのユーザーに届ける|Oracle(外部)
Gemini EnterpriseとOracle AI Databaseを接続し、SQLを記述せずに業務データへ問い合わせる構想を説明したOracle公式ブログ。アプリケーション層とは別に進むデータベース層の連携を確認できる。

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乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。

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