NEC、LEO衛星×光リンク|光通信衛星コンステレーション向けネットワーク制御技術を開発

NEC、LEO衛星×光リンク|光通信衛星コンステレーション向けネットワーク制御技術を開発 - innovaTopia - (イノベトピア)

NECは2025年11月27日、光通信衛星コンステレーション構築に向けたネットワーク制御技術を開発したと発表した。

本技術は、LEO(Low Earth Orbit)衛星間を光リンクで結ぶコンステレーションにおいて、衛星と地上局、衛星同士の距離変化をモデル化し、最適な経路を選択することでデータ転送遅延を従来比で半減させることに成功した。

また、接続可能な衛星が次々と切り替わる際のハンドオーバーにおいて、データ到達時間や経路切断タイミングを予測し、複数経路を協調制御することで、通信品質の揺らぎである遅延変動を従来の1/30にまで抑制できるという。これにより、観測衛星や宇宙ステーションに加え、災害時の状況把握や自動運転など一瞬の遅延が命取りとなるミッションクリティカルな地上用途ににおいても、有線回線に匹敵する信頼性の高い衛星通信サービスの提供を目指す。

なお、NECは宇宙戦略基金の支援を受けて光通信衛星コンステレーションの中核技術(光ルーター等)を開発しており、Beyond 5G / 6G時代の非地上系ネットワーク(NTN)での活用拡大を見込んでいる。

From: 文献リンクNEC、光通信衛星コンステレーション構築に向けたネットワーク制御技術を新たに開発

 - innovaTopia - (イノベトピア)
光通信衛星コンステレーションのイメージ
日本電気株式会社PRTIMESより引用

【編集部解説】

光通信衛星コンステレーション向けネットワーク制御技術は、6G時代の「宇宙を含むネットワーク」をどう設計するかという問いに対する、NECからの実践的な回答の一つといえる。 LEO衛星を利用した通信はもともと低遅延という利点を持ちながら、衛星の移動に伴うハンドオーバーによる瞬断や再接続の遅さがボトルネックになってきたが、今回の技術はその“揺らぎ”を抑えにいくアプローチだ。

ポイントは、衛星の軌道や距離の変化を「その場その場での最短経路探索」に任せるのではなく、「事前に予測可能な数理モデル」として扱う発想にある。 衛星コンステレーションでは、どの衛星がどの位置をいつ通過するかが高い精度で予測できるため、その時間変化をモデル化することで、少ない計算量でほぼ最適な経路を継続的に選択することが可能になる。 これにより、単に平均遅延を減らすだけでなく、遅延のばらつきそのものを抑え込もうとしている点が、既存のルーティングとの大きな違いだ。

この「遅延変動の抑制」は、ミッションクリティカルなユースケースで特に重要になる。 たとえば遠隔ロボットの操作や自動運転車両の制御、災害現場のリアルタイムモニタリングなどでは、一瞬の応答遅れがシステム全体の安全性や信頼性に直結する。 LEO+光通信という組み合わせは帯域面では有利だが、頻繁なハンドオーバーで遅延が大きく変動しがちだった。 そこに対して、経路の時間変化を予測しながら複数経路を制御することで、サービスレベルでの“止まりにくさ・揺らぎの少なさ”を確保しようとしているのが今回の意義だ。

また、宇宙戦略基金を含む日本の政策側の動きと結びついている点も見逃せない。 光通信衛星コンステレーションは、日本発の宇宙インフラ技術をグローバルなNTNアーキテクチャの一部として位置づけるうえで、象徴的なテーマになりつつある。 一方で、衛星コンステレーションの拡大は、電波資源の利用、宇宙空間の混雑やデブリ問題、通信インフラ支配構造といった懸念とも表裏一体だ。 技術が進むほど、「誰が、どのレイヤーを、どのようなルールでコントロールするのか」というガバナンス設計が、これまで以上に重要になっていく。

長期的に見ると、衛星、成層圏プラットフォーム、地上モバイル、海底ケーブルが重なり合う“多層ネットワーク”の中で、アプリケーションごとに最適なレイヤーと経路を選び分ける世界が現実味を帯びてきている。 宇宙光通信のネットワーク制御は、その多層構造の「最上層」をどう賢く扱うかという実験場になり得る。

【用語解説】

光通信衛星コンステレーション
複数の人工衛星を軌道上で連携させ、衛星間を光通信リンクで接続することで、高速かつ大容量のデータ通信を実現する衛星群のことだ。

LEO衛星(Low Earth Orbit衛星)
高度数百km程度の低軌道を周回する人工衛星の総称で、地上との距離が近く遅延を抑えた通信が可能だが、上空を高速で通過するためハンドオーバーが頻繁に発生する。

