空の旅がさらに快適に――ユナイテッド航空は、全機材に高速無料Wi-Fiを導入する計画を発表しました。これにより、乗客は地上と同様のインターネット体験を機内でも楽しむことができるようになります。
導入スケジュール
- 2025年2月:エンブラエルE-175での試験開始
- 2025年春:最初の商用便での運用開始
- 2025年末:2クラス構成の地域便全機への導入完了
- 2025年内:メインライン機材への導入開始
サービス仕様
- ダウンロード速度:40~220Mbps
- アップロード速度:8~25Mbps
- 遅延時間:99ミリ秒未満
利用条件
- マイレージプラス会員は無料で利用可能
- マイレージプラスへの入会も無料
導入規模
- 約1,000機への搭載を予定
- 米国の主要航空会社として初めての大規模導入
他社の導入状況
- ハワイアン航空:2024年9月から全エアバスA330機で提供開始
- カタール航空:2024年10月からボーイング777型機で提供開始
- エアーバルティック:導入を計画中
この発表は、2024年9月にユナイテッド航空とSpaceXが締結した契約に基づくもの。
from:United speeds up plans to offer free Starlink in-flight Wi-Fi service
【編集部解説】
航空機内のインターネット接続は、これまで高額な料金と低速な通信速度が課題でした。ユナイテッド航空の今回の決断は、航空業界全体のデジタルトランスフォーメーションを加速させる可能性を秘めています。
スターリンクの機内Wi-Fiシステムは、従来のGogo社やViasatなどのサービスと比較して、大きな技術的優位性を持っています。低軌道衛星を使用することで、通信遅延を99ミリ秒未満に抑えることができ、地上と変わらないインターネット体験を提供できます。
特筆すべきは、ユナイテッド航空が地域便から導入を開始する点です。これまで地方路線の機内Wi-Fiは特に遅く、利用価値が低いとされてきました。今回の決定は、地方路線の利用者にも高品質なデジタルサービスを提供するという、新しい顧客戦略の表れといえます。
導入コストについては明らかにされていませんが、1機あたりの装置費用は約15万ドルと推定されています。1,000機への導入となれば、総額で1.5億ドル規模の投資となります。これは航空会社にとって大きな投資ですが、顧客満足度の向上と競争力強化につながると考えられます。
一方で、課題も存在します。スターリンクの衛星網は急速に拡大していますが、極地域や海洋上での安定性はまだ完全には実証されていません。また、多数の航空会社が同時にサービスを利用した場合の帯域幅の確保も今後の課題となるでしょう。
セキュリティの観点では、衛星通信特有のリスクへの対応も必要です。機内ネットワークの分離や暗号化など、適切な対策が求められます。
長期的には、この動きは機内エンターテインメントの在り方を大きく変える可能性があります。従来の座席背面モニターは不要となり、機体の軽量化やメンテナンスコストの削減にもつながるかもしれません。
また、ビジネス顧客にとっては、機内での生産性が飛躍的に向上する可能性があります。オンライン会議への参加や大容量ファイルの送受信が可能となれば、移動時間を効果的に活用できるようになります。
このような変革は、航空業界全体のサービス基準を引き上げることになるでしょう。すでにデルタ航空やジェットブルー航空も無料Wi-Fiサービスを提供していますが、スターリンクの高速性能は新たな基準となる可能性があります。