DeNA×THA「リーダーズAI」企業リーダーの思考をAI化するエンタープライズサービス

[更新]2025年12月1日

DeNA×THA「リーダーズAI」企業リーダーの思考をAI化するエンタープライズサービス - innovaTopia - (イノベトピア)

経営者やマネージャーの「頭の中」が、そのまま組織全体で共有できるとしたら、あなたのチームの意思決定は、どれくらい変わるでしょうか。

DeNA×THAの「リーダーズAI」は、まさにその問いに真正面からチャレンジする、次世代のエンタープライズAIです。


株式会社DeNAの子会社である株式会社DeNA AI Linkは、株式会社THAとエンタープライズ向けAIサービス「リーダーズAI」を共同開発・提供する基本合意書を締結した。

「リーダーズAI」は、経営層や事業リーダー、営業、企画、販売、開発など各部門のリーダーの思考をAI化するサービスである。企業理念、IR情報、組織文化、各部門の戦略やマニュアル、リーダーへのインタビューを基に構築され、社員はビジネスチャットツールから相談できる。

THAは「AI社長」で培ったインタビュー、プロンプト、RAG技術を提供し、DeNA AI Linkが事業主体として提供、運営、開発を行う。「AI社長」は2023年8月から提供され、50社を超える中小企業に導入されている。DeNAグループは2025年2月に「AIオールイン」を掲げ、「“AI” For & With Startups」プログラムの一環として本協業を支援している。

From: 文献リンクリーダーの思考をAI化するエンタープライズ向けサービス『リーダーズAI』を2026年春より提供予定

 - innovaTopia - (イノベトピア)
DeNA公式プレスリリースより引用
 - innovaTopia - (イノベトピア)
DeNA公式プレスリリースより引用

【編集部解説】

「リーダーズAI」は、生成AIを単なる情報ツールではなく「企業ごとのリーダー像を体現する意思決定パートナー」として位置づけようとする試みです。企業理念やIR情報、組織文化、部門ごとの戦略、リーダー本人への深いインタビューを組み合わせることで、「この会社ならどう判断するか」という文脈を含んだ応答を目指しています。

ここでコアになるのが、THAが「AI社長」で培ってきたインタビュー設計、プロンプト設計、RAG技術です。RAGによって社内資料やマニュアルを横断的に検索しつつ、徹底的に言語化した価値観レイヤーを重ねることで、「知識+判断軸」を返せる二層構造のAIが成立します。これは、汎用LLMに社内ドキュメントをつないだだけのボットとは一線を画す設計思想です。

この方向性が広がると、これまで属人的だったリーダーの暗黙知や“感覚的なOK/NGライン”が、組織全体でアクセスできるリソースになります。DeNAですでに導入されている「AI住吉さん(同社AIイノベーション事業本部長・住吉政一郎氏のAI)」の例では、AI事業メンバーの壁打ち相手だけでなく、HRが採用候補者を考える際に「住吉さんならどう見るか」を聞く使い方もされており、リーダーAIが組織OSの一部として機能し始めていることがうかがえます。

ポジティブな側面としては、リーダーの時間や場所の制約を超えて知見を共有できること、若手や地方拠点のメンバーでも同じ判断基準にアクセスできることが挙げられます。一方で、ひとつのリーダー像をAIに固定してしまうことで、異論や多様な視点が出にくくなるリスク、AIの回答が「会社の公式見解」と誤解されうるガバナンス上の課題も見逃せません。どこまでをAIに委ね、どこからを人間が引き受けるかという線引きは、まさに経営判断そのものになっていきます。

DeNAは「AIオールイン」や“AI” For & With Startupsを掲げ、AI前提の事業構造とスタートアップ支援の両輪を加速させています。その文脈で見ると、リーダーズAIは「AIによる生産性向上」の次の一手として、「意思決定そのものをAIネイティブ化していく」取り組みとも解釈できます。読者のみなさんの組織で、もしリーダーAIを導入するとしたら、最初に解きたいボトルネックはどこか──その問いから、このニュースを自社の未来像に引き寄せてみてほしいと感じます。

【用語解説】

リーダーズAI
企業内の経営層や事業リーダーの思考や判断基準をAIとして再現し、ビジネスチャットから相談できるようにするエンタープライズ向けAIサービスの名称だ。