非地上系ネットワーク(NTN: Non-Terrestrial Network)
基地局や光ファイバーなどの地上設備ではなく、衛星や成層圏プラットフォームなどを利用して構成されるモバイルネットワークの総称であり、6Gでの活用が想定されている。

Beyond 5G / 6G
5Gの次世代となる移動体通信システムを指し、より高速・大容量で低遅延な通信に加えて、宇宙や空など非地上系も含めた広域かつ柔軟なネットワーク構成を目指す概念である。

ハンドオーバー
通信中の端末が接続している基地局や衛星が切り替わることに伴い、通信経路を別のノードへ引き継ぐ処理のことであり、LEO衛星通信では頻繁に発生し、遅延変動や瞬断の原因となる。

【参考リンク】

NEC(日本電気株式会社)(外部)
通信インフラや宇宙・防衛など幅広い分野で事業を展開する電機メーカーで、光通信衛星コンステレーション技術など宇宙ネットワーク関連の研究開発も推進している。

JAXA(宇宙航空研究開発機構)(外部)
日本の宇宙開発を担う政府系機関で、NECと連携して光データ中継衛星や光学衛星間通信の実証を行うなど、宇宙通信インフラの研究開発に関与している。

宇宙戦略基金(Space Strategy Fund)概要(外部)
日本の宇宙戦略基金の制度概要を説明するPDFで、衛星コンステレーション構築や光ルーター技術開発など支援対象となる技術テーマや枠組みが整理されている。

Space Compass Inc.(外部)
宇宙通信とデータ中継事業を手がける日本発の企業で、光通信ベースの衛星コンステレーションネットワークシステムの開発や実証プロジェクトに参画している。

光衛星通信技術の研究(JAXA)(外部)
JAXAが進める光衛星通信技術の研究開発内容を紹介するページで、衛星間光通信や地上-衛星間光通信の実験と将来像が整理されている。

【参考記事】

NEC is establishing a new organization and utilizing the Space Strategy Fund to promote the optical Communications satellite constellation.(外部)
NECが宇宙戦略基金の採択を受け、光通信衛星コンステレーション向け光ルーター技術の開発と複数LEO衛星によるネットワーク実証計画を説明している。

NEC and Skyloom to Pioneer 100 Gbps Space Optical Communication(外部)
NECとSkyloomが100Gbps級の宇宙光通信装置を共同開発し、2026年の試験衛星打ち上げを通じて光通信コンステレーション時代の高速リンク実証を目指すことを紹介している。

World’s First Successful Transmission of Huge Volume Mission Data Using Optical Data Relay Satellite “LUCAS” and Earth Observation Satellite “DAICHI-4”(外部)
JAXAとNECが光データ中継衛星LUCASとだいち4号間で大容量データ伝送を実証し、1.5μm帯光通信が将来の宇宙光通信インフラに有望であることを示した報告である。

Optical Inter-satellite Communication Technology for High Speed, Large Capacity Space Networks(外部)
NECが光学衛星間通信技術の背景やシステム構成、光通信端末の性能を解説し、将来のデータ中継衛星や衛星コンステレーションの基盤技術として位置づけている技術解説記事である。

Optical Satellite Communication toward the Future of Ultra High-speed Networks(外部)
NICTが光衛星通信の研究開発状況やLEO衛星と地上局間の実験結果を紹介し、将来の超高速ネットワークにおける光衛星通信の役割を整理した技術レポートである。

【編集部後記】

光通信衛星コンステレーションの話題は、一見すると遠い宇宙の出来事のようでいて、実は「これからのインターネットの当たり前」がどう変わるのかに直結しているテーマだと感じます。 災害時でも自動運転でも、地上ネットワークに縛られず宇宙経由で低遅延につながる世界が来たとき、皆さんならどんなサービスや体験を重ねてみたいでしょうか。

一方で、衛星の数が増え続けることや、宇宙インフラがごく一部の国や企業に集中していくことに漠然とした不安や違和感を覚える場面もあるかもしれません。 そうした期待と不安の両面を、読者のみなさんと一緒に考えていけたらうれしいです。

投稿者アバター
omote
デザイン、ライティング、Web制作を行っています。AI分野と、ワクワクするような進化を遂げるロボティクス分野について関心を持っています。AIについては私自身子を持つ親として、技術や芸術、または精神面におけるAIと人との共存について、読者の皆さんと共に学び、考えていけたらと思っています。

読み込み中…
advertisements
読み込み中…