AI社長
THAが提供する、中小企業の「会社らしさ」「社長らしさ」を反映したオリジナルAIを構築し、理念浸透や業務効率化を支援するサービスの総称だ。

RAG技術(Retrieval-Augmented Generation)
大規模言語モデルに対して外部データベースから関連情報を検索させ、その結果を踏まえて回答を生成させることで、精度や最新性を高める手法のことだ。

AIオールイン
DeNAグループが掲げるAI戦略で、全社的な生産性向上、既存事業の競争力強化、AI新規事業の創出など、事業全体をAI前提にシフトしていく方針を指す言葉だ。

“AI” For & With Startups
DeNAグループが提供するAIスタートアップ成長支援プログラムの名称で、顧客紹介、PoCや導入支援、グローバル展開支援などを通じてスタートアップと共創する取り組みを指す。

【参考リンク】

株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)(外部)
ゲームやスポーツ、ヘルスケアなど多様な事業を展開し、「AIオールイン」戦略で全社的なAI活用を進めている企業。

株式会社DeNA AI Link(外部)
DeNAグループのAI事業を担い、企業の生産性向上や意思決定支援に向けたAIサービスの企画・開発・提供を行う子会社。

株式会社THA(外部)
中小企業向けに「AI社長」を提供し、企業理念や経営者の想いを反映したオリジナルAIの構築と伴走支援を行っている企業。

DeNA×AI|“AIオールイン”で創るDelight(外部)
DeNAのAI戦略や事例、イベント情報を集約したポータルで、「AIオールイン」やスタートアップ連携の全体像が把握できる。

「AIオールイン」戦略の全貌(Fullswing)(外部)
DeNAが掲げるAIオールイン戦略の背景と3つの柱、今後の展望を経営陣のコメントとともに解説しているオウンドメディア記事。

【参考記事】

「AI社長」を提供するTHA、 DeNA AI Linkと協業で「リーダーズAI」を2026年春に提供開始予定(外部)
THA側の視点から、AI社長のコンセプトや導入実績、リーダーズAIでの役割分担、二層構造によるAI設計などを詳述しているプレスリリース。

リーダーの思考をAI化する「リーダーズAI」を2026年春に提供(外部)
企業の意思決定を支援するエンタープライズ向けAIサービスとしてリーダーズAIを紹介し、協業背景や活用シーン、約3カ月の導入プロセスを整理している。

DeNAなど、企業リーダーの思考をAI化する企業向けサービスを発表(外部)
リーダーズAIの発表内容を、企業の生産性向上や意思決定支援という文脈で取り上げ、対象ユーザーや利用シーンを技術ニュースとして解説する記事。

DeNAがリーダーの思考をAI化へ、「AI社長」提供ベンチャーと協業(外部)
日経XTECHが、DeNAのAIオールイン戦略との関連性に触れつつ、リーダーズAIの狙いや社内実証、今後のビジネス展開を技術・経営両面から伝える記事。

リーダーズAIの共同開発で企業の意思決定を強化する(外部)
企業の意思決定プロセスやリーダーシップの変化という観点からリーダーズAIの意義と懸念点を整理し、リーダーAIの未来像を論じている個人ブログ記事。

DeNA ver.2.0 “AI” For & With Startups(外部)
DeNAが展開するAIスタートアップ支援プログラムの詳細を紹介し、本協業が位置づけられるエコシステム全体の文脈を理解するのに役立つ記事。

【編集部後記】

「リーダーズAI」の話を追いながら、自分自身の現場でも「ちょっと相談したいけれど相手の時間を奪うのはためらう瞬間」がいくつも思い浮かびました。もしそこに自社の価値観や判断軸まで理解してくれるAIパートナーがいたら、どんなふうに日々の仕事が変わるでしょうか。

読者のみなさんとも一緒に想像してみたいテーマです。一方で、リーダー像をAIに固定してしまうことへの違和感や怖さもあるはずです。その感覚も含めて、どこまでをAIに任せて、どこからを人が引き受けるのかという線引きを考えるきっかけとして、このニュースを使ってもらえたらうれしいです。

投稿者アバター
omote
デザイン、ライティング、Web制作を行っています。AI分野と、ワクワクするような進化を遂げるロボティクス分野について関心を持っています。AIについては私自身子を持つ親として、技術や芸術、または精神面におけるAIと人との共存について、読者の皆さんと共に学び、考えていけたらと思っています。

